文献情報
文献番号
202022009A
報告書区分
総括
研究課題名
死因究明等の推進に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-015
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 聡(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
- 渡辺 弘司(公益社団法人 日本医師会)
- 澤 倫太郎(日本医師会 総合政策研究機構)
- 上野 智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社)
- 水谷 渉(公益社団法人 日本医師会 総合政策研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
城守 国斗(令和2年4月1日~令和2年6月26日)
渡辺 弘司(令和2年6月27日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢化の進展に伴う死亡数増加や大規模災害の発生時の検案等、死因究明とその体制強化の重要性はますます高まっている。こうした背景のもと政府は「死因究明等推進計画」を策定し(平成26年6月)、死因究明に係る取組みを進めてきた。本研究班でも、平成26年度より「死因究明等推進計画」の諸課題について研究に取り組んでおり、令和元年度までに一定の成果を収めた。具体的には、死亡診断書(死体検案書)の電子的交付のスキーム、死亡診断書(死体検案書)の書式、検案料金の算定基準に関する提言及び死亡時画像診断の自己学習用教材等の開発を行った。そこで令和2年度の研究においては、平成26~令和元年度の研究成果を踏まえつつ、特に死亡診断書(死体検案書)の電子的交付を自治体で実際に行うことを想定して、スキーム及び課題を整理し、実証実験に備えることとした。また、今年度新たに閣議決定される予定の新たな「死因究明等推進計画」に基づく死因究明体制の充実に向けた行政施策に資する成果を得ることを目的とした。
研究方法
死亡診断書(死体検案書)の電子的交付については、医療機関、自治体間で電子文書(主治医意見書等)の交換を行っている自治体へのヒアリングを行い、利点や課題を検討した。また、実証実験に必要なDiedAiの機能について開発を行った。死亡時画像診断に特化したe-learningを含めた自己学習用の教材については、平成26~令和元年度に引き続き、症例の追加等により開発を継続した。また、令和2年度に策定した検案費用の算定基準と単価を用いて、モデル事例について実際の金額算定を試みた。
結果と考察
死亡診断書(死体検案書)の電子的交付については、愛知県碧南市及び山口県萩市の担当課及び医師会へのヒアリングを行い、利点として郵送と比べて送受信の時間が短縮されること、文字の読みやすさがあげられ、課題として電子と書面が混在する場合の事務負担やシステム不具合のリスクがあげられた。DiedAiについては、死亡届と死亡診断書の突合を可能とするソフトの開発を行った。e-learningを含めた自己学習用の教材については、令和元年度までと同様、厚生労働省が日本医師会を委託先として実施している小児死亡例に対する死亡時画像診断のモデル事業で収集した症例5例を、e-learningシステムに追加し専用サイトの充実を図った。検案に際して行われる検査の費用や検案書発行料の費用負担のあり方については、実際に算定を行ってモデルケースとして示した。死亡診断書(死体検案書)の電子的交付は、電子化の利点も十分考えられるものの、主治医意見書のスキームを死亡診断書に応用するには、戸籍事務の現状を踏まえた課題の克服が必要であると考えられた。また、本研究におけるe-learningシステムについては、これまでの教材用症例の提供をもって一旦の区切りとし、今後、厚生労働省が日本医師会を委託先として実施している小児死亡例に対する死亡時画像診断のモデル事業において、Aiの実施や検視立ち会い、検案などでご遺体に接する機会の多い医師向けのマニュアルを作成し、検案を担う医師が死亡時画像診断に習熟しやすい環境を整えることを目指す。検案費用の検討においては、今回提示した算定結果を問題提起の契機とし、今般の新しい死因究明等推進計画において期待される各自治体の死因究明等協議会での議論等を通して議論が深められることを期待したい。
結論
本研究班における提言は、特に死亡診断書の電子化に関してデジタル・ガバメント実行計画等の政策に活用され、また検案の質向上に関して死亡時画像診断(Ai)におけるe-learningシステムの確立に貢献するなど着実な成果をあげた。今後は、新しい死因究明等推進計画のもと引き続き死因究明体制の充実に向けた取組みを行っていくこととしたい。本研究の成果は、死因究明等推進計画検討会の議論に還元され、政策の推進に寄与する等十分な役割を果たしてきたといえる。今後も、死因究明等推進計画のフォローアップなど関連施策の発展に貢献すべく、検討を深化させていくことが重要と考える。
公開日・更新日
公開日
2021-06-29
更新日
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