新規融合型がん遺伝子を標的とした肺がんの分子診断法および治療法の開発

文献情報

文献番号
200807023A
報告書区分
総括
研究課題名
新規融合型がん遺伝子を標的とした肺がんの分子診断法および治療法の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
間野 博行(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 幸比古(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
51,797,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主任研究者らは喫煙歴を有する62才男性肺腺がん患者外科切除検体よりcDNA発現レトロウィルスライブラリーを構築し、マウス3T3細胞を用いて形質転換フォーカスのスクリーニングを行った結果、新規がん遺伝子EML4-ALKを発見することに成功した(Nature 448: 561-566)。本研究計画で我々は、EML4-ALKの肺がん原因遺伝子としての役割を証明すると共に、その下流シグナルの同定、さらにEML4-ALKを標的とした分子診断法および分子標的治療法の開発を目指す。
研究方法
ALK遺伝子のエクソン20(チロシンキナーゼ領域の上流)にin-frameで融合しうるEML4エクソンのどの領域からALKへ融合したcDNAも、全て検出可能なたmultiplex RT-PCRを開発した。SPC遺伝子プロモーターの下流にEML4-ALK cDNAを挿入した発現ユニットを作製し、これらを用いたトランスジェニックマウスを作成した。
結果と考察
EML4-ALK検出用multiplex RT-PCRプロトコールを開発し、これを用いて多数の肺がん検体(喀痰+生検標本)からRNAを取り出してPCRを行った。計253種類の肺腺がんを解析したところ計11検体にEML4-ALKを検出した。さらに肺小細胞がん、他の臓器の腫瘍等403検体においても同様な解析を行ったが、いずれもEML4-ALKを検出しなかった。以上よりEML4-ALKは肺がん固有な発がん遺伝子であると考えられた。一方、SPCトランスジェニックマウスは生後数週で両肺に数百個の肺腺がんを同時多発的に発症し、EML4-ALKの驚くべきがん化能が証明された。さらにこれらトランスジェニックマウスに経口接種可能なALK阻害剤を投与し、生体における治療モデル実験を行ったところ、薬剤投与群においてのみ腫瘍の著明な縮小を確認した。
結論
我々の解析により非小細胞肺がんの約5%がEML4-ALKを有することが判り、これらの症例はALK阻害剤による分子標的治療の対象となると期待される。これらの分子標的治療への導入の際にEML4-ALK陽性肺がんを正確かつ感度良く検出することは極めて重要であるが、今回の解析によりEML4遺伝子からALK遺伝子への融合ポイントは複数(計10種類以上)存在することが判った。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-