文献情報
文献番号
202021004A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染状況の把握及び肝炎ウイルス排除への方策に資する疫学研究
課題番号
19HC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 佐竹 正博(日本赤十字社中央血液研究所)
- 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 保坂 哲也(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 肝臓内科)
- 鳥村 拓司(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
- 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
- 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
- 宮坂 昭生(岩手医科大学 医学部 内科学講座 消化器内科肝臓分野)
- 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
- 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
39,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の肝炎ウイルス感染状況の把握及び感染後・排除後の長期経過に関する疫学研究を実施し、政策の企画立案、基準策定のための科学的根拠にもとづく基礎資料の獲得をめざすとともに、ウイルス肝炎排除への方策提示を目的とする
研究方法
基礎医学、臨床医学、社会医学の専門家の参加を得て組織的に実施する
結果と考察
1)五島列島K地域全住民約2.4万人screeningにより形成された長期HBVコホート1980-2017年のウイルス遺伝子学的研究:1991年出生集団のHBs抗原陽性者はゼロ。HBV-elimination-on track地域。長崎県O島の健診HCV検査1990-2000年5,632人により見いだされた79人1.7%は、島外転居不明と死亡を除き、生存7例は全員SVR。新規感染者はゼロ。HCV-elimination-on track地域
2)岩手県検診受診者9449名の保存血清対象としたHBV暴露率の年別推移では女性が高いHBs抗体陽性率を示す時期があり、HBc抗体値の検討からHBワクチン接種に起因することを提示
3)肝炎ウイルス検査受検率調査(国民調査)2020を政策拡充班と共同実施中。250自治体の住民基本台帳等より層化二段階無作為抽出法:20~85歳2万人❶認識、非認識受検の要因究明❷受検率推移2011年2017年比較
4)肝炎排除への道程に関わる疫学指標:一般化線形モデルによる75歳未満年齢調整肝癌死亡率地域別推計から2020年以降急激に低下、2030年に人口10万人対4人以下に低下
5)医薬品販売実績データベースIQVIAに基づく肝炎治療の実態把握と課題の抽出: HCV DAA投与患者数は2014-18年度で計261540人。受給者交付証発行数(国)は同期226591人、差分3.5万人(13%)は後期高齢医療制度等と推測。未治療患者の推定に有用な実態把握
6)HBV/HCVに起因する肝がん重度肝硬変治療研究促進事業(H30.12-)の申請数が少ない状況。NDBデータ利用申請を行い、同患者の疫学分布(性・年齢・都道府県別、入通院別)、医療費分布、高額医療費や診療行為の状況等の実態を明らかにし同事業の枠組み変更(R3.4-)に寄与(緊急課題対応)
7)大規模コホートデータ解析に基づくNAFLDの疫学:健診受診者集団(広島県2013-18年/岩手県2008-19年)のべ3,817,770人(実856,296人分)を解析。全体の8.8%のエコー受診者7.6万人のうち23.7%がNAFLD。外挿し、受診者全体のうちmaxで20.6%は未診断NAFLDと推定。FIB4-index分布は、70代の16.4%が肝線維化高リスク(FIB4-2.67以上)に該当。AST/ALT分布特性がFIB4を高値へ導く影響が大きく、一般健常者集団に対する肝線維化指標としてFIB4は不適と示唆。脂肪性肝疾患自然史をMarkovモデルにより解析、提示
8)肝炎排除に向けた事業:広島3地区において無作為抽出一般住民(各3,000人)を対象とし、Elimination到達度評価を構築・評価。HBV感染はK市1.2%・O市2.0%(Elimination未到達)、A町0.5%(准到達)と判定。HCV感染ではA町0.5%(准到達)、K市・O市感染者0人。検査の促進が順調、一方、陽性者の選択バイアスの可能性も示唆
9)前事業8の一環:対象住民から抽選で、肝臓エコー検査とFibroScan検査を488人実施。脂肪肝有病率(両検査から判定)は62.1%であり、健診受診者集団での報告値の約2倍の水準。健診を受けないでいる一般住民における脂肪肝有病率は高い可能性を示唆
10)肝炎排除への道程に関わる疫学指標の可視化:肝炎対策取組状況調査2018実績:国;をもとに、受検・受診・受療・フォローアップ・診療連携に関する項目及び肝癌死亡、肝炎ウイルス検査受検率、肝臓専門医数等をスコア化し、レーダーチャートを作成。受検受診受療については多くの都道府県で高いスコア。一方、フォローアップや診療連携は地域差が大きい。可視化は対策の課題抽出として有用
11) NDBデータ利用申請によりHBV/HCVに起因して受療中の患者数の実態把握を行い、既提示数値を併せて2015年版 HBV/HCV感染者数を提示した。2030年までの推計を提示
12)透析医療における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(四訂版)を改訂。HCV感染透析患者へのDAA治療を追記し推奨。平成30年末時点の全国調査により透析患者の最新のHCV有病率を示した
14)3回HBワクチン後の病院職員127例。HBs抗体陰性化例が存在。定期的な抗体のモニタリングが必要。陰転化した20例に追加接種し全例陽転化
2)岩手県検診受診者9449名の保存血清対象としたHBV暴露率の年別推移では女性が高いHBs抗体陽性率を示す時期があり、HBc抗体値の検討からHBワクチン接種に起因することを提示
3)肝炎ウイルス検査受検率調査(国民調査)2020を政策拡充班と共同実施中。250自治体の住民基本台帳等より層化二段階無作為抽出法:20~85歳2万人❶認識、非認識受検の要因究明❷受検率推移2011年2017年比較
4)肝炎排除への道程に関わる疫学指標:一般化線形モデルによる75歳未満年齢調整肝癌死亡率地域別推計から2020年以降急激に低下、2030年に人口10万人対4人以下に低下
5)医薬品販売実績データベースIQVIAに基づく肝炎治療の実態把握と課題の抽出: HCV DAA投与患者数は2014-18年度で計261540人。受給者交付証発行数(国)は同期226591人、差分3.5万人(13%)は後期高齢医療制度等と推測。未治療患者の推定に有用な実態把握
6)HBV/HCVに起因する肝がん重度肝硬変治療研究促進事業(H30.12-)の申請数が少ない状況。NDBデータ利用申請を行い、同患者の疫学分布(性・年齢・都道府県別、入通院別)、医療費分布、高額医療費や診療行為の状況等の実態を明らかにし同事業の枠組み変更(R3.4-)に寄与(緊急課題対応)
7)大規模コホートデータ解析に基づくNAFLDの疫学:健診受診者集団(広島県2013-18年/岩手県2008-19年)のべ3,817,770人(実856,296人分)を解析。全体の8.8%のエコー受診者7.6万人のうち23.7%がNAFLD。外挿し、受診者全体のうちmaxで20.6%は未診断NAFLDと推定。FIB4-index分布は、70代の16.4%が肝線維化高リスク(FIB4-2.67以上)に該当。AST/ALT分布特性がFIB4を高値へ導く影響が大きく、一般健常者集団に対する肝線維化指標としてFIB4は不適と示唆。脂肪性肝疾患自然史をMarkovモデルにより解析、提示
8)肝炎排除に向けた事業:広島3地区において無作為抽出一般住民(各3,000人)を対象とし、Elimination到達度評価を構築・評価。HBV感染はK市1.2%・O市2.0%(Elimination未到達)、A町0.5%(准到達)と判定。HCV感染ではA町0.5%(准到達)、K市・O市感染者0人。検査の促進が順調、一方、陽性者の選択バイアスの可能性も示唆
9)前事業8の一環:対象住民から抽選で、肝臓エコー検査とFibroScan検査を488人実施。脂肪肝有病率(両検査から判定)は62.1%であり、健診受診者集団での報告値の約2倍の水準。健診を受けないでいる一般住民における脂肪肝有病率は高い可能性を示唆
10)肝炎排除への道程に関わる疫学指標の可視化:肝炎対策取組状況調査2018実績:国;をもとに、受検・受診・受療・フォローアップ・診療連携に関する項目及び肝癌死亡、肝炎ウイルス検査受検率、肝臓専門医数等をスコア化し、レーダーチャートを作成。受検受診受療については多くの都道府県で高いスコア。一方、フォローアップや診療連携は地域差が大きい。可視化は対策の課題抽出として有用
11) NDBデータ利用申請によりHBV/HCVに起因して受療中の患者数の実態把握を行い、既提示数値を併せて2015年版 HBV/HCV感染者数を提示した。2030年までの推計を提示
12)透析医療における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(四訂版)を改訂。HCV感染透析患者へのDAA治療を追記し推奨。平成30年末時点の全国調査により透析患者の最新のHCV有病率を示した
14)3回HBワクチン後の病院職員127例。HBs抗体陰性化例が存在。定期的な抗体のモニタリングが必要。陰転化した20例に追加接種し全例陽転化
結論
上記、得られた知見は研究目的に適う
公開日・更新日
公開日
2021-06-04
更新日
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