文献情報
文献番号
202022005A
報告書区分
総括
研究課題名
へき地医療の向上のための医師の働き方およびチーム医療の推進に係る研究
課題番号
H30-医療-一般-010
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 和彦(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 前田 隆浩(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 井口 清太郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 総合地域医療学講座)
- 小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
- 松本 正俊(広島大学大学院医系科学研究科)
- 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
へき地医療の維持・向上のために、各都道府県の医療計画ではへき地医療事業計画が策定されている。平成30[2018]年度からの第7次医療計画の開始に際しては、別途に作成されてきたへき地保健医療計画を、医療計画内のへき地医療事業計画に一本化(統合)する変化があった。また、最近では、働き方改革やチーム医療の推進もへき地医療の維持・向上に対する検討案件となっている。こうした流れを汲んで、本研究では、1)各都道府県が策定したへき地医療計画の内容、2)全国のへき地医療機関における医師の勤務と情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)の利活用、3)全国のへき地医療機関における特定行為を伴う看護に関する認識と活動について検討した。なお、本研究は3年計画であり、本年度は3年目に当たる。本年度は、これまでの集計調査をもとに事例収集を加えて、近時のへき地医療事業計画づくりの検討資料となることを念頭に置いて進めた。
研究方法
次の3つを研究の主題とした:1)へき地医療事業計画の今後の展開に向けての視点や事例、2)へき地医療機関で実施されているオンライン診療の実際、3)へき地医療機関における特定行為研修修了看護師の活動の実際。方法として、1)では、各都道府県のへき地医療事業計画文書と本研究班の調査情報をもとに合議して、へき地医療事業計画の展開への視点や新動向とし得る事例を挙げた。2)では、オンライン診療を先行して実施している3施設を選定して、その実際についてヒアリング調査を行った。3)では、へき地医療機関(病院)に勤務する特定行為研修修了看護師(6人)を対象にして、活動の実際を半構造化面接で調査した。いずれにおいても、倫理審査委員会の承認等の倫理的配慮のもとで実施された。
結果と考察
1)今後の計画の展開に向けての視点として、へき地医療拠点病院の主事業に対する踏み込んだ検討や、最近の地域医療政策、特に医療体制構築と人材確保(育成や労働環境支援を含む)の面についての検討が必要と考えられた。また、新動向の事例として、診療に加えて、キャリア形成の支援を、へき地医療機関を含めて全県的に行うICT(各施設に専用テレビモニター・カメラを設置したテレビ会議システム)基盤事業を取り挙げた(本事例については、2020年度の厚生労働省へき地医療支援機構等連絡会議でも紹介した)。これらの視点や事例では、最近の地域医療政策との符合、そして医療計画を策定する他分野や他組織との協議が求められ、医療計画全般を見渡しての対応の重要性が示唆される。
2)オンライン診療は、在宅医療、救急医療、慢性期外来診療で、高齢者を対象にしばしば利活用されていた。本土と離島を結んでの利活用もみられた。Doctor to Patient(D to P)に加えて、D to P with Nurse(N)で実施されていることが多かった。これらは、診断能の向上、医師の移動負担の軽減、看護師との情報共有の効率化、患者の安心感の高まり、患者の通院負担の軽減等に寄与していた。今回の事例は、遠隔地と連携し、またD to P with N(看護師との協働)の形態を取りながら進められており、へき地医療に比較的特異的な要素として見受けられた。へき地医療にICTを導入する際のヒントの一つになり得る。
3)特定行為研修修了看護師の調査から、へき地医療機関(病院)で役割を発揮できる特定行為として、直接動脈穿刺による採血、気管カニューレの交換、創傷管理関連、感染に係る薬剤投与関連等が挙げられた。いずれも医師からタスクシフティングされ得る行為であった。これらの活動は病院内での好評価を得ており、多職種連携の促進にも寄与した。へき地医療機関での特定行為を伴う看護の実例は少なく、今回の調査で医師からタスクシフティング・シェアリングされ得る行為が実際に有用であると確認できたことは意義深い。特定行為を伴う看護の普及具合と活動の実態を踏まえると、へき地医療拠点病院等を拠点にして、特定行為研修修了看護師がへき地診療所やへき地での患者にアウトリーチする広域対応の体制づくりが提案される。
2)オンライン診療は、在宅医療、救急医療、慢性期外来診療で、高齢者を対象にしばしば利活用されていた。本土と離島を結んでの利活用もみられた。Doctor to Patient(D to P)に加えて、D to P with Nurse(N)で実施されていることが多かった。これらは、診断能の向上、医師の移動負担の軽減、看護師との情報共有の効率化、患者の安心感の高まり、患者の通院負担の軽減等に寄与していた。今回の事例は、遠隔地と連携し、またD to P with N(看護師との協働)の形態を取りながら進められており、へき地医療に比較的特異的な要素として見受けられた。へき地医療にICTを導入する際のヒントの一つになり得る。
3)特定行為研修修了看護師の調査から、へき地医療機関(病院)で役割を発揮できる特定行為として、直接動脈穿刺による採血、気管カニューレの交換、創傷管理関連、感染に係る薬剤投与関連等が挙げられた。いずれも医師からタスクシフティングされ得る行為であった。これらの活動は病院内での好評価を得ており、多職種連携の促進にも寄与した。へき地医療機関での特定行為を伴う看護の実例は少なく、今回の調査で医師からタスクシフティング・シェアリングされ得る行為が実際に有用であると確認できたことは意義深い。特定行為を伴う看護の普及具合と活動の実態を踏まえると、へき地医療拠点病院等を拠点にして、特定行為研修修了看護師がへき地診療所やへき地での患者にアウトリーチする広域対応の体制づくりが提案される。
結論
へき地医療事業計画では、主事業の検討に加えて、最近の地域医療政策との符合、ならびに医療計画を策定する他分野や他組織との協議の検討も考慮される。看護師と協働する形態のオンライン診療や、特定行為研修修了看護師の活動の広域化体制に関する検討も進めたい。今回の一連の成果は、近時のへき地医療事業計画の中間見直しや第8次医療計画策定の時の検討資料になり得ると考えている。
公開日・更新日
公開日
2022-05-12
更新日
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