体脂肪減少因子を用いた2型糖尿病の治療

文献情報

文献番号
200807020A
報告書区分
総括
研究課題名
体脂肪減少因子を用いた2型糖尿病の治療
課題番号
H19-ゲノム・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純(岐阜大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀川 幸男( 岐阜大学 大学院医学系研究科 )
  • 鈴木 英司( 岐阜大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
36,032,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人2型糖尿病はやせ型でインスリン分泌不全を特徴とするが、軽度の肥満やインスリン抵抗性が疾患発症や進行の誘因となる。中等度以上の肥満や抵抗性の場合は動脈硬化が進展しやすく、その予防において過体重の解消は特に重要である。しかし、食事と運動療法を中心とした減量は不断の努力を要し、十分な改善に至らない場合が多い。従って、効果的な減量と血糖改善を同時に見込める治療は理想的である。
 申請者らは、膵島トランスクリプトームを用いて分泌蛋白に焦点を当てた研究を行なってきた。正常と糖尿病における出現頻度の比較を行ない、発現が大きく変化する幾つかの遺伝子に着目した。実験動物を用いた発現実験から、32kDaのコード分子が体脂肪量を減少させることを見出し、遊離脂肪酸に誘導する同分子を「リポトランス」と命名した。興味深いことに、同分子はラットにおいて耐糖能を亢進させた。本研究では、糖尿病患者のエネルギー代謝における意義の解析、血中診断法の開発、サブ表現型のSNP体質診断、治療への臨床応用を目指す。
研究方法
リポトランスのアデノ発現系を用いてインスリン分泌、肝の糖取り込みについて検討し、その支配下遺伝子群の発現解析を行った。ウイルスの影響の排除と長期効果を観察するためにTG動物を作成した。遺伝子全域をSNPスクリーニングし、血中レベルの量的形質との相関を解析し、モニターマーカーを探索した。
結果と考察
血糖降下にはインスリン分泌や感受性の変化は大きく関与せず、むしろ肝での糖取り込みと中性脂肪への代謝が主である可能性が示された。過剰発現のTGモデル動物を完成することもできたので個体レベルでの長期解析へと発展させることができる。ヒトでは種々の動脈硬化マーカーとの関連を解析し、同遺伝子についてSNPハプロタイプを用いて体質診断法の開発を行なってきた。その結果、血中レベルと相関するSNPマーカーを見いだすことに成功した。治療の際、補充投与の適応対象の選別に有用と考えられる。
結論
分泌蛋白は血中レベルの測定が容易であり、同時に血中投与による治療も望めるので肥満症の診断と治療に直結する。さらに、耐糖能障害や動脈硬化の罹患素因の早期判定が可能になればメタボリックシンドローム健診に応用できる特色がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
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