医療機関における最新の院内感染対策及び発生時対応のための研究

文献情報

文献番号
202022015A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における最新の院内感染対策及び発生時対応のための研究
課題番号
19IA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
八木 哲也(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 啓雄(岐阜大学 医学部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学)
  • 笹原 鉄平(自治医科大学 臨床感染症学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題では、近年の最新の情報や知見を集約して、
1)「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)(181226 ver.7.1)」の更新案の作成(八木)
2)平成26年に発出された医政局地域医療計画課長通知「医療機関における院内感染対策について」の改訂案の提示(村上)
3)「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料」の作成(三鴨)
4)医療機関で使用するリネン類のバチルス属菌による汚染防止方法についての知見を得ること
を目的とする。(笹原)
研究方法
1)昨年度に作成した更新案のたたき台に対して、国公立大学附属病院感染対策協議会(以下、国公協)、私立医科大学病院感染対策協議会(以下、私大協)、日本病院会、日本医師会からのコメントを収集し、内容をブラッシュアップした。
2)昨年度に作成した改定案のたたき台に、国公協、私大協、日本病院会、日本医師会からのコメントを求め、修正が必要なポイントを整理した。
3)昨年度に作成した、資料の骨格となる図に基づき、研究班の四職種の専門家及び行政サイドや医療安全の考え方も参考にして加筆し、「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料」(研究班試案)を作成した。
4)全国医療機関から洗濯後未使用リネンを回収し、バチルス属菌汚染の実態をビーズ抽出法を用いて調査した。同時に、バチルス属菌による医療関連感染アウトブレイク事例の疫学的解析も実施した。
結果と考察
1)「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)(181226 ver.7.1)」に基づきつつ、新たな形式(院内感染対策マニュアルに盛り込むべき項目を明示し、記載すべき内容のポイントを挙げ、さらに参考となる資料(主には日本語のもの)を提示する)で「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(研究班更新案)」を作成した。また医療機関の病床数や果たすべき機能別の、院内感染対策マニュアルの記載項目について参考となる推奨表を作成した。
2)抗微生物薬適正使用プログラム:Antimicrobial Stewardship Program(ASP)およびそれを実践する抗菌薬適正使用チーム:antimicrobial Stewardship Team(AST)について新規に加えるとともに、重要なポイントとして環境整備・環境管理、地域連携、アウトブレイクの考え方などの部分を中心として見直し・修正が必要な点について整理した。
3)社会への情報提供による公衆衛生上の公益に資するため、また、提供する医療に対する国民の信頼性の向上に資するため、患者及び家族の自己決定権を保護しつつアウトブレイクを公表するために有用な資料を作成した。通知等にあるアウトブレイクの基準とは異なる公表基準を提示し、医療機関の特徴からその基準についてどう考えたらよいかをまとめて表にした。実際あった事例に沿った公表の考え方のフローも追加し、さらに理解がされやすい資料とした。
4)汚染度調査からは、リネン、とくに清拭タオルが汚染されている施設が半数程度ある可能性を明らかにした。また同時に、アウトブレイク事例の解析から、汚染リネンに付着していたバチルス属菌クローンが感染源となっていたことも明らかにした。
「医療機関における院内感染対策について」が修正点に沿って更新されると、AMR対策を推進する厚生労働行政の施策の一つとして広く医療機関における感染対策の基準として適用される事が期待されるものであり、「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(研究班更新案)」と共に我が国の感染対策の標準化にも寄与すると考えられる。また「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料(研究班試案)」については、医療機関における医療安全部門と感染対策部門の協働により、公表対応がより的確にスムーズになることが期待され、医療機関と地方自治体衛生主管部局との情報共有や連携がより円滑になることが期待される。またバチルス属菌による医療関連感染を防止するために、各施設においてリネンのバチルス属菌汚染を定期的に監視する必要性や、目標となるリネンの清潔度を議論するための基礎的なデータ構築を行うことができた。
結論
当初の1)から4)の目的を達成した。成果物として、「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(研究班更新案)」及び「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料」(研究班試案)を作成した。通知についても、更新のための修正ポイントを整理できた。また、バチルス属菌による医療関連感染を防止するために、リネンのバチルス属菌汚染を評価するための基礎的なデータを得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2022-05-12
更新日
2022-09-03

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-03
更新日
2022-09-07

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022015B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関における最新の院内感染対策及び発生時対応のための研究
課題番号
19IA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
八木 哲也(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 啓雄(岐阜大学 医学部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学)
  • 笹原 鉄平(自治医科大学 臨床感染症学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題では、近年の最新の情報や知見を集約して、
1)「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)(181226 ver.7.1)」の更新案の作成(八木)
2)平成26年に発出された医政局地域医療計画課長通知「医療機関における院内感染対策について」の改訂案の提示(村上)
3)「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料」の作成(三鴨)
4)医療機関で使用するリネン類のバチルス属菌汚染防止方法についての知見を得ること(笹原)
研究方法
1)初年度は「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)(181226 ver.7.1)」に基づき更新案のたたき台を作成。2年目は国公立大学附属病院感染対策協議会(以下、国公協)、私立医科大学病院感染対策協議会(以下、私大協)、日本病院会、日本医師会からのコメントを収集し、内容をブラッシュアップした。
2)初年度は平成26年12月19日の通知「医療機関における院内感染対策について」を基に、院内感染対策の最新の知見及び国内外で発生した事例、薬剤耐性(AMR)アクションプラン等を参考にたたき台を作成した。2年目は国公協、私大協、日本病院会、日本医師会からのコメントを求め、改訂時に修正が必要なポイントを整理した。
3)初年度は、愛知県院内感染ネットワーク作成の「院内感染発生時の公表指針」を基に、医療安全専門家からも意見を聞き、資料の骨格となる図を作成した。2年目は、感染対策専門家及び行政サイドの考え方も参考にして加筆し、「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料(研究班試案)」を作成した。
4)全国医療機関から洗濯後未使用リネンを回収し、バチルス属菌汚染の実態をビーズ抽出法を用いて調査した。同時に、バチルス属菌による医療関連感染アウトブレイク事例の疫学的解析も実施した。
なお各グループの研究協力者は、国公協、私大協の感染対策専門家に加え行政経験者、保健所代表、医療安全専門家、細菌学専門家等を含めた。
結果と考察
1)新たな形式(院内感染対策マニュアルに盛り込むべき項目を明示し、記載すべき内容のポイントを挙げ、その参考資料を提示する)で「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(研究班更新案)」を作成した。また医療機関の病床数や機能別の、院内感染対策マニュアルへの記載項目について参考となる推奨表を作成した。
2)抗微生物薬適正使用プログラム及び抗菌薬適正使用チームについて新規に加えるとともに、重要なポイントとして環境整備・環境管理、地域連携、アウトブレイクの考え方などの部分を中心として、通知の改訂時に見直し・修正が必要な点について整理した。
3)アウトブレイク発生時に、社会への情報提供による公衆衛生上の公益に資するため、また提供する医療に対する国民の信頼性の向上に資するため、患者及び家族の自己決定権を保護しつつ公表するために有用な資料を作成した。公表基準を提示し、医療機関の特徴別の公表基準の考え方を表にした。実際あった事例に沿った公表のフローも追加し、さらに理解がされやすい資料とした。
4)汚染度調査より、リネン、とくに清拭タオルが汚染されている施設が半数程度あることを明らかにした。同時に、アウトブレイク事例の疫学解析から、汚染リネンに付着していたバチルス属菌クローンが感染源となったことも明らかにした。
「医療機関における院内感染対策について」が修正点に沿って更新されると、AMR対策を推進する厚生労働行政の施策の一つとして、広く医療機関における感染対策の基準として適用される事が期待される。「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(研究班更新案)」も通知と共に我が国の感染対策の標準化にも寄与すると考えられる。また「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料(研究班試案)」は、医療機関における医療安全部門と感染対策部門の協働により、公表対応がより的確にスムーズになることが期待され、医療機関と地方自治体衛生主管部局との情報共有や連携がより円滑になることが期待される。またバチルス属菌による医療関連感染防止のために、各施設においてリネンのバチルス属菌汚染の定期的監視の必要性や、目標となるリネンの清潔度を検討するための基礎的データを構築した。
結論
1)から4)の目的を達成した。成果物として、「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(研究班更新案)」及び「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料(研究班試案)」を作成した。通知についても、改訂のための修正ポイントを整理した。また、バチルス属菌による医療関連感染防止のために、リネンのバチルス属菌汚染を評価するための基礎的データを得た。

公開日・更新日

公開日
2022-09-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究班では、研究協力者として国公協や私大協の四職種の感染対策専都市に加え、行政経験者、保健所代表、医療安全専門家、細菌学専門家等を加えて資料作成や議論にあたることができた。また日本病院会や日本医師会からもコメントを頂け、それを反映できた。
臨床的観点からの成果
院内感染対策に関する知見および国内外で発生した事例、薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン等最新の情報を盛り込むことができた。
ガイドライン等の開発
「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(更新案)」、「医療機関における院内感染多発事例等発生時の公表対応時に有用な資料」(最終案)を作成した。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
各医療機関で院内感染対策マニュアルの更新や作成に役立つことが期待される。また多発事例が発生した際に各医療機関が参照する手引きとなることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-12
更新日
2024-05-27

収支報告書

文献番号
202022015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,500,000円
(2)補助金確定額
4,582,000円
差引額 [(1)-(2)]
918,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,729,940円
人件費・謝金 1,224,255円
旅費 89,440円
その他 269,863円
間接経費 1,269,000円
合計 4,582,498円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差額498円は自己資金にて支出しました。

公開日・更新日

公開日
2021-12-16
更新日
-