文献情報
文献番号
200807015A
報告書区分
総括
研究課題名
抗精神病薬と抗うつ薬のファーマコジェネティックス
課題番号
H19-ゲノム・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
- 稲田 俊也(財団法人 神経研究所 )
- 岩田 仲生(藤田保健衛生大学医学部)
- 下田 和孝(獨協医科大学)
- 尾関 祐二(獨協医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
36,802,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、精神疾患の病態に関与する可能性のある遺伝子や薬物代謝に関わる遺伝子の多型と抗精神病薬・抗うつ薬への薬物応答(治療反応性、重大な副作用)との関連を検討し、効率的で薬害の少ないオーダーメイド医療の実現につながる知見を得ることを目的とする。
研究方法
①うつ薬に対する治療反応性が明らかな気分障害患者を対象に37万SNPsチップを用いた全ゲノム解析を行い、②薬物動態に重要な遺伝子(CYP遺伝子群、ABCトランスポーター)についてタイピングを行った。③抗精神病薬リスペリドンによって治療されている統合失調症患者について10万SNPsチップによる全ゲノム解析を行い、治療反応性を予測する遺伝子を同定した。④パロキセチンで治療されているパニック障害の薬理遺伝学的解析を行った。⑤426人の気分障害患者を対象に、向精神薬投与と心電図上のQT間隔との関連を検討した。⑥GABRG3遺伝子と遅発性ジスキネジアの関連について詳細なSNPs解析を行った。
結果と考察
抗うつ薬に対する治療反応性に関して全ゲノム解析を終了した。これは、オーダーメード医療実現に寄与する遺伝子を同定するための貴重な基盤的データベースとなる。また、PDLIM5などの遺伝子が抗うつ薬の働きにおいて重要な働きをしている可能性が示唆された。②CYP2D6とABCG2の遺伝子多型が抗うつ薬の治療反応性と有意に関連することを見出した。これは、薬物動態を規定する遺伝子多型によって血中濃度や脳血液関門での移行に差が生じ、有効性に関与するという合理的な結果である。③全ゲノム解析によってリスペリドンへの治療反応性を予測する遺伝子を18個同定した。最も治療反応性を予測する遺伝子としてNOS2Aが選択された。④パニック障害では、パロキセチン血中濃度が高値、5HTT L/S遺伝子型を保有していることなどが、パロキセチンによる初期治療反応性が不良であることと関連していることが判明した。⑤女性、抗精神病薬の使用、トラゾドンの内服がQTc間隔の延長のリスクとなることが明らかになった。⑥GABRG3遺伝子と遅発性ジスキネジアが有意に関連することを明らかにした。
結論
抗うつ薬や抗精神病薬への治療反応性を規定する要因を多数明らかにした。これらは、効果的で薬害の少ないオーダーメイド医療実現のための貴重な知見となる。また、薬物の作用メカニズムを明らかにする上でも有用である。
公開日・更新日
公開日
2009-08-06
更新日
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