献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究

文献情報

文献番号
202022010A
報告書区分
総括
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-016
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
伊達 洋至(一般社団法人日本外科学会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の高度化・複雑化に対応し、安全な医療を広く提供するには、効率的な手術手技教育が求められている。主な教育手法にはOJT、シミュレーション、動物を用いた修練などがある。従来からの手術手技教育の基本はOJTであるが、生命の危機に直結する高度な手術手技など、「失敗しながら」学ぶことのできない医療技術の習得には、“on the job”を補完する教育手法が必要である。Cadaver surgical training(CST:ご遺体を使用した手術手技研修)は、諸外国では手術手技教育の手法の一つとして確立しているが、我が国においても平成24年に「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」が公表され、関係法令との一定の整理が図られたことで、ガイドラインに沿った実施体制が整備されつつある。
研究方法
CSTに対する企業やNPOとの関わりや、ご遺体の写真を含む成果物の公表・出版のルール、学会・研究会等でのCSTの中継の手続きや、医療機器開発における遺体を使用した臨床研究の進め方など、ガイドラインで可能としているものの実施に際して慎重な判断が必要な事例に関する実施要件を検討すべく「産学連携における献体使用に関するワーキンググループ(以下、WG)」を令和元年度に立ち上げ、立法、行政、企業、研究者(法学者、倫理学者)を招聘し、献体制度の無償の精神性を保ちつつ、医工連携を推進するための要件を整理し、「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」として公表された。
本年度研究の実施概要は以下のとおりである。WGの検討案に対し、委員会全体で持ち回りで検討を加えた後に、日本解剖学会や外科系諸学会に所属する委員を含む日本外科学会CST推進委員会に提示した。日本外科学会は、CST推進委員会での更なる検討を経てこれを承認し、令和2年9月に「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドラインに関するQ&A」並びに「遺体を用いた医療機器研究開発(R&D)の実施におけるリコメンデーション(勧告)」を「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」にまとめ、公表した。
さらに令和2年度の第120回日本外科学会の関連企画として、当初、4月にライブCSTがCST推進委員会との共同で企画していたが、初めての試みでライブでのリスク回避が懸念されたため、事前録画したCSTのライブ公開を行うこととなった。そして、コロナ下で順延となった学会の8月15日に動画を公開することとなった。それに伴い7月30日に行われたCSTライブデモンストレーションに対してWGでは実施内容を検討し、動画公開に際する留意点に関する指導を実施した。さらに、10月15日に全体会議を行い、提言公表による効果を確認し、今後の方向性を検討した。
結果と考察
実際の手術においては高額な医療機器や手術材料の費用は診療報酬として請求することができるが、トレーニングではこれらの費用を診療報酬として請求することはできない。また、献体の登録、ご遺体の保存、管理等の業務にも新たな運営経費と人的資源が必要となる。しかし、受講する医師からの参加費のみでこれらの経費を賄うことは不可能であり、大学内の新たな予算に加えて、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくてはCSTの実施ができない現状があり、今後の普及を進める上での大きな課題であった。一方、大学と企業間の医療機器開発では、ご遺体を使用した医療機器開発については国内での実施例がほとんどなく、実施基準は示されていない状況であった。
本研究において「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」を公表したことにより、手術手技実習と医療機器開発を両輪とした臨床医学の教育研究における献体使用を継続して実施可能とするための運営形態の確立に向けて、一定の方向性を示すことができた。さらにガイドライン公開後の我が国のCSTについて、10年のアーカイブを作り、これからの在り方について提言を英文誌にまとめた。本研究を契機として、臨床医学の教育、研究における遺体使用が今後更に発展することに期待したい。
結論
国民に対して、高度な医療を安全に提供するためには、CSTの実施体制の充実が必須である。本研究では、広く社会の理解と支援が得られる臨床医学の教育研究における遺体使用の実施体制を確立すべく、CSTの実施における留意点を具体的な事例をあげて提示した。また、医療機器開発等の実施における遺体使用のルールを明確化した。
これらの成果から、我が国における今後のご遺体を使用した臨床医学教育と医工連携の推進が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022010B
報告書区分
総合
研究課題名
献体による効果的医療技術教育システムの普及促進に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-016
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
伊達 洋至(一般社団法人日本外科学会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の高度化・複雑化に対応し、安全な医療を広く提供するには、効率的な手術手技教育が求められている。主な教育手法にはOJT(on the job training)、シミュレーション、動物を用いた修練などがある。生命の危機に直結する高度な手術手技など、「失敗しながら」学ぶことのできない医療技術の習得には、“on the job”を補完する教育手法が必要である。Cadaver surgical training(CST:ご遺体を使用した手術手技研修)は、諸外国では手術手技教育の手法の一つとして確立しているが、我が国においても平成24年に「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」が公表され、関係法令との一定の整理が図られたことで、ガイドラインに沿った実施体制が整備されつつある。
研究方法
平成30年度は、国内海外の調査研究からCST の現状を把握し、実施経費や企業との関係のあり方の検討を行った。令和元年度は、医学教育と医療機器開発等の臨床研究における遺体使用を円滑に実施するための新たな提言の素案をCST推進委員会を中心に「産学連携における献体使用に関するワーキンググループ」でまとめ、研究班の全体会議で検討した。令和2年度は、ガイドラインを補足するCSTに関する新たな提言として、「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドラインに関するQ&A」と「遺体を用いた医療機器研究開発(R&D)の実施におけるリコメンデーション(勧告)」からなる「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」を日本外科学会CST推進委員会に提示し、日本外科学会はこれを公表した。
海外における実施例の調査では、平成30年はドイツにおいて先進的にCSTや医療機器開発を行っているアーヘン工科大学Center for Teaching and Trainingを視察し、本件の第一人者である同大学のTolba教授とディスカッションを行った。令和元年は、Tolba教授を招聘し、日本外科学会CST推進委員会と本研究班の共催企画として、第72回日本胸部外科学会定期学術集会において、海外の産学連携で運営するカダバーセンターの現状の講演を行い、我が国の外科医に海外の実情を周知させた。また、韓国等の諸外国におけるCSTの実施状況に関しては、公開された資料を検索し、その内容を基に我が国との比較検討を行い、報告書にまとめた。
結果と考察
CST、アニマルトレーニングなどの手術手技実習では技術習得のために、実臨床に準じた内視鏡や手術顕微鏡などの医療機器やインプラントなどの手術材料を使用した模擬手術を実施する。実際の手術においては高額な医療機器や手術材料の費用は診療報酬として請求することができるが、トレーニングではこれらの費用を診療報酬として請求することはできない。また、献体の登録、ご遺体の保存、管理等の業務にも新たな運営経費と人的資源が必要となる。しかし、受講する医師からの参加費のみでこれらの経費を賄うことは不可能であり、大学内の新たな予算に加えて、厚生労働省の「実践的な手術手技向上研修事業」などの補助金や、医療機器メーカー等からの医療機器の貸与などがなくてはCSTの実施ができない現状があり、今後の普及を進める上での大きな課題であった。一方で、大学と企業間の医療機器開発では、ご遺体を使用した医療機器開発については国内での実施例がほとんどなく、実施基準は示されていない状況であった。
本研究において提言を作成し、これを公表したことにより、手術手技実習と医療機器開発を両輪とした臨床医学の教育研究における献体使用を継続して実施可能とするための運営形態の確立に向けて、一定の方向性を示すことができた。さらにガイドライン公開後の我が国のCSTについて、10年のアーカイブを作り、これからの在り方について提言を英文誌にまとめた。本研究を契機として、臨床医学の教育、研究における遺体使用が今後更に発展することに期待したい。
結論
国民に対して、高度な医療を安全に提供するためには、CSTの実施体制の充実が必須である。本研究では、広く社会の理解と支援が得られる臨床医学の教育研究における遺体使用の実施体制を確立すべく、CSTの実施における留意点を具体的な事例をあげて提示した。また、医療機器開発等の実施における遺体使用のルールを明確化した。
これらの成果から、我が国における今後のご遺体を使用した臨床医学教育と医工連携の推進が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床医学教育及び研究における死体解剖のガイドラインを補足するCSTに関する新たな提言として、「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドラインに関するQ&A」と「遺体を用いた医療機器研究開発(R&D)の実施におけるリコメンデーション(勧告)」からなる「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」をまとめ、公表した。
臨床的観点からの成果
本研究では、広く社会の理解と支援が得られる臨床医学の教育研究における遺体使用の実施体制を確立すべく、CSTの実施における留意点を具体的な事例をあげて提示した。また、医療機器開発等の実施における遺体使用のルールを明確化した。これらの成果から、我が国における今後のご遺体を使用した臨床医学教育と医工連携の推進が期待できる。
ガイドライン等の開発
2019年9月12日、2019年11月6日、2020年7月30日にアドホック委員会を開催し、「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドラインに関するQ&A」と「遺体を用いた医療機器研究開発(R&D)の実施におけるリコメンデーション(勧告)」からなる「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」をまとめた。
その他行政的観点からの成果
本研究の推進によって高度な医療の安全な普及におけるCSTの重要性が認識され、厚生労働省「実践的な手術手技向上研修事業」の委託事業と設備整備事業の継続が得られた。これにより、国内でのカダバートレーニングの実施環境が大きく前進し、令和2年度までに全国の33医科大学・医学部でCSTが実施されるに至り、高度な医療の安全な普及に対して一定の効果が得られたと考えられる。
その他のインパクト
本研究班と日本外科学会CST推進委員会との共同企画として、日本外科学会定期学術集会(第119回~121回:平成31年~令和2年)において、CST普及の課題と今後の方向性について議論された。第72回日本胸部外科学会定期学術集会(令和元年)では本研究班と学会との企画による海外におけるカダバーセンターの現状に関するシンポジウムが開催された。「臨床医学研究における遺体使用に関する提言」に従って、第120回日本外科学会定期学術集会関連企画としてCSTのライブデモンストレーションが実施された(令和2年)。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202022010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,500,000円
(2)補助金確定額
872,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,628,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 16,705円
旅費 220,630円
その他 214,715円
間接経費 420,000円
合計 872,050円

備考

備考
緊急事態宣言や新型コロナウイルス感染拡大により、web会議がメインとなったため、予定より補助金を使用しなかった。

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-