文献情報
文献番号
202022012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-020
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松村 泰志(大阪大学大学院医学系研究科 医療情報学)
研究分担者(所属機関)
- 中島 和江(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院)
- 大原 信(筑波大学 医学医療系 臨床医学域 医療情報マネジメント学)
- 石田 博(山口大学大学院医学系研究科 医療情報判断学)
- 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
- 後 信(財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部)
- 美代 賢吾(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 医療情報基盤センター)
- 池田 和之(奈良県立医科大学附属病院 薬剤部)
- 宇都 由美子(鹿児島大学・大学院医歯学総合研究科医療システム情報学)
- 松本 武浩(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 医療情報学)
- 武田 理宏(大阪大学医学部附属病院 医療情報部)
- 中村 京太(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部)
- 岡本 和也(京都大学 医学部附属病院)
- 北村 温美(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部)
- 滝沢 牧子(群馬大学大学院 医学系研究科 医療の質安全学講座)
- 田中 壽(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 玉本 哲郎(奈良県立医科大学 附属病院医療情報部)
- 西川 満則(大阪大学医学部附属病院薬剤部)
- 名越 究(島根大学医学部)
- 中山 典幸(群馬大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,203,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、医療安全に資する病院情報システムの機能を具体的に示し、こうした機能を持つシステムが開発され、病院で広く利用されるようにするための施策を示すことを目的としている。これまで、画像レポートの見落とし問題を検討し、対策と必要なシステム機能を公表した。令和2年度は、公表したことによる効果を調べた。令和元年度から、薬剤に関わるインシデント・アクシデントを体系化し、各事象の防止に有効なシステム機能を検討した。令和2年度は、全事象について検討し、対策に求められる機能を整理してまとめた。
研究方法
画像レポート見落とし問題について、平成30年度、具体的対策内容とそれを実行するために必要なシステム機能を明確にし、この内容は、令和元年12月に事務連絡として公表された。令和2年度は、この公表が、システムベンダーに対し、この機能の開発を促す効果があったかをアンケート形式で調査した。また、提示した機能の多くを持つシステムを新たに導入した病院で、画像レポート見落としにおける効果を調べた。
令和元年度、薬剤投与に関わるインシデント・アクシデント71例を取り上げ、これを類型化して「投与量の間違い」「投与法の間違い」「禁忌薬の投与」「患者選択の間違い」「薬剤選択の間違い」「期限切れ薬剤の投与」の6つのグループ、22項目に体系化し、各項目に対して、全分担研究者で協議し、防止に有効と思える機能をリストアップし、システムの機能種別に整理した。これを保健医療福祉情報システム工業会の代表者に見せて、開発の難易度を評価した。
これらの活動を経て、今後、医療安全に資する病院情報システムを普及させるための施策について、保健医療福祉情報システム工業会の代表者の意見を聴取した上で、分担研究者で協議した。
令和元年度、薬剤投与に関わるインシデント・アクシデント71例を取り上げ、これを類型化して「投与量の間違い」「投与法の間違い」「禁忌薬の投与」「患者選択の間違い」「薬剤選択の間違い」「期限切れ薬剤の投与」の6つのグループ、22項目に体系化し、各項目に対して、全分担研究者で協議し、防止に有効と思える機能をリストアップし、システムの機能種別に整理した。これを保健医療福祉情報システム工業会の代表者に見せて、開発の難易度を評価した。
これらの活動を経て、今後、医療安全に資する病院情報システムを普及させるための施策について、保健医療福祉情報システム工業会の代表者の意見を聴取した上で、分担研究者で協議した。
結果と考察
画像レポート見落とし防止対策とシステムの機能について、令和元年12月11日に公表された事務連絡「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」が、システムベンダーの開発にどのように影響したかを調査したところ、通知後、ベンダーによって対応が異なるものの、多くのベンダーでパッケージソフトとして、これらの機能の開発が進められていることが分かった。また、この機能を搭載したシステムを導入して対策した病院では、未読率が減り、重要所見の見落とし対策業務が効率化したことが報告された。
薬剤に関わるインシデント・アクシデントの防止対策のためのシステム機能について、インシデント・アクシデントの6グループ22項目のそれぞれに対策に有効と思われる機能をリストアップし、システムの種類を軸に整理したところ、9カテゴリに整理できた。以下に一部を抜粋する。投与量の間違いについては、小児のように、患者に応じて適正量が変わるケースも含め、全例で適正量の範囲をシステムが持ち、その範囲を超えた場合にアラートを出す必要があると考えた。投与法の間違いは、投与計画を登録できるようにし、ここから日々のオーダが発行できるように抜本的な改造が必要と考えた。禁忌薬の投与の防止は多彩であるが、一つには製剤ではなく成分に対して禁忌薬が登録でき、チェックできるようにすべきであり、マスタの整備が必要と考えた。薬剤の選択間違いに対しては、名称の工夫や検索法の工夫で、気付きを与える方法があることを示した。根本的なシステム変更を要する項目がある一方、マスタを工夫することで対応できる項目もあり、病院のガバナンスも対策として重要であることを示した。
これまでは、医療安全に資するシステムは、各病院で検討され、個別に開発されてきた経緯がある。しかし、この方式では限られた病院にしか適用されない。対策機能を広く普及させるためには、各システムベンダーがパッケージソフトに機能を組み込む必要がある。そのためには、病院の代表者、ベンダーの代表者、厚生労働省の担当者による協議会を組織し、標準的な機能仕様を提示すべきと考える。これによりシステムベンダーの開発を促すことになる。一方、病院に対しては、システムを活用した対策の運用方法を広報する活動が必要と考える。
薬剤に関わるインシデント・アクシデントの防止対策のためのシステム機能について、インシデント・アクシデントの6グループ22項目のそれぞれに対策に有効と思われる機能をリストアップし、システムの種類を軸に整理したところ、9カテゴリに整理できた。以下に一部を抜粋する。投与量の間違いについては、小児のように、患者に応じて適正量が変わるケースも含め、全例で適正量の範囲をシステムが持ち、その範囲を超えた場合にアラートを出す必要があると考えた。投与法の間違いは、投与計画を登録できるようにし、ここから日々のオーダが発行できるように抜本的な改造が必要と考えた。禁忌薬の投与の防止は多彩であるが、一つには製剤ではなく成分に対して禁忌薬が登録でき、チェックできるようにすべきであり、マスタの整備が必要と考えた。薬剤の選択間違いに対しては、名称の工夫や検索法の工夫で、気付きを与える方法があることを示した。根本的なシステム変更を要する項目がある一方、マスタを工夫することで対応できる項目もあり、病院のガバナンスも対策として重要であることを示した。
これまでは、医療安全に資するシステムは、各病院で検討され、個別に開発されてきた経緯がある。しかし、この方式では限られた病院にしか適用されない。対策機能を広く普及させるためには、各システムベンダーがパッケージソフトに機能を組み込む必要がある。そのためには、病院の代表者、ベンダーの代表者、厚生労働省の担当者による協議会を組織し、標準的な機能仕様を提示すべきと考える。これによりシステムベンダーの開発を促すことになる。一方、病院に対しては、システムを活用した対策の運用方法を広報する活動が必要と考える。
結論
医療安全に資する病院情報システムの機能として、画像レポート見落とし、薬剤に関わるインシデント・アクシデントのそれぞれの対策と必要な機能を提示した。事務連絡で公表されたことで、システムベンダーはこの機能の開発を進めていることが確認できた。また、機能を持つシステムが画像見落としに対して有効であることが確認できた。こうした経験から、病院、ベンダー、厚生労働省による協議会を組織し、対策課題を選定し、標準的な対策システム機能を示すこと、病院に対して対策機能を使った運用法を伝えることが必要と考える。
公開日・更新日
公開日
2021-08-17
更新日
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