胃粘膜に蓄積したエピジェネティック異常の定量による多発胃がん発生予測に関する前向き研究

文献情報

文献番号
200807026A
報告書区分
総括
研究課題名
胃粘膜に蓄積したエピジェネティック異常の定量による多発胃がん発生予測に関する前向き研究
課題番号
H20-ゲノム・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(国立がんセンター研究所 発がん研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 健(国立がんセンター中央病院 内視鏡部)
  • 島津 太一(国立がんセンターがん予防検診研究センター 予防研究部)
  • 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学 第二内科)
  • 藤城 光弘(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
53,639,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後に、異時性多発胃がんの発生が多く、多数の患者の高頻度の経過観察が負担となっている。研究代表者らは、がん患者の非がん部には、既にDNAメチル化異常が蓄積しており、その量が発がんリスクと相関すること(エピジェネティックな発がんの素地)を明らかにしてきた。本研究では、ESD後の異時性多発胃がんの発生予測に非がん部胃粘膜生検組織におけるDNAメチル化量の測定が有用であるか否かを、800例の前向き研究により明らかにする。
研究方法
国立がんセンター、和歌山県立医科大学、東京大学の多施設共同研究として、800例を登録する。除菌等によりピロリ菌現感染が陰性であることを確認した後、内視鏡的に生検検体を採取する。既知及び本研究で同定するマーカー遺伝子のDNAメチル化レベルを、定量的メチル化特異的PCR法により測定する。内視鏡検体採取後、胃がん発生をエンドポイントして、5年間追跡調査する。
結果と考察
平成20年度は、多施設共同研究の体制を整備し、各施設の倫理審査委員会の承認を得た。症例の登録を開始し、460例の登録を完了した。また、日常臨床で利用される高い感度と特異度を達成するために、高いハザード比を示す新規マーカーの分離を進めた。miR-124a遺伝子を用いると、ハザード比10-20に達することを見出した。さらに、研究目的から臨床検査へ移行することを考え、異なる施設・異なる時点でも高度の再現性が得られるように測定方法の高度化を行っている。
結論
非がん部胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常の定量により、発がんリスクを診断できる可能性が高い。前向き試験の症例蓄積は順調に進んでおり、DNAメチル化レベルを用いた発がんリスク診断の臨床的有用性を明らかにできると期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-