肉腫および悪性中皮腫を標的破壊する腫瘍溶解性ウイルスベクターのシードストックおよび臨床ロットの製造とその安全性・有効性評価に関する研究

文献情報

文献番号
200807012A
報告書区分
総括
研究課題名
肉腫および悪性中皮腫を標的破壊する腫瘍溶解性ウイルスベクターのシードストックおよび臨床ロットの製造とその安全性・有効性評価に関する研究
課題番号
H18-遺伝子・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 克仁(大阪府立成人病センター 研究所 病態生理学)
研究分担者(所属機関)
  • 山村 倫子(大阪府立成人病センター 研究所 病態生理学)
  • 城野 洋一郎(化学及び血清療法研究所 菊池研究所 第2研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,159,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平滑筋肉腫など難治性肉腫と悪性中皮腫に対する腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを用いた標的遺伝子療法の速やかかつ適切な実用化・臨床応用を目指し、1)遺伝子治療剤d12.CALPΔRRとカルポニンを発現しない腫瘍にも応用可能な新規腫瘍溶解性HSV-1のウイルスシードストックをGMP基準に準拠した施設で製造するための方法の確立、2)生物学的評価試験、安全性試験、効力試験を経て臨床試験に使用可能なバルク標品を製造するための基盤技術を確立することにある。
研究方法
BACmidと大腸菌を用いた系で単一プラーク由来のウイルスゲノムDNAの塩基配列を決定し、生物学的評価試験を行うための基礎データを得ることにより、臨床試験に使用可能なバルク標品を製造するための基盤を確立する。
結果と考察
BACmidクローニングベクターとウイルスゲノム全長DNAを精製した。d12.CALPΔRRと新規腫瘍溶解性HSV-1のゲノム全長DNAをBACmidベクターと混合し、Veroデザイナーセルに感染させた。ウイルスプラークを10%FBS/DMEM存在下で標識遺伝子の蛍光を指標にして、単一プラークにまで精製した。安定して蛍光を発するクローンを無血清培地VP-SFMで増殖させ、無血清培地で複数単離し、それぞれDNAを精製した。エレクトロポレーション法で大腸菌にトランスォームしBACmidにクローニングした均一なウイルスDNAを大量に精製した。制限酵素で消化したDNA断片の電気泳動パターンより、BACmidベクターの挿入を確認し得た単一のウイルスプラーク由来DNAの塩基配列をショットガン法とダイレクトPCR法を用いて決定した。
結論
平成20年度の研究により、ウイルスゲノム全長DNAのBACmidベクターへのクローニングを完了し、1)安定した保存方法の確立、2)単一クローン由来のウイルスゲノムDNAから、国内ではじめて均一なゲノムDNAから塩基配列を決定する、という目標を達成した。これは今後の腫瘍溶解性ウイルスを用いた臨床研究において、ウイルス試験薬の規格を統一する方法を提供するものであり、試験薬の安全性の向上に寄与するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2009-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200807012B
報告書区分
総合
研究課題名
肉腫および悪性中皮腫を標的破壊する腫瘍溶解性ウイルスベクターのシードストックおよび臨床ロットの製造とその安全性・有効性評価に関する研究
課題番号
H18-遺伝子・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 克仁(大阪府立成人病センター 研究所 病態生理学)
研究分担者(所属機関)
  • 山村 倫子(大阪府立成人病センター 研究所 病態生理学)
  • 川口 寧(東京大学医科学研究所 感染症国際研究センター 感染制御部門)
  • 城野 洋一郎((財)化学及血清療法研究所 菊池研究所 第2研究部)
  • 菅原 敬信((財)化学及血清療法研究所 菊池研究所 試作研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平滑筋肉腫など難治性肉腫と悪性中皮腫に対する腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを用いた標的遺伝子療法の速やかかつ適切な実用化・臨床応用を目指し、その基盤技術を確立することにある。
研究方法
1) 単純ヘルペスウイルスの初期転写因子であるICP4を恒常的に発現するVero細胞デザイナーセルを用いて、d12.CALPΔRRと 新規腫瘍溶解性HSV-1を無血清培地で増殖させ、精製法を確立する(平成18年度)。2) 悪性中皮腫に対するin vivoでの効力試験を行うため、SCIDマウスの正所性移植モデルを用いた評価実験系を確立する(平成18年度)。3) マスター、ワーキングウイルスシードストックをGMP基準に準拠した施設、設備のもとで製造するための方法を確立する(平成19年度)。4) ウイルスシードストックの生物学的評価試験の一環としてゲノムDNAの塩基配列決定し、臨床試験に使用可能なバルク標品を製造するための基盤技術を確立する(平成20年度)。
結果と考察
研究方法の項1)に関して、Vero細胞デザイナーセルから無血清培地VP-SFMでd12.CALPΔRRのラージスケール精製の条件検討を行い、アフィニティー担体を用いた簡便かつ迅速な新規ウイルス精製方法を確立した。平成19年度は、方法の項2)に関し、ヒト腹膜悪性中皮腫培養細胞にルシフェラーゼ標識遺伝子を導入し、SCIDマウス腹腔内に移植する正所性のマウス実験モデルを確立した。さらに、生物学的評価試験実施に必要な抗HSV-1ウイルス抗体を作成した。平成20年度は、BACmidにクローニングした均一ウイルスDNAを大量に精製し、国内ではじめて単一のプラーク由来のウイルスゲノムDNAの塩基配列をショットガン法とダイレクトPCR法を用いて決定した。
結論
1)ウイルスの迅速かつ簡便な精製方法の確立により、GMP準拠環境下での製造の目途がたった。
2)ヒト腹膜悪性中皮腫の正所性に移植実験モデルの確立は世界初の成果で、悪性中皮腫に対する治療薬の開発に広く活用できる評価系を提供するものである。
3)BACmidベクターへのクローニングに成功したことより、均一なウイルスゲノムDNAを大量に精製することが可能になった。これは腫瘍溶解性ウイルスを用いた臨床研究において、ウイルス試験薬の規格を統一する方法を提供するものでありウイルス製剤の安全性の向上に寄与するものと思われる。これらの成果によりウイルス臨床ロットの大容量精製のための準備がすべて整った。

公開日・更新日

公開日
2009-08-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200807012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)ウイルス精製方法の確立によりGMP準拠環境下での製造の目途がたった。2)ヒト腹膜悪性中皮腫の正所性移植実験モデルの確立は世界初の成果で、悪性中皮腫に対する治療薬の開発に広く活用できる評価系である。3)BACmidベクターへのクローニングにより、均一なウイルスゲノムDNAを迅速かつ大量に精製することができた。これは腫瘍溶解性ウイルスを用いた臨床研究で、試験薬であるウイルス製剤の規格統一と安全性向上に寄与するものと思われる。これらの成果によりウイルス臨床ロットの大容量精製のための準備が整った。
臨床的観点からの成果
わが国発の腫瘍細胞標的化能をもつ腫瘍溶解性ウイルスの臨床試験用ロットの製造と安全性評価の研究であり、得られる技術やノウハウの遺伝子治療分野全般に対する波及効果は大きい。また、本研究を基に得られるウイルス臨床試験用ロットを用いて、適切な臨床試験が計画され実施されるならば、治療の決め手がなく厳しい状況に置かれている平滑筋肉腫など難治性肉腫や悪性中皮腫の患者さんに対する新治療法の開発に直結することから、その貢献度は極めて大きいと言える。
ガイドライン等の開発
均一なウイルスゲノムDNAを迅速かつ大量に精製し、国内ではじめて単一クローン由来のウイルスDNAの塩基配列を決定することができた。これは腫瘍溶解性ウイルスを用いた臨床研究で、試験薬であるウイルス製剤の規格の統一と安全性の向上に寄与する成果であり、将来、ウイルス遺伝子治療剤のガイドライン等の作成に資するものと思われる。
その他行政的観点からの成果
難治性肉腫と悪性中皮腫の治療法開発への国民の要請は極めて強い。とりわけ、我が国でも国民、行政、社会の深刻な問題となりつつあるアスベスト暴露による悪性中皮腫に対する新治療法開発の意義は大きい。また、本研究は、申請段階から研究期間を通して難治性肉腫の患者さんとそのご家族を中心とする多くの皆様のご支援をいただいた。本研究の行政的観点からの成果の一つは、難治疾患に対する厚生労働科学研究の推進とその研究成果が患者さんやご家族の希望に直結し得ることを示した点にあると思われる。
その他のインパクト
毎日新聞、朝日新聞、産経新聞、読売新聞、日本経済新聞、共同通信社配信記事、平成18年8月28日夕刊、29日朝刊、平成18年9月15日付け聖教新聞に「悪性中皮腫治療剤」の開発に関する記事が掲載された。平成19年10月22日付け日経新聞に本研究の中皮腫治療ウイルスの開発記事が掲載された。また、「悪性中皮腫治療剤」の開発に関するニュースが、平成18年8月28日、29日にNHK、関西テレビ、読売テレビで放送された。さらに、平成18年10月3日と同 19日にNHK国際放送でも放送された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
H. Yamamura, N. Hirano, H. Koyama et al.
Loss of smooth muscle calponin results in impaired blood vessel maturation in the tumor-host microenvironment.
Cancer Sci. , 98 , 757-763  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-