地域特性を活かしたプライマリ・ケア医師参加型の医科歯科連携実現に向けた調査研究

文献情報

文献番号
202022018A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性を活かしたプライマリ・ケア医師参加型の医科歯科連携実現に向けた調査研究
課題番号
19IA1009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
樺沢 勇司(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹村 洋典(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 伊藤 奏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 健康支援口腔保健衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域医療における総合診療医と歯科との連携の重要性に着目し、多職種と歯科との連携の取り組みを調査し、特に医師の歯科との連携における医師の役割を解明することを目的として以下の3つの研究を遂行した。さらに医科歯科連携における歯科衛生士に必要な役割、必要な教育についても研究することを目的とした。
研究方法
研究①:医師向けは12の設問からなる質問票を用いて、日本プライマリ・ケア連合学会に対してWebでのアンケート調査を実施した(担当:竹村、樺沢)。その結果、回答数:134、回答率:1.9%であった。低回答率となった結果を分析し、さらに医科と歯科の連携機会の契機を得ることの重要性を検討するため、東京医科歯科大学医科同窓会の協力を得て、同窓会員(医師)に対するWeb調査を実施した。わずか1か月の調査ではあったが、回答数:30/320、回答率:9.4%となった(担当:樺沢)。研究②:医科歯科連携のモデルケースとして、X診療所における医科歯科連携の活動実態、医師および歯科専門職の役割について、調査研究を行った(担当:樺沢、伊藤)。研究③:全国の歯科衛生士会(47都道府県会)を対象とし、歯科衛生士向けの19の設問からなる質問票を用いて、Webでのアンケート調査を実施した(回答数:626、回答率:7.0%)(担当:伊藤、樺沢)。
結果と考察
研究①の結果、医師からは、歯科疾患を実際に診察する機会が少なく、歯科疾患を意識する機会は直接の歯科医師との直接の診療連携によること。歯科に紹介する際には紹介状の作成はせず口頭にて歯科受診を薦めている場合も多いこと。歯科との連携の契機は同じ病院内あるいは地域であることが多いこと、そのため地域における患者に関するカンファレンスは一定の効果を持つと考えられること。一方歯科への紹介の障害として、紹介書作成の煩雑さやシステムの問題よりは歯科疾患への理解の不足が考えられ、連携におけるメリットは感じながらも、連携機会が不足しており、連携が進まないことが考えられた。本学卒業生の方が調査への回答率が高く、医科歯科連携への関心の高さを示し、学生中の教育から歯科疾患を意識し、歯科からの紹介患者も多く、歯科との連携機会が高い傾向が認められた。医師に対する歯科との連携の関心をより高めるために、医科歯科連携の効果の具体例について、より広い職種に対する啓蒙の必要性が高いと考えられた。また、研究②からは歯科専門職(特に歯科衛生士)が医科歯科連携の調整役を兼ねつつ、総合的な口腔健康状態のアセスメントに基づき、医科歯科連携の調整役の中心として活躍する意義は極めて大きいと考えられた。今後の課題として、全国的に医科歯科連携の実例を共有し、医科歯科連携の実例を学習できるアドバンス教育の体制を構築することが必要である。そして各地域において、医科歯科連携して対応している患者情報を多職種が共有するツールを構築することが必要であると考えられた。研究③からは、歯科衛生士の在宅歯科診療や往診への参加は約4割であり、それに対応するための学習機会が必要であった。歯科衛生士養成機関卒業後の教育の充実が、歯科衛生士の地域医療活動を促進させるために重要である。また、歯科衛生士からの、医科歯科連携についての評価は、連携がうまくいっていると回答したものは33.7%で医師に対しての結果(45~65%)よりも低く、医科歯科連携に対しての認識の差があるものと考えらえた。歯科衛生士に対しては、特に「全身疾患と歯科に関する内容」、「地域における多職種連携」等についての教育機会の充実が重要であると考えられた。
結論
地域医療における医科歯科連携の更なる発展のためには、特に医師に対して、歯科との連携との意識を高める必要があることが示唆された。そのためには診療情報の共有を評価する施策に加えて、特に糖尿病、フレイル対策(低栄養、摂食嚥下障害、口腔機能低下症)、認知症、がん治療における医科歯科連携の実例を全国的に共有し、医科歯科連携の実例を学習できるアドバンス教育の体制を構築する施策が必要である。そして各地域において、医科歯科連携をはじめとする医療者間の情報共有の有効化と継続化のため、医療・介護多職種が情報を共有するためのシステムの整備と積極的な活用の推進。それら新たな施策を遂行するための勉強会や研修会において、医科・歯科連携のきっかけを促進することが効果的と考えられた。歯科衛生士は医科歯科連携において非常に重要な役割を担っているが、本研究の結果からは、その卒前・卒後教育はいまだ十分とは言えず、医科歯科連携促進に向けて、歯科衛生士に対する更なる教育・研修の充実が強く求められていると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-10-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022018B
報告書区分
総合
研究課題名
地域特性を活かしたプライマリ・ケア医師参加型の医科歯科連携実現に向けた調査研究
課題番号
19IA1009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
樺沢 勇司(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹村 洋典(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 伊藤 奏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 健康支援口腔保健衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域医療における総合診療医と歯科との連携の重要性に着目し、多職種と歯科との連携の取り組みを調査し、特に医師の歯科との連携における医師の役割を解明することを目的として以下の3つの研究を遂行した。
研究方法
研究①:医師向けは12の設問からなる質問票を用いて、日本プライマリ・ケア連合学会に対してWebでのアンケート調査を実施した(担当:竹村、樺沢)。その結果、回答数:134、回答率:1.9%であった。低回答率となった結果を分析し、さらに医科と歯科の連携機会の契機を得ることの重要性を検討するため、東京医科歯科大学医科同窓会の協力を得て、同窓会員(医師)に対するWeb調査を実施した。わずか1か月の調査ではあったが、回答数:30/320、回答率:9.4%となった(担当:樺沢)。研究②:医科歯科連携のモデルケースとして、X診療所における医科歯科連携の活動実態、医師および歯科専門職の役割について、聞き取り調査研究を行った(担当:樺沢、伊藤)。研究③:全国の歯科衛生士会(47都道府県会)を対象とし、歯科衛生士向けの19の設問からなる質問票を用いて、Webでのアンケート調査を実施した(回答数:626、回答率:7.0%)(担当:伊藤、樺沢)。
結果と考察
研究①の結果、医師からは、歯科疾患を実際に診察する機会が少なく、歯科疾患を意識する機会は直接の歯科医師との直接の診療連携によること。歯科に紹介する際には紹介状の作成はせず口頭にて歯科受診を薦めている場合も多いこと。歯科との連携の契機は同じ病院内あるいは地域であることが多いこと、そのため地域における患者に関するカンファレンスは一定の効果を持つと考えられること。一方歯科への紹介の障害として、紹介書作成の煩雑さやシステムの問題よりは歯科疾患への理解の不足が考えられ、連携におけるメリットは感じながらも、連携機会が不足しており、連携が進まないことが考えられた。本学卒業生の方が調査への回答率が高く、医科歯科連携への関心の高さを示し、学生中の教育から歯科疾患を意識し、歯科からの紹介患者も多く、歯科との連携機会が高い傾向が認められた。医師に対する歯科との連携の関心をより高めるために、医科歯科連携の効果の具体例について、より広い職種に対する啓蒙の必要性が高いと考えられた。また、研究②からは歯科専門職(特に歯科衛生士)が医科歯科連携の調整役を兼ねつつ、総合的な口腔健康状態のアセスメントに基づき、医科歯科連携の調整役の中心として活躍する意義は極めて大きいと考えられた。今後の課題として、全国的に医科歯科連携の実例を共有し、医科歯科連携の実例を学習できるアドバンス教育の体制を構築することが必要である。そして各地域において、医科歯科連携して対応している患者情報を多職種が共有するツールを構築することが必要であると考えられた。研究③からは、歯科衛生士の在宅歯科診療や往診への参加は約4割であり、それに対応するための学習機会が必要であった。歯科衛生士養成機関卒業後の教育の充実が、歯科衛生士の地域医療活動を促進させるために重要である。また、歯科衛生士からの、医科歯科連携についての評価は、連携がうまくいっていると回答したものは33.7%で医師に対しての結果(45~65%)よりも低く、医科歯科連携に対しての認識の差があるものと考えらえた。歯科衛生士に対しては、特に「全身疾患と歯科に関する内容」、「地域における多職種連携」等についての教育機会の充実が重要であると考えられた。
結論
地域医療における医科歯科連携の更なる発展のためには、特に医師に対して、歯科との連携との意識を高める必要があることが示唆された。そのためには診療情報の共有を評価する施策に加えて、特に糖尿病、フレイル対策(低栄養、摂食嚥下障害、口腔機能低下症)、認知症、がん治療における医科歯科連携の実例を全国的に共有し、医科歯科連携の実例を学習できるアドバンス教育の体制を構築する施策が必要である。そして各地域において、医科歯科連携をはじめとする医療者間の情報共有の有効化と継続化のため、医療・介護多職種が情報を共有するためのシステムの整備と積極的な活用の推進。それら新たな施策を遂行するための勉強会や研修会において、医科・歯科連携のきっかけを促進することが効果的と考えられた。歯科衛生士は医科歯科連携において非常に重要な役割を担っているが、本研究の結果からは、その卒前・卒後教育はいまだ十分とは言えず、医科歯科連携促進に向けて、歯科衛生士に対する更なる教育・研修の充実が強く求められていると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-10-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今後積極的な学会との連携による、調査対象の拡大と調査数の積み上げが求められる。医科歯科連携について全国から、関心を持つ医師による多くの貴重な意見が寄せられたことは、十分に評価に値する。今後は実際に医科歯科連携のシステム構築や、研修会を計画、実施することが望ましい。また、歯科衛生士は医科歯科連携において非常に重要な役割を担っているが、本研究の結果からは、その卒前・卒後教育はいまだ十分とは言えず、医科歯科連携促進に向けて、歯科衛生士に対する更なる教育・研修の充実が強く求められていると考えられた。
臨床的観点からの成果
本研究の限界と今後の検討課題として、より積極的な学会との連携による、調査対象の拡大と調査数の積み上げが求められる。しかしながら、医科歯科連携について全国から、関心を持つ医師による多くの貴重な意見が寄せられたことは、十分に評価に値すると考える。今後は実際に医科歯科連携のシステム構築や、研修会を計画、実施してゆく中で、引き続き、調査研究を実施することが望ましい。
ガイドライン等の開発
特に無し
その他行政的観点からの成果
特に無し
その他のインパクト
特に無し

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
2022年05月01日 (一社)日本頭頸部癌学会学術大会、2022年09月01日(一社)日本肝臓学会 学術大会、2022年10月1日(一財)日本消化器病学会 学術大会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
学内および学外(東京女子医科大学)でのセミナーを開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-10-26
更新日
2023-06-19

収支報告書

文献番号
202022018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,200,000円
(2)補助金確定額
1,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 625,360円
人件費・謝金 0円
旅費 2,200円
その他 296,440円
間接経費 276,000円
合計 1,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-08-19
更新日
-