特定行為研修の修了者の活用に際しての方策に関する研究

文献情報

文献番号
202022013A
報告書区分
総括
研究課題名
特定行為研修の修了者の活用に際しての方策に関する研究
課題番号
19IA1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
真田 弘美(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 須釜 淳子(金沢大学 医学系研究科)
  • 康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 磯部 陽(独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 外科)
  • 太田 秀樹(医療法人 アスムス)
  • 仲上 豪二朗(東京大学大学院医学系研究科 老年看護学/創傷看護学分野)
  • 吉田 美香子(東北大学大学院医学系研究科ウィメンズヘルス・周産期看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,684,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、特定行為の実施が患者、看護師、医師ならびに医療システムに与える影響を、定量可能かつ全国共通で使用できる恒久性のある指標を用いて示すことである。この目的を達成するために、2019年度に実施した、「研究1:アウトカム指標を明確化する調査枠組み策定」で抽出したアウトカム指標に基づいて、2020年度は「研究3:アウトカム指標調査(予備調査)」を実施した。
研究方法
研究デザインは、前向きコホート研究とし、フォローアップ期間は調査開始から3か月間(退院、退所の場合はその時点で終了)とした。曝露群は特定行為研修修了者が所属する施設、対照群を特定行為研修修了者が所属しない施設、とした。対象者については、急性期医療領域、慢性期医療領域、在宅領域の3つのセッティングを設けて対象施設を選定し、リクルートを実施した。さらに、確実に特定行為の効果を示すことのできる対象として、急性期医療領域については成人かつ予定入院日数が7日以上であり、①人工呼吸器装着患者、②胸腔ドレーン挿入患者、③腹腔ドレーン挿入患者、④血流のない壊死組織の除去を必要とする褥瘡保有患者、⑤中心静脈カテーテル挿入患者、のいずれかを満たす者を対象とした。慢性期医療領域は65歳以上かつ予定入院・入所日数が30日以上、在宅医療領域は65歳以上かつサービス利用開始後14日以上経過した者を対象とした。アウトカム指標は、研究1で網羅した、患者QOL、医療の安全性、医療者の労働環境、コストの4分類に関するアウトカム候補について、対象者単位に加え、対象者の入院・入所または利用する病棟、施設、事業所単位で収集した。研究者らが民間企業の協力を得て作成したWeb上のデータ入力システムを用いて、各施設、事業所が選定した看護師が入力を行った。
結果と考察
2021年3月末までに79施設が調査に参加し、データ収集を実施した(うち曝露群51施設、対照群28施設)。セッティングの内訳について、曝露群は、急性期医療領域が40施設、慢性期医療領域が13施設、在宅医療領域が3施設であった。対照群は、急性期医療領域が15施設、慢性期医療領域が4施設、在宅医療領域が11施設であった。
これまでに回収したデータを用いて、研究目的の一つであった実施可能性を検証するために、1)各指標において未入力またはアウトカム発生なしであった割合の算出、2)調査協力者からのメール、電話の質的記述的分析、を実施した。対象の80%以上で未入力またはアウトカム発生なしであった項目として、施設単位の【1ヶ月間に発生した慢性創傷における感染症の発生件数】、【1ヶ月あたりの人工呼吸の延べ算定料】、病棟単位の【1ヶ月間に発生した挿管チューブ関連アクシデント件数】、【1ヶ月あたりの入院時処方薬剤数合計】、患者・利用者単位の【尿路感染の発生(初回発生日)】、【DESIGN-R「d1」以上の褥瘡の発生(初回発生日)】などが挙げられた。これらの指標については、欠損率は高いものの臨床的には意義のあるアウトカムも含まれる。そこで、研究4の全国調査で採用するか否かについては専門家による重要性の評価も踏まえて決定する予定である。また、調査協力者からのメール、電話の質的記述的分析では、調査の実施が困難となる要因について、組織要因として【施設内の倫理承認が必要】、【対象者の不足】、【組織内の連携が必要】、個人要因として【調査実施可能性の課題】、【アクセシビリティの課題】、【調査にかかる負担の大きさ】が抽出された。これらの課題を解決することで、全国の特定行為研修修了者において実行可能な、特定行為の効果を評価するための調査プロトコルが完成すると考えられる。
結論
文献レビューとインタビューから抽出した候補となるアウトカム指標の実施可能性を検証するために、修了者の所属する施設を曝露群、所属しない施設を対照群とした前向きコホート研究を行い、各指標が未入力またはアウトカム発生なしであった割合と、データ入力が困難となる要因について明らかにした。次年度からの全国調査では、実施可能性とともに臨床的意義も踏まえて、用いるアウトカム指標を決定していく。また、データ入力が困難となる要因として抽出された【施設内の倫理承認が必要】、【対象者の不足】、【組織内の連携が必要】、個人要因として【調査実施可能性の課題】、【アクセシビリティの課題】、【調査にかかる負担の大きさ】、について解決する調査プロトコルを作成する。全国調査で収集されたアウトカム指標のデータが、今後の特定行為の実践を評価するにあたり使用できる、ベンチマーク指標となる予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202022013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,589,000円
(2)補助金確定額
12,589,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,564,429円
人件費・謝金 976,000円
旅費 77,600円
その他 7,065,972円
間接経費 2,905,000円
合計 12,589,001円

備考

備考
補助金確定額に加えて利息1円の収入があり、これを支出したため「(2)補助金確定額」と支出の「合計」に差異が生じた。

公開日・更新日

公開日
2021-10-04
更新日
-