肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究

文献情報

文献番号
202021007A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究
課題番号
20HC2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 是永 匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 板倉 潤(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 大座 紀子(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 瀬戸山 博子(熊本労災病院 消化器内科)
  • 金子 俊(東京医科歯科大学  消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
30,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、改善策を提示しにくい状況である。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班(指標班)で作成した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査2020)を実施し、2011年、2017年、2018年国民調査と比較することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。
研究方法
指標調査:肝炎医療指標は全国肝疾患診療連携拠点病院(以下、拠点病院)と肝疾患専門医療機関(以下、専門医療機関)を対象に実施した。専門医療機関に対しては、施設認定要件と肝炎医療、病診連携状況調査を兼ね備えた内容の調査を、前年度と同じ10都道府県を対象に実施した。また肝炎等克服研究班(代表:黒崎雅之)と連携して、全国赤十字病院関連施設に対しても肝炎医療指標、診療連携指標を調査した。自治体に関しては、厚労省の自治体事業調査結果から指標関連結果を抽出し指標値を算出、評価した。
職域に関しては、職域検診における肝炎ウイルス検査受検率・専門医受診確認率の現状調査を開始した。拠点病院事業指標については各指標の経年推移を解析した。
国民調査:平成23年度国民調査時に比べて受検率の10ポイントの向上を確認したが、非認識受検率も増加しており、受診に繋がる結果周知の必要性が明らかになった。ウイルス検査受検全国調査(国民調査2020)を実施した。調査項目として、認識受検・非認識受検に関連した要因、肝炎ウイルス検査陽性者の検査結果受領後の行動、特に肝臓専門医への受診の有無を検討するための質問を追加した。
肝硬変移行率評価:多施設共同でウイルス肝炎患者コホートを設定し、肝線維化判別能が認められている線維化マーカー(APRI、FIB-4、ELF)の経時的推移を検討した。
結果と考察
肝炎医療指標はいずれの対象においても、均てん化された肝炎医療が提供されていることが明らかになった。専門医療機関には多くのウイルス肝炎患者が通院している実態が明らかになった。一方、指標改善プロセスの作成など必要性に関する認識を高める対策が必要であると考えられた。病診連携指標は専門医療機関とかかりつけ医の診療連携に比べて、専門医療機関と拠点病院との診療連携率は低かった。拠点病院を対象に指標調査と併せて指標改善の障壁となる因子を抽出するための調査を実施している。
自治体事業指標では、全国的に肝がん死亡率は低下しており、肝炎医療コーディネーターの各所への配置が進んでいることが明らかになった。
職域では、組合健保では肝炎ウイルス検査受検率が4~9%であることを報告し、健診レセプトを用いた陽性者受診率把握調査を開始した。自治体実施主体の肝炎ウイルス検査陽性者の受診確認率は最高でも5-60%程度であり、精密検査拒否する陽性者対策が重要であることを明らかにした。
拠点病院事業では、指標の増減には拠点病院の活動量だけでなく肝炎患者を取り巻く医療・社会背景も関与することが明らかになった。
国民調査2020では、都道府県別肝炎ウイルス検査受検率を絶対精度10%で推定するために対象者数を20,000人、対象者選出方法を詳細に検討した。
肝硬変移行率研究では、C型肝炎では、後方視的観察群では約10年で進行肝線維化から肝硬変への移行を認めた。前方視的観察群では有治療症例では一定の傾向を認めなかったが、無治療症例では約2.5から6年で高度進行肝線維化から肝硬変への移行を認めた。また、ELF scoreを用いて線維化進行度の評価を行った。B型肝炎31例では平均6.6年の経過でELF scoreは平均-2.6低下した。同様にC型肝炎20例では平均6.4年の経過でELF scoreは平均3.9低下した。B型肝炎、C型肝炎におけるAPRI/FIB-4の線維化関連率指標としての応用可能性に関する論文を発表した(Itakura J, Kanto T, et al. J Gastroenterol, 2021)。さらにマルコフモデルでB型肝炎、C型肝炎の病態推移を検討した。治療の有無などで層別化し、ELFに加えてHBV RNA、便中カルロプロテクチン、腸内細菌叢も併せて測定し症例を増やして検討した。結果は解析中である。
結論
肝炎医療、自治体事業、拠点病院事業に関する指標を継続調査し、結果を解析した。今後、指標改善のための方策を明らかにする予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
2023-03-07

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202021007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,988,000円
(2)補助金確定額
39,988,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,765,234円
人件費・謝金 3,382,929円
旅費 0円
その他 15,611,837円
間接経費 9,228,000円
合計 39,988,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
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