地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進するための政策研究

文献情報

文献番号
202022007A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進するための政策研究
課題番号
H30-医療-一般-013
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
  • 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
  • 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
  • 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
  • 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科)
  • 小林 美亜(静岡大学 創造科学技術大学院)
  • 副島 秀久(支部熊本県済生会)
  • 町田 二郎(済生会熊本病院腎泌尿器科)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科政策科学分野)
  • 康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
  • 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科 医療システム学分野 医療経済・病院経営学部門)
  • 佐藤 大介(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年度より都道府県は地域医療構想を策定し、病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等に取り組んでいる。国内における先進的事例等を整理しつつ、病床の機能分化・連携の推進等を推進するそれぞれの施策について、効果の定量化、プロセスの分析・整理等を行い、都道府県や医療機関等における病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等の推進に資することを目的とした。さらに第7次医療計画において、中間見直しを推進するための技術的な助言や、次期(第八次)医療計画の分析、策定にあたっての課題抽出及び今後の医療計画を推進し実行するための対策の検討、病床機能報告の定量的基準も含めた基準の開発及び活用方法の検討も行うものとする。
研究方法
本研究班は6つの分担班に分けて研究を進め、班会議を2回開催し、研究の進捗状況の管理、調整を行いながら進めた。
結果と考察
1. 医療計画班・・・公開されている基金事業計画をデータベース化して第6次医療計画が実施された時期と第7次医療計画の実施時期とを比較した。医療従事者の確保が難しい地方の県で増加して、大都市あるいはその周辺の都道府県で減少しているとは必ずしも言えなかった。また、医療機関への委託が全体の約1/4を占めていることも、基金が単に補助金化している可能性も示唆された。
2. 定量分析班・・・地域医療構想のさらなる推進に向けて、調整会議の議論に資するべく、平成30年度の病床機能報告オープンデータを用いて医師・看護師以外の職種の職員数の集計分析等を行った。
3. 機能連携班①・・・熊本県上益城郡にある谷田病院と済生会熊本病院の2施設間で医療連携が完結した患者で、誤嚥性肺炎3名、脳卒中(脳出血)1名、大腿骨近位部骨折4名である。基本アウトカムで不足するような病状の悪化症例はなかった。専門性の経験が浅い看護師にとってはアウトカムと観察項目の組み合わせ設定に戸惑いが生じ、真のバリアンスではなくてもバリアンスと記録するなど、設定方針に改善の余地があることも明らかになった。本看護記録の運用結果を定期的に共有し学びを深める場と時間の設定が必要ということである。
機能連携班②・・・回復期等移行チェックリストの実装に向けての課題を検証した。構造上の大きな問題は見当たらず、RPA手法を前提とした形で、十分に実装可能と考える。同時に、連携先と医療や介護の目的を共有する上でBOMが有効であること、BOMを活用する上でも看護実践用語標準マスターなど既存マスターの項目追加は必要であることも明らかになった。

4. 実地検証班・・・奈良県の国保レセプトデータ(医療・介護)を用いて、胃ろう等の人工栄養開始後の生存期間の分析、疾病発症が健康状態の終了に与える影響、後期高齢者医療制度加入者の死亡前医療費の分析を行った。

5. 地域実情分析班・・・地域医療構想に沿った具体的対応方針の再検証を地方自治原則の基で進めるために、公立・公的医療機関の再編統合の際の会計基準間のコンバージョンの可能性、公立病院の再編統合に係る地方財政措置について整理を行った。開設主体によって情報開示に関する指針が確立されていないため、開示された財務諸表に対する勘定科目の階層性に注意する必要がある。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、限られたインタビュー調査のもとで遂行されたことに留意が必要である。
結論
本研究の成果は、わが国の地域医療構想(病床機能分化・連携)および医療計画(5疾病5事業)の進捗管理にあたって有用なものとして考えられる。研究成果については、国の「地域医療構想ワーキンググループ」や都道府県を対象とする医療政策研修会などで利活用される予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-11-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-11-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022007B
報告書区分
総合
研究課題名
地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進するための政策研究
課題番号
H30-医療-一般-013
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
  • 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
  • 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
  • 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科)
  • 小林 美亜(静岡大学 創造科学技術大学院)
  • 副島 秀久(支部熊本県済生会)
  • 町田 二郎(済生会熊本病院腎泌尿器科)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科政策科学分野)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
  • 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科 医療システム学分野 医療経済・病院経営学部門)
  • 佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 糖尿病学講座)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 佐方 信夫(国立大学法人筑波大学 医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野)
  • 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年度より都道府県は地域医療構想を策定し、病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等に取り組んでいる。国内における先進的事例等を整理しつつ、病床の機能分化・連携の推進等を推進するそれぞれの施策について、効果の定量化、プロセスの分析・整理等を行い、都道府県や医療機関等における病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等の推進に資することを目的とした。さらに第7次医療計画において、中間見直しを推進するための技術的な助言や、次期(第八次)医療計画の分析、策定にあたっての課題抽出及び今後の医療計画を推進し実行するための対策の検討、病床機能報告の定量的基準も含めた基準の開発及び活用方法の検討も行うものとする。
研究方法
本研究班は6つの分担班に分けて研究を進め、班会議を2回開催し、研究の進捗状況の管理、調整を行いながら進めた。平成30年度より当初3か年の計画で研究を行い、一部分担研究については1年間繰り越して実施した。
結果と考察
1. 医療計画班・・・5疾病5事業について、国の検討会での議論や進捗を踏まえて担当者とのヒアリングをおこなった。中間見直しの指標としての考え方やデータリソース、集計定義などを精査した。公開されている基金事業計画をデータベース化して第6次医療計画が実施された時期と第7次医療計画の実施時期とを比較した。医療従事者の確保が難しい地方の県で増加して、大都市あるいはその周辺の都道府県で減少しているとは必ずしも言えなかった。また、医療機関への委託が全体の約1/4を占めていることも、基金が単に補助金化している可能性も示唆された。

2. 定量分析班・・・地域医療構想のさらなる推進に向けて、調整会議の議論に資するべく、平成 29 年度病床機能報告オープンデータから医療機能別や病院ごとの病床構成、入退院経路、算定する入院基本料等について分析し可視化を行った。また平成30年度の病床機能報告オープンデータを用いて医師・看護師以外の職種の職員数の集計分析等を行った。

3. 機能連携班①・・・熊本県上益城郡にある谷田病院と済生会熊本病院の2施設間で医療連携が完結した患者で、誤嚥性肺炎3名、脳卒中(脳出血)1名、大腿骨近位部骨折4名である。基本アウトカムで不足するような病状の悪化症例はなかった。専門性の経験が浅い看護師にとってはアウトカムと観察項目の組み合わせ設定に戸惑いが生じ、真のバリアンスではなくてもバリアンスと記録するなど、設定方針に改善の余地があることも明らかになった。本看護記録の運用結果を定期的に共有し学びを深める場と時間の設定が必要ということである。
機能連携班②・・・急性期から回復期等への連携を想定した回復期等移行チェックリストを作成し、その実装に向けての課題を検証した。構造上の大きな問題は見当たらず、RPA手法を前提とした形で、十分に実装可能と考える。同時に、連携先と医療や介護の目的を共有する上でBOMが有効であること、BOMを活用する上でも看護実践用語標準マスターなど既存マスターの項目追加は必要であることも明らかになった。

4. 実地検証班、大規模データ班・・・平成30年度から令和3年度にかけてNDB・DPC等や奈良県等KDBのデータベースを利用した分析を行った。奈良県の国保レセプトデータ(医療・介護)を用いて、胃ろう等の人工栄養開始後の生存期間の分析、疾病発症が健康状態の終了に与える影響、後期高齢者医療制度加入者の死亡前医療費の分析を行った。

5. 地域実情分析班・・・地域医療構想に沿った具体的対応方針の再検証を地方自治原則の基で進めるために、公立・公的医療機関の再編統合の際の会計基準間のコンバージョンの可能性、公立病院の再編統合に係る地方財政措置について整理を行った。開設主体によって情報開示に関する指針が確立されていないため、開示された財務諸表に対する勘定科目の階層性に注意する必要がある。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、限られたインタビュー調査のもとで遂行されたことに留意が必要である。
結論
 本研究の成果は、わが国の地域医療構想(病床機能分化・連携)および医療計画(5疾病5事業)の進捗管理にあたって有用なものであると考えられ、国の「第8次医療計画等に関する検討会」や「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」、都道府県を対象とする医療政策研修会などで利活用される予定である。また、各都道府県が地域医療構想を推進するために必要となる地域医療医療介護総合確保基金の有効な使途への反映されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-11-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
第77~79回日本公衆衛生学会総会(2018~2020年)において「医療・介護サービスの需要の増大」、「健康福祉関連ビッグデータの結合による解析の可能性と問題点」等の演題で、年度ごとに最新情報を踏まえた研究成果の発表を行なった。
臨床的観点からの成果
該当なし。
ガイドライン等の開発
都道府県が地域医療構想の策定や、構想の実現のための施策を立案し実施する際の参考を目的とした「地域医療構想を推進するために参考となる事例集(平成29年度版)」を令和元年7月に発行した。
その他行政的観点からの成果
医療計画班において平成30年度からの第7次医療計画の策定と医療計画進捗管理のための指標を作成し、これを公表した。これに引き続き第7次医療計画の中間見直しを盛り込むにあたっての必要な事項を奈良県立医科大学公衆衛生学講座のホームページ上にて公開した。
その他のインパクト
レセプト情報・特定健診等等情報データベースにおける患者突合方法及び装置、レセプト情報データベースにおける患者の死亡判定方法及び装置の特許取得。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
83件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
レセプト情報・特定健診等情報データベースにおける患者突合方法及び装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2018-075685
発明者名: 今村 知明、東野 恒之、野田 龍也、久保 慎一郎、加藤 源太、西岡 祐一、明神 大也
権利者名: 公立大学法人奈良県立医科大学
出願年月日: 20180410
取得年月日: 20191024
国内外の別: 国内
特許の名称
レセプト情報データベースにおける患者の死亡判定方法及び装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2019-094138
発明者名: 今村 知明、野田 龍也、久保 慎一郎、西岡 祐一、明神 大也、中西 康裕、東野 恒之、降旗 志おり
権利者名: 公立大学法人奈良県立医科大学
出願年月日: 20190517
取得年月日: 20201126
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
久保慎一郎、野田龍也、西岡祐一、他
レセプト情報・特定検診等情報データベース(NDB)における患者突合の精度向上に関する手法開発
医療情報学論文集 , 40 (Suppl) , 765-769  (2020)

公開日・更新日

公開日
2022-05-12
更新日
2022-11-12

収支報告書

文献番号
202022007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
31,000,000円
(2)補助金確定額
31,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,417,487円
人件費・謝金 4,581,494円
旅費 668,820円
その他 24,332,199円
間接経費 0円
合計 31,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
-