文献情報
文献番号
200807017A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物誘発性肝障害患者のゲノム解析と発症機構研究
課題番号
H19-ゲノム・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 後藤 順(東京大学 医学部附属病院)
- 矢冨 裕(東京大学 医学部附属病院)
- 吉田 晴彦(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
41,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、東京大学医学部附属病院における薬物誘発性肝障害(DILI)発症症例を集積し、薬物血中濃度測定、遺伝子解析を網羅的に実施することで、原因薬剤やDILI発症に関わる遺伝的要因を解明すると共に、DILIの原因薬剤と疑われた薬剤を用いた、基礎研究を実施することで、DILIの発症メカニズムを解明し、適切な個別化薬物治療法を提唱すること、そして創薬における肝毒性評価法を提案することを主たる目的として3年計画で実施されている。
研究方法
研究2年度目となる平成20年度には、初年度に引き続きDILI症例を集積するとともに、HLA遺伝子を中心とした遺伝子解析、並びに血清中薬物濃度分析、メタボローム解析を実施した。また、血清検体の分析結果からDILIの発症メカニズムや治療法・予防法に関する重要な示唆が得られたため、基礎研究による検討を行った。
結果と考察
遺伝子解析の結果、HLA-B遺伝子座に関し、一般的な日本人集団ではほとんど検出されないHLA-B*2704 およびHLA-B*2705 が1例ずつ検出され、DILI発症に影響を及ぼす可能性が考えられた。DILIの被疑薬としてリストアップされたイトラコナゾール(ITCZ)を対象とした実験の結果、ITCZが胆汁成分の分泌輸送担体を阻害し、胆汁うっ滞を誘発することを示唆する結果が得られ、ITCZによるDILI発症機構の一部を解明することができた。さらに、DILI患者のメタボローム解析の結果、血清中ヒポキサンチン濃度が肝障害の進展に伴い減少することを見出し、さらにヒポキサンチンが肝障害の治療薬・予防薬として有望であることを示唆する実験結果が得られた。
結論
平成20年度までの研究により、本研究の主要な目的であるDILI患者のゲノム解析、DILIの発症メカニズム解明の観点から、興味深い結果が得られ始めている。さらに、メタボローム解析を導入することで、DILIの治療法・予防法の開発につながる研究を展開することができた。今後、臨床的に問題となっているDILIに対し、1)遺伝的背景の解明によるDILI発症リスクの低減、2)肝毒性スクリーニング系の提案、3)DILI発症時の治療法提案、という3つのアプローチから研究を進めることが可能となると期待している。平成21年度には、これらの結果を踏まえ、臨床・基礎の両面から研究を継続する予定である。
公開日・更新日
公開日
2009-08-06
更新日
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