ゲノム情報を用いた新しい医療の推進における倫理問題に関する研究

文献情報

文献番号
200807013A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報を用いた新しい医療の推進における倫理問題に関する研究
課題番号
H18-生命・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
位田 隆一(財団法人 比較法研究センター 研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 和人(京都大学人文科学研究所准教授)
  • 玉井 真理子(信州大学医学部准教授)
  • 高嶌 英弘(京都産業大学法務研究科教授)
  • 伏木 信次(京都府立医科大学大学院医学研究科教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,329,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ポスト・シークエンス時代に入って、ゲノム・遺伝子解析研究から得られる個人遺伝情報を利用した新しい医療が展開しようとしており、その基盤となる大規模なヒト試料バンクや遺伝情報データベースの構築と管理、ならびにその医療応用に伴って生じる倫理的法的社会的問題を、現場の研究者・医師及び社会の双方に目を配りつつ検討し、三省指針の改正やバイオバンク・データベースの倫理・体制等、あるべき倫理規範の考え方を提言することを目的とした。
研究方法
初年度に、基礎文献資料の検索収集とゲノム研究の現状把握を通じて、問題となる課題の抽出と班内での問題意識の共有を、第二・第三年度には、初年度に設定された問題であるバイオバンクの倫理、三省指針の問題点と改善策、および社会の理解と支援の三点に絞って研究を進行させた。これらは、正確な科学的知識に基づく実際的な生命倫理の在り方の研究を目指しており、文献資料等の検索・収集・分析、海外での調査や意見交換、および各種メディアの記事の収集を中心としたトピックスデータベースで支える形で研究を進めた。
結果と考察
2006年度は、問題意識の共有と、三省指針等これまでの資料や文献を整理し研究の基盤を設定すると共に、遺伝子医療、ヒト由来試料・情報を用いる研究における生命倫理、ゲノム疫学研究、大規模ゲノムデータベース等の現状と社会的課題等について検討を行い、2007年度は、バイオバンクの倫理、三省指針の問題点と改善策、社会の理解と支援、の視点から学際的議論を行ない、ゲノム研究の現状把握と倫理問題の抽出を行なった。2008年度は、ゲノム医療のための研究資源の確保と利用、出生前遺伝子診断にかかわる心理的問題、遺伝情報と保険、わが国のバイオバンクの倫理枠組み、バイオバンクのガバナンス等を検討した。また三省指針について研究者にアンケート調査を行った。

結論
大規模なバンクやデータベースに蓄積された試料や個人遺伝情報を用いた臨床研究や応用に関連して生じうる倫理的法的社会的問題を整理し、それらへの対応策について検討することができた。また、三省指針の改正については、インフォームド・コンセント手続、個人情報保護と研究遂行の双方の観点からの連結可能匿名化、試料、データの取り扱い等の項目について、改善策を検討した。また、臨床応用の指針の必要性やゲノム創薬等、遺伝ビジネスへの対応不足を指摘し骨子を提言の形でまとめている。

公開日・更新日

公開日
2009-08-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200807013B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲノム情報を用いた新しい医療の推進における倫理問題に関する研究
課題番号
H18-生命・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
位田 隆一(財団法人 比較法研究センター 研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 和人(京都大学人文科学研究所准教授)
  • 玉井 真理子(信州大学医学部准教授)
  • 高嶌 英弘(京都産業大学法務研究科教授)
  • 伏木 信次(京都府立医科大学大学院医学研究科教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ポスト・シークエンス時代に入り、ゲノム・遺伝子解析研究から得られる個人遺伝情報を利用した新しい医療が展開する中で、その基盤となる大規模なヒト試料バンクや遺伝情報データベースの構築と管理、ならびにその医療応用に伴って生じる倫理的法的社会的問題を検討し、三省指針の改正やバイオバンク・データベースの倫理・体制等、あるべき倫理規範の考え方を提言することを目的とした。
研究方法
規範研究としての法律学、生命倫理その他の関連人文・社会科学の研究者と、生命科学・医学の研究者を糾合し、学際的で総合的な研究を行った。初年度に、基礎文献資料の検索収集とゲノム研究の現状把握を通じて問題となる課題の抽出と班内での問題意識の共有を行い、第二・第三年度には、初年度に設定された問題であるバイオバンクの倫理、三省指針の問題点と改善策、および社会の理解と支援の三点に絞って研究を行った。
結果と考察
これまでのゲノム・遺伝子解析に関する倫理問題の処理方法や倫理規範は研究段階に焦点が合わされているが、諸外国ではヒトゲノム計画やバイオバンクに関して科学・倫理面も検討され、法令や指針が作られている。一方、わが国では個人情報保護法に関連した三省指針の改正はあっても、この間の十年にわたる研究の進展やその成果の利用に関連した倫理問題への対応は図られてこなかった。こうした意識を共有しつつ、研究の進展に伴う倫理問題への対応を検討した。とりわけ顕著であったのは、わが国の三十万人バイオバンクに象徴される大規模で長期間連結可能匿名化された試料とデータを保存利用する方法の世界的な普及である。そこで、研究会やワークショップ、インタビュー等を通じて、三省指針をはじめとする倫理規範の現状と課題の探究、およびバイオバンク・遺伝情報データベースのわが国におけるあるべき姿を検討した。
結論
大規模なバンクやデータベースに蓄積された試料や個人遺伝情報を用いた臨床研究や応用に関連して生じうる倫理的法的社会的問題を整理し、対応策について検討し、従来の管理運営のみでなく、試料・データ採集から管理、利用、フォローアップまでも含めたガバナンスの考え方が重要であることがわかった。また、三省指針の改正については、インフォームド・コンセント手続、個人情報保護と研究遂行の双方の観点からの連結可能匿名化、試料、データの取り扱い等の項目について、改善策を検討し骨子を提言の形でまとめている。

公開日・更新日

公開日
2009-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200807013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝情報の解明が進み、臨床応用とそのための指針が早急に求められる中で、大規模なバンクに蓄積された試料や個人遺伝情報を用いた臨床研究や応用については、法令や指針等の規範のないままで行われることが危惧される。本研究は現場の状況に適合し、かつ患者や家族ならびに社会一般を保護するための倫理的枠組みを、国際的標準にも合致した形で検討し、遺伝子医療及び遺伝子情報データベースについての具体的な指針案を提言した。
臨床的観点からの成果
医療現場での研究・臨床状況に適合し、かつ患者や家族ならびに社会一般を保護するための倫理的枠組みを、国際的標準にも合致した形で検討し、具体的な指針案を提言した。すでに構築された又は今後構築されるであろうバイオバンクの臨床応用・創薬利用が近づいており、今後開始されるであろう厚生労働省における遺伝情報を用いた臨床研究・応用に関する規律体制作りに直接貢献することが期待され、またそこにいたるまでの策定作業の重要かつ実際的基礎資料として参照されることが予想される。
ガイドライン等の開発
10の提言の内、例として2つあげる。(1)連結不可能匿名化を原則とし連結可能を例外とする現行指針の基本的立場を改めて、連結可能匿名化を原則とする内容に修正することが必要である。(2)インフォームド・コンセント手続に関して、大規模の試料収集とそのデータ解析を行う研究の進展・普及に伴い、被験者-試料-データー研究目的の間の一対一対応の考え方に加えて、研究手法の展開に応じて、試料・データのバンク・データベース化に対応した多目的利用のインフォームド・コンセント方式を策定すること。
その他行政的観点からの成果
指針とは別に倫理審査の改善が必要である。審査委員会の運営や審査委員の質の向上が図られなければ、倫理審査が単なる形式的な通過点に過ぎなくなってしまう。今後のことは、国としてどのような倫理政策を採るのか、にかかっており、ひとり研究者や研究機関に責任を負わせるものではない。わが国全体として、ゲノムに限らず、生命科学・医学の研究とその成果の応用についての生命倫理問題を統一的、適時的に検討し、生命倫理政策と規範を策定していく体制を構築することが早急に考えられ、実現されなければならない。
その他のインパクト
三年目の最後に、国際ワークショップを開催して、その点を深く検討した。時間の都合で、未だ報告書にまとめるにはいたっていないが、今年中にAsian Bioethics Reviewに英文で、また、国内では、単行本の形で研究の結果を発表する手立てが整っている。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-