2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における救急・災害医療提供体制に関する研究

文献情報

文献番号
202022002A
報告書区分
総括
研究課題名
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における救急・災害医療提供体制に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-医療-指定-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本体育大学 大学院 保健医療学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 昭夫(国立国際医療センター病院 救命救急センター )
  • 川前 金幸(山形大学 大学院医学系研究科)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 清田 和也(さいたま赤十字病院 救命救急センター)
  • 齋藤 大蔵(防衛医科大学校防衛医学研究センター 外傷研究部門)
  • 坂本 哲也(帝京大学医学部 救急医学講座)
  • 森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科 救急科学)
  • 山口 芳裕(杏林大学医学部 救急医学)
  • 佐々木 淳一(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020)では国内外から競技者、大会関係者が多数訪日する。しかし、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の中での東京2020開催においては、感染拡大防止の観点から感染予防に最大限の留意をしなければならない。また、熱中症や雷撃症が発生することも危惧されている。他方で東京2020の時期を目標としたテロ攻撃の危険性も念頭に置き、競技大会時には十分な救急・災害医療提供体制を構築しておく必要がある。このような認識にもとに通常の救急医療体制の質を維持しつつ、多数傷病者発生時の対応を検討するために研究班を組織した。加えて、今年度は新型コロナウイルス感染拡大の中での大会運営をいかにすべきかを、医療の視点から検討を行った。研究結果が今後の大規模イベント時にも活用され汎用性の高い成果物、いわゆるレガシーとして位置づけられることを最終的な目的とした。
研究方法
① 横田班(研究代表者として)
研究班会議の開催と過年度成果物のブラッシュアップを行い、さらに新たな課題となった大規模イベント時における新型コロナウイルス感染症への対応を検討するための研究班を組織した。
② 木村班(日本外傷学会)
過年度に作成した銃創・爆傷患者診療指針の内容を、我が国の外傷診療を担っている医師や大会ボランティア等により広く周知することの方策について検討した。
③ 川前班(日本集中治療医学会)
新型コロナウイルス感染拡大の中での重症患者の収容状況とその成果について検討した。
④ 小井土班(日本災害医学会)
新型コロナウイルス感染を踏まえ、ラストマイルの救護所、診療所でも使用できる新たなJ-SPEEDの提案をした。
⑤ 清田班(日本中毒学会)
過年度に須崎班が作成したトキシドロームに基づくフローチャートを日本中毒学会の中毒標準ガイドラインの「トキシドローム」の章に組み入れた。また、東京2020だけでなく、今後の大規模イベント開催に向けてのレガシーとするため、学会活動を通しての関係者に周知した。
⑥ 齋藤班(日本熱傷学会)
熱傷と落雷対応フローチャートを作成した。さらに、重症熱傷の初期治療ができる病床数について全国アンケート調査をした。また、COVID-19感染を伴う広範囲熱傷症例の受け入れに関して、調査を行った。
⑦ 坂本班(日本臨床救急医学会)
新型コロナウイルス感染症が拡大する中で東京2020での教育研修をどのようにすべきかを検討した。
⑧ 森村班(日本救急医学会)
WHOから公表された新型コロナウイルス感染症流行時のリスク評価と医療体制の関連から東京2020での感染リスクとその対策について検討した。
⑨ 山口班(東京都医師会)
医師会と連携した視点で研究を進めた。すなわち、医師会との連携に基づいた一般医家等への教育、2)一般医家等に対する支援体制、3)大会期間中の救急・災害医療関連行動の教育・啓発を行った。
⑩ 佐々木班
新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ,競技場内,ラストマイルの診療所・救護所等での感染対策に資する教育資材を作成することを目的に、関連学会と連携して検討を行った。
結果と考察
新型コロナウイルス感染拡大の中での東京2020では、感染予防に最大限の留意をしなければならない。加えて熱中症や雷撃症の発生にも対応しなければならない。また、世界的にテロの危険性が高まっており、十分な救急・災害医療提供体制を構築しておく必要がある。このような認識にもとに、通常の救急医療体制の質を維持しつつ、大会期間中の救急・災害医療体制、感染予防、多数傷病者発生時の救急体制に関して検討し成果物を公表することができた。また、新型コロナウイルス感染予防の検討を行い、成果物を公表するができた。
本研究班の成果物は、逐一公開され、誰でもが閲覧することが可能となっている。本研究班の多くの研究成果物は、今後に開催される大規模イベント開催時の医療体制構築の際に有用な資料、いわゆるレガシーとして提示することできたと考えている。
結論
本研究班の目的は東京2020における救急医療体制、すなわち日常の救急医療体制を維持しつつ、大会期間中の救急患者対応、テロや多数傷病者発生など不測の事態も想定した対応を検討し、その成果を公表することであった。加えて、令和2年度の研究では新型コロナウイルス等の感染症対応を検討し、その成果物を公表した。成果物の一部は既に東京2020の医療体制を構築するうえで採用されている。また、今年度の研究成果として新たに公表することができた新型コロナウイルスへの対応も、感染拡大の中で大きく貢献することが期待されている。本研究班の成果物が東京2020だけではなく、今後に行なわれる大規模イベントの医療体制構築の際に有用な資料として利用されることを希望している。

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202022002B
報告書区分
総合
研究課題名
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における救急・災害医療提供体制に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-医療-指定-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本体育大学 大学院 保健医療学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 昭夫(国立国際医療研究センター 救命救急センター)
  • 川前 金幸(山形大学 大学院医学系研究科)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 須崎 紳一郎(武蔵野赤十字病院 救命救急センター)
  • 清田 和也(さいたま赤十字病院 救命救急センター)
  • 齋藤 大蔵(防衛医科大学校防衛医学研究センター 外傷研究部門)
  • 坂本 哲也(帝京大学医学部 救急医学講座)
  • 森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科 救急科学)
  • 山口 芳裕(杏林大学医学部 救急医学)
  • 佐々木 淳一(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020)は国内外から多くの競技者、大会関係者等が訪れる。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の中で感染予防に最大限の留意をしなければならない。また、開催時期の観点から熱中症や雷撃症が多数発生することも危惧されている。他方で、テロ攻撃に対する対策も救急・災害医療提供体制の視点から構築しておく必要がある。東京2020が安全に開催されるために、救急災害医療の視点から検討を行った。研究結果が今後の大規模イベント時にも活用され汎用性の高い成果物、いわゆるレガシーとして位置づけられることを最終的な目的とした。
研究方法
①横田班(研究代表者として)
研究の統括と、病院テロ対応のテキスト「Protect Your Hospital (へるす出版)」、および「東京2020救護所用ハンドブック」を作成した。また、過年度の成果物のブラッシュアップ、新型コロナウイルス感染症への対応を検討するために研究班を新たに組織し、今後開催される大規模イベント時に参考になる成果物を作成した。
②木村班
本研究班で作成した銃創・爆傷患者診療指針を作成し、外傷診療を担っている医師や大会ボランティア等により広く周知した。
③川前班
医療資源という視点で集中治療の視点から研究を行い、新型はコロナウイルス感染拡大の中での重症患者の収容状況とその成果について検討した。
④小井土班
CBRNEテロを想定した医療対応、その際に現場で使用する診療録であるJ-SPEEDの東京2020版作成と普及に向けた活動を行った。J-SPEEDを使用に関してオリンピック組織委員会と検討を進めた。
⑤須崎班(平成30年度、令和元年度)、清田班(令和2年度)(日本中毒学会)
日本版トキシドロームを作成し、東京2020だけでなく、今後の大規模イベント開催に向けてのレガシーとするため、学会活動を通しての関係者への周知した。
⑥齋藤班
熱傷と雷撃症の対応フローチャートを作成した。また、重症熱傷の初期治療ができる病床数等について全国アンケート調査を実施し、集計・分析した。COVID-19感染を伴う広範囲熱傷症例の受け入れに関してアンケート調査も実施した。
⑦坂本班
熱中症に関する治療、外国人医療対応の要点をリーフレットの形でまとめる作業を行った。また、ファーストレスポンダーを中心とした競技場内の医療対応に関する教材を作成した。
⑧森村班
医療ニーズと医療供給体制を考慮し、多数の傷病者が発生した際の搬送シミュレーションを行い、会場周辺の救護所配置の提言を東京都に提供した。さらに、新型コロナウイルス感染症流行時のリスク評価と医療体制(緩和スコア)の関連から東京2020での感染リスクとその対策について検討した。
⑨山口班
日本医師会、東京都医師会と協力して「大規模イベント医療・救護ガイドブック(へるす出版)」を作成し、2019年に開催されたラグビーワールドカップに使用された。さらに、医師会との連携に基づいた一般医家等への教育、支援体制の有り方についての検討と大会期間中の救急・災害医療関の教育・啓発を行った。
⑩佐々木班
新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ,令和2年度に研究分担者として本研究班に参加した。競技場内,ラストマイルの診療所・救護所等での感染対策に資する教育資材を作成することを目的に、関連学会と連携して,救急医療および感染制御の両面から検討を行った。
結果と考察
 新型コロナウイルス感染拡大の中での東京2020では、感染拡大防止の観点から感染予防に最大限の留意をしなければならない。加えて熱中症や雷撃症の発生にも対応、テロ攻撃への対策も必要である。このような認識にもとに、通常の救急医療体制の質を維持しつつ、大会期間中の救急・災害医療体制、感染予防、多数傷病者発生時の救急体制に関して検討し、それらの研究成果を公表した。本研究班の研究成果物は、今後に開催される大規模イベントの医療体制構築の際に有用な資料と考えている。
結論
 国際的巨大イベントである東京2020では、国内外から多くの選手や関係者が多数参加する。研究班では東京2020における救急医療体制について日常の救急医療体制を維持しつつ、大会期間中の特に国内外からの救急患者対応、テロや多数傷病者発生など不測の事態も想定した対応、新型コロナウイルス等の感染症対応を検討し、その成果物を公表した。成果物の一部は既に東京2020の医療体制を構築するうえで採用されている。 本研究班の成果物が東京2020だけではなく、今後に行なわれる大規模イベントの医療体制構築の際に有用な資料(Legacy)として利用されることを希望している。

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型コロナウイルス感染拡大により開催が1年延期され、令和3年7月から同9月にかけて開催された国際的大規模イベントである東京オリンピック・パラリンピックにおける救急・災害医療体制整備について様々な関連学会を代表する専門家を分担研究者として研究班祖組織し、成果物を発信した。これらの成果物は今回の大会だけでなく、今後開催される大規模イベント開催時の救急災害医療体制を構築する際のレガシーとして位置付けられるものと考えている。
臨床的観点からの成果
救急災害医療に関する関連学会の代表者によって組織している研究班の成果物として、テロ攻撃から医療機関の防御、銃創や爆傷に対する対応、大規模イベントの診療所に対応する中毒トキドロームの公表、熱中症や外国人医療に対する医療のあり方等を検討し、テキストとして公表、一部は販売することができた。また、特に都内で行われる競技会場のラストマイルにおける救護所や診療所の配置や救急対応についての提案し、それらを東京都、東京都医師会、東京消防庁等で共有し、実際の配置にも貢献した。
ガイドライン等の開発
医療機関へのテロ攻撃からの防御、対策のテキスト公表、販売のほか、テロ等による多数傷病者への対応として銃創や爆傷の診療マニュアルを作成した。また、訪日外国人対応、日常診療への負荷予測とその対応、大会期間中にその発生が危惧されている熱中症への対応ガイドラインを作成した。テロ攻撃を想定した爆発による多数の広範囲熱傷患者対応、季節的に発生することが危惧された雷撃症対応、競技場内やラストマイル診療所での使用を想定した中毒トキドロームを作成した。
その他行政的観点からの成果
これらの成果物を東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体(AC2020)のHPに逐一アップロードし、オリンピック・パラリンピック組織委員会、東京都等開催地の自治体と共有し、大会期間中の医療体制構築に貢献した。具体的には競技場周辺のライトマイルにおける救護所、診療所の配置、受け入れ医療機関に関する救急医療体制の在り方等を提示した。
その他のインパクト
前述のAC2020におけるホームページ立ち上げや、その維持に際して様々な支援を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202022002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,280,000円
(2)補助金確定額
7,280,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,853,504円
人件費・謝金 205,297円
旅費 159,596円
その他 1,406,851円
間接経費 1,680,000円
合計 7,305,248円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-