日本の都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発

文献情報

文献番号
202022004A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発
課題番号
H30-医療-指定-009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 野村 周平(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
  • Md Mizanur Rahman(エムディー ミジャヌール ラーマン)(東京大学医学系研究科 国際保健政策学教室)
  • 坂元 晴香(東東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健政策立案や保健介入における優先順位決定のためには、その基礎データとして死亡と障害を含む包括的かつ比較可能な保健アウトカム指標(burden of disease:疾病負荷)が必要である。本研究は、研究代表者らによるこれまでの疾病負荷に関する研究成果を元に、保健アウトカムに疾病負荷を用いた都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発を行う。
研究方法
本研究は、これまでの国内外における疾病負荷研究活動(Global Burden of Disease: GBD)とそのネットワークが基盤となっている。令和2年度では、我が国の最新の疾病負荷の推計を更新した。GBD2017のアップデートである最新の疾病負荷(GBD2019)の暫定的推定を査読付き国際誌ランセットにて発表した。
結果と考察
日本の健康余命(健康な生活を送れる年数)は、1990年から2019年までの間に69年から74年へ4年強と着実に伸びてきたが、一方で平均余命の増進は79年から85年への5年強増で、これは人々が健康不良状態で生存する年数が伸びていることを示している。今や全健康損失の8割以上が、非感染症(NCD)が原因によるものとなってる。現在の日本の健康損失の増大に寄与した上位10要因には、主に高齢に関する疾患である、虚血性心疾患、糖尿病、脳卒中、肺がん、加齢性難聴、そしてアルツハイマー病が含まれている。特に糖尿病とアルツハイマー病における、わずか数年間での20%弱もの増加は特段懸念すべき状況である。健康不良状態が増加すると、人口の増加と高齢化に伴う慢性疾患に対処する体制が十分整っていない医療体制に過大な負担がかかるおそれがある。現在では高BMI、高血糖、高血圧、高LDLといったいくつかの予防できる可能性が高い代謝リスクへの曝露で特に懸念すべき増加があり、それがNCDによる疾病負荷の増大を招いており、公衆衛生への取り組みの強化が緊急に必要であることが浮き彫りになっている。
結論
慢性疾患が世界的に蔓延する一方で、予防できる可能性が高いリスク要因の増加を公衆衛生が十分に抑制できていないために、日本の人々は新型コロナ(COVID-19)パンデミックのような急激な衛生緊急事態に対して無防備なままとなっている。慢性疾患とCOVID-19が重なって起きている世界的な“シンデミック”に立ち向かい、より頑健な保健システムを整えるとともに、人々の健康を向上させられるようにし、将来のパンデミックの脅威に対する各国のレジリエンスを向上させるための緊急対策の実施が必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022004B
報告書区分
総合
研究課題名
日本の都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発
課題番号
H30-医療-指定-009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 野村 周平(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
  • Md Mizanur Rahman(エムディー ミジャヌール ラーマン)(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
  • 坂元 晴香(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
  • 阿部 サラ(国立がん研究センター)
  • 田中 詩織(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健政策立案や保健介入における優先順位決定のためには、その基礎データとして死亡と障害を含む包括的かつ比較可能な保健アウトカム指標(burden of disease:疾病負荷)が必要である。本研究は、研究代表者らによるこれまでの疾病負荷に関する研究成果を元に、保健アウトカムに疾病負荷を用いた都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発を行う。本研究は、我が国の主要な保健医療課題を都道府県レベルで評価し、それらに対応する最善の対策を見つけるための方法論を提示する我が国で初めての試みである。
研究方法
本研究では、研究代表者と研究分担者によるこれまでの疾病負荷研究に関する研究成果を元に、保健アウトカムに疾病負荷を用いた都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発を行う。本研究は、これまでの国内外における疾病負荷研究活動(Global Burden of Disease: GBD)とそのネットワークが基盤となっている。
結果と考察
日本を含む、世界の疾病負荷研究の最新版 GBD2019 を英医学誌ランセットに発表した。日本の健康余命は、1990年から2019年までの間に69年から74年へ4年強と着実に伸びてきたが、一方で平均余命の増進は79年から85年への5年強増で、これは人々が健康不良状態で生存する年数が伸びていることを示している。今や全健康損失の8割以上が、非感染症(NCD)が原因によるものとなってる。現在の日本の健康損失の増大に寄与した上位10要因には、主に高齢に関する疾患である、虚血性心疾患、糖尿病、脳卒中、肺がん、加齢性難聴、そしてアルツハイマー病が含まれている。健康不良状態が増加すると、人口の増加と高齢化に伴う慢性疾患に対処する体制が十分整っていない医療体制に過大な負担がかかるおそれがある。

現在日本では、高BMI、高血糖、高血圧、高LDLといったいくつかの予防できる可能性が高い代謝リスクへの曝露で特に懸念すべき増加があり、それがNCDによる疾病負荷の増大を招いており、公衆衛生への取り組みの強化が緊急に必要であることが浮き彫りになっている。

また、GBD2019の枠組みに基づき、1990年から2019年までの日本を含む世界のUHC有効カバー率を評価した。世界保健機関(WHO)の「第13次総合事業計画(GPW13)」で策定された測定フレームワークを参考に、23項目の有効カバー率指標を、医療サービスの種類(促進、予防、治療など)と、新生児から高齢者までの5つの人口年齢層を表すマトリックスにマッピングした。これら23項目の有効カバー率指標は、介入の適用率を直接測定するもの(例:抗レトロウイルス療法の適用率)と、質の高いケアへのアクセスを近似的に示すアウトカムベースの指標(例:死亡率対罹患率)のいずれかを含んでいる。

1990年以降、UHCの有効カバー率は、時間の経過や地域ごとに進捗率が異なるものの、世界的に改善されている。そして2019年のUHCの有効カバー率は、日本が最大であった。日本において、23項目で最も有効カバー率が低かったのは、近代的な避妊法による家族計画であった。新生児の産前・産後のケア、乳がん治療、糖尿病治療は全国地域で最大を示す100であった。

全体的に、UHC の有効カバー率の指標は、一人当たりの医療費と関連していた。一人当たりの年間医療費が約2500ドルまでは、支出の増加はUHC有効カバー率と概ね一致していたが、それ以上になると、支出の増加はUHC有効カバー率のパフォーマンスのさらなる向上とは一致しなくなった。これは医療支出の増加は必要であるが、それだけではUHCの有効カバー率を向上させるには不十分であることを意味する。
結論
慢性疾患が世界的に蔓延する一方で、予防できる可能性が高いリスク要因の増加を公衆衛生が十分に抑制できていないために、日本の人々は新型コロナ(COVID-19)パンデミックのような急激な衛生緊急事態に対して無防備なままとなっている。慢性疾患とCOVID-19が重なって起きている世界的な“シンデミック”に立ち向かい、より頑健な保健システムを整えるとともに、人々の健康を向上させられるようにし、将来のパンデミックの脅威に対する各国のレジリエンスを向上させるための緊急対策の実施が必要である。さらに、慢性疾患に対する一層の取り組みが行われ、医療費支出を保健システムパフォーマンスの向上につなげることができなければ、UHCサービスのカバーを加速させることは困難になる。

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
慢性疾患が世界的に蔓延する一方で、予防できる可能性が高いリスク要因の増加を公衆衛生が十分に抑制できていないことは、日本を始め世界中の人々が新型コロナ(COVID-19)パンデミックのような急激な衛生緊急事態に対しても健康リスクを高める結果となっていることを示した。
臨床的観点からの成果
本研究は慢性疾患、社会的不平等とCOVID-19が重なって起きている世界的な“シンデミック”に立ち向かい、より頑健な保健システムを整えるとともに人々の健康を向上させられるようにし、将来のパンデミックの脅威に対する国のレジリエンスを向上させるための緊急対策の実施も必要であることを示した。慢性疾患に対する一層の取り組みが行われ、医療費支出を保健システムパフォーマンスの向上につなげることができなければ、UHCサービスのカバーを加速させることは困難になる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
本研究は、世界に先駆けて超高齢社会に突入した我が国の主要な健康課題を都道府県レベルで評価し、それらに対応する最善の対策を見つけるための新たな方法論を提示するものである。国レベルではなく都道府県別の包括的な保健システムパフォーマンス評価方法を開発し、格差是正に向けた健康に関する新たな研究プロジェクト遂行や政策立案、各県民を対象とした詳細な疾病負荷研究などに生かされることが期待される。
その他のインパクト
最新の世界の疾病負荷(GBD2019)のランセット誌ローンチに伴い、その活用について各国の担当のインタビューを連載している。その第1弾として、日本から研究分担者(野村)のインタビューが掲載された。
http://www.healthdata.org/video/gbd-2019-collaborating-japan

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202022004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 70,083円
人件費・謝金 867,270円
旅費 0円
その他 662,647円
間接経費 400,000円
合計 2,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-12-01
更新日
-