大規模発現解析より得られた新規酵素心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼ(cardiacMLCK)を利用した心不全治療薬・診断マーカーの開発

文献情報

文献番号
200807024A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模発現解析より得られた新規酵素心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼ(cardiacMLCK)を利用した心不全治療薬・診断マーカーの開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 高島 成二(大阪大学 医学研究科)
  • 南野 哲男(大阪大学 医学研究科)
  • 朝倉 正紀(国立循環器病センター 心臓血管内科 )
  • 小室 一成(千葉大学 医学研究院)
  • 筒井 裕之(北海道大学 医学系研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学 医学系研究科)
  • 浅沼 博司(近畿大学 医学部附属病院)
  • 古川 秀比古(第一三共株式会社 創薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
45,198,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心不全は高齢化社会の進行と共に急速に増加しており社会的にも重要な疾患である。しかし、いまだその病態は不明な点が多い。また治療法も限られており、新たな治療標的の同定が待たれている。
近年の遺伝子解析技術の進歩により、疾患をもつ臓器の遺伝子発現を網羅的に解析することが可能となり積極的におこなわれている。その膨大なデータの中から創薬対象となる遺伝子を抽出し、詳細に解析を行うことが現在これらの解析を臨床応用に結びつけるための重要な課題である。
本研究は、重症心不全患者心の遺伝子発現の詳細な解析から得られた情報をもとに新規の病態遺伝子を発見し、その物質を利用した心不全治療薬をめざす。さらにそれらの遺伝子産物をもとにした新しい診断薬等の開発をめざすことを目的とする。
研究方法
 重症心不全の心筋における遺伝子発現の網羅的解析をおこなうことにより、患者の病態と相関して発現変化する遺伝子を同定する。さらに同定された遺伝子について生体内および生体外において生化学的・生理学的解析を行い、心不全の病態との相関を明らかにする。またヒト心不全での当該遺伝子の発現制御の解析、当該遺伝子を活性制御する薬剤の検索を行う。
結果と考察
 重症心不全患者の病態を反映して鋭敏にその遺伝子発現レベルが変化させるあらたな遺伝子cardiacMLCK(心臓特異的ミオシン軽鎖燐酸化酵素)を同定した。cardiacMLCKは極めて特異的に心臓に発現していた。また、培養細胞を用いた生体外および各種実験動物を使用した生体内での機能解析によって、cardiacMLCKは心臓における収縮構造蛋白の構築、心臓の収縮性の制御に重要な働きを示すことが示された。これらの作用の分子基盤を明らかにするためにcardiacMLCKにより燐酸化された基質とのみ結合する蛋白のスクリーニングを行いあらたな結合蛋白の同定にいたった。この新たに同定された結合蛋白およびcardiacMLCKには心臓の収縮性を変化させる、あるいは障害を受けた心筋の回復を増強する機能が存在することが予想され、新たな心不全治療の創薬基盤となると期待される。
結論
重症心不全患者の協力のもとで行われた大規模な遺伝子発現解析により、新規心不全治療薬の標的候補であるcardiacMLCKを同定し、その機能解析を行った。今後さらにcardiacMLCKの分子動態を解析し、その関連分子を含めた蛋白群を標的とした心不全治療薬の開発を行う。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-