肝炎ウイルスの新たな感染防止・残された課題・今後の対策

文献情報

文献番号
202021002A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスの新たな感染防止・残された課題・今後の対策
課題番号
H30-肝政-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
四柳 宏(東京大学 医科学研究所先端医療研究センター感染症分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本法中に定められた“肝炎対策基 本指針”には“肝炎に関する啓発及び知識の普 及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項” を推し進めることが記載されている。また、肝 炎対策基本指針の中には“肝炎の予防のため の施策に関する事項”が記載されている。本研 究班にはこの 2 つに関して研究を行い、国民に 成果を還元することを目標とする研究班であ る。本年度は前年度までに得られた研究をさら に推し進めつつ、問題の指摘された e-learning system の再構築を行うこととした。
研究方法
研究班の目標として(1)一般生活者・保育施 設勤務者・医療従事者を対象とした e-learning
system の構築、(2)HB ワクチンの接種状況・ 感染状況に関する調査、(3)急性肝炎の発生状 況にする正確な状況把握の検討、を掲げた。
結果と考察
(1)一般生活者・保育施設勤務者・医療従事者 を対象とした e-learning system の構築
(四柳・江口・八橋・森屋・米澤協力者)
昨年までの e-learning システムの問題を解決 するための方法を検討し、ナレーション入りの 新たなシステムを作成した。
(2)HB ワクチンの接種状況・感染状況に関す る調査
1医療従事者に対する HB ワクチン接種後の HBV へ の感染状況、ワクチンの追加接種の効果を検証するシ ステムの確立(細野・田中靖人・江口・田中聡司協力者)
細野研究分担者が確立した肝炎ウイルス検査 データおよび HBV 感染予防状況のデータベース に名古屋市立大学付属病院、佐賀大学医学部付 属病院、国立病院機構大阪医療センターの医療 従事者を登録し、調査を行った。HBs 抗体価が 半数の医療従事者で 30mIU/mL に低下するまで の期間は中央値で 7.56 年であった。
2エコチル調査を用いた小児での HB ワクチン接種効 果の検討(田中靖人)
エコチル調査・愛知ユニットセンターに登録 された 8 歳学童期調査および 8 歳詳細調査の参 加者を対象とし、保護者の同意を得て採血を実 施し、HBs 抗原量、HBs 抗体価、HBc 抗体価を 測定し、HB ワクチン接種者とそれ以外での解析を行った。
HB ワクチン接種例は全体の 26.4%であり、この群における HBs 抗体陽性率は 72.4%であった。 またこの群では HBs 抗原陽性例はなく、HBc 抗 体も低力価陽性例を 0.7%に認めたのみであった。 一方 HB ワクチン未接種例では HB キャリアを 0.3%に認めたほか、Hbc 抗体陽性例を 2%に認め た。
3救急外来を受診した小児患者を対象にした HB マー カーの検討(森岡・酒井・高野)
日本大学医学部附属板橋病院・神戸こども初 期急病センター・つくばメディカルセンター の 3 施設で、母子手帳情報に加えて B 型肝炎ワ クチンを接種している 1 〜 3 歳の小児を対象に B 型肝炎(HBV)の感染率、HB ワクチンの有 効率・抗体持続率の検討を開始し、解析を行った。 定期接種の導入により HBc 抗体陽性児は 1.07% から 0.45%に低下した。また、ワクチン接種によ る HBs 抗体獲得率は1歳児では 97%であるもの の加齢とともに低下することが明らかにされた。
(3)急性肝炎の発生状況にする正確な状況把握 の検討
1感染症法に基に感染症サーベイランス事業で届け出 された急性肝炎症例の解析(相崎)
A 型・B 型・C 型急性肝炎の届け出データを 網羅的に解析し、届け出率の低い理由について 解析した。肝炎の症例の報告は施設による偏り があることが示唆された。
2医療保険ビッグデータの解析による B 型急性肝炎症例数の推計(田倉)
日本人の被保険者の 6%強をカバーする健康 保険データベースから、B 型急性肝炎の実績症 例を抽出し、2015 年度 -2018 年度に関する発生 状況の検討を再度行い、結果の解析を行った。B 型急性肝炎の年間発生数は約 500 例と推計され た。
結論
ウイルス肝炎のコントロールのための研究を 行い、問題点の抽出を行った。

公開日・更新日

公開日
2021-11-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202021002B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎ウイルスの新たな感染防止・残された課題・今後の対策
課題番号
H30-肝政-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
四柳 宏(東京大学 医科学研究所先端医療研究センター感染症分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本法中に定められた“肝炎対策基 本指針”には“肝炎に関する啓発及び知識の普 及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項” を推し進めることが記載されている。また、肝 炎対策基本指針の中には“肝炎の予防のための施策に関する事項”が記載されている。本研究 班にはこの 2 つに関して研究を行い、国民に成 果を還元することを目標とする研究班である。 この目標の実現のため、(1)一般生活者・保育 施設勤務者・医療従事者を対象とした e-learning system の構築、(2)HB ワクチンの接種状況・感染状況に関する調査、(3)急性肝炎の発生状 況にする正確な状況把握の検討、の 3 項目を目 標に置いた。
研究方法
前述の通り研究班の目標として(1)一般生活 者・保育施設勤務者・医療従事者を対象とした e-learning system の 構 築、(2)HB ワ ク チ ン の 接種状況・感染状況に関する調査、(3)急性肝 炎の発生状況にする正確な状況把握の検討、を 掲げた。
結果と考察
(1)一般生活者・保育施設勤務者・医療従事者を対象とした e-learning system の構築
保育施設勤務者において肝炎の特徴・感染経路などの理解が不十分であることを示した。それをもとに e-learning システムを構築したが、 理解度が不十分であったためナレーション入りの新たなシステムを作成した。
(2)HB ワクチンの接種状況・感染状況に関する調査
肝炎ウイルス検査データお よび HBV 感染予防状況のデータベースを構築した。医療従事者を登録し、調査を行った。
エコチル調査・愛知ユニットセンターに登録 された 8 歳学童期調査および 8 歳詳細調査の参 加者を対象とし、保護者の同意を得て採血を実施し、HBs 抗原量、HBs 抗体価、HBc 抗体価を測定し、HB ワクチン接種者とそれ以外での解析を行った。
HB ワクチン接種例は全体の 26.4%であり、この群における HBs 抗体陽性率は 72.4%であった。 この群では HBs 抗原陽性例はなかった。 一方未接種例では HB キャリアを 0.3%に認めた。
3 施設で、母子手帳情報に基づくB 型肝炎ワクチ ン接種歴の確認できる 1 〜 3 歳の小児を対象に B 型肝炎(HBV)の感染率、HB ワクチンの有効率・抗体持続率の検討、解析を行った。 ワクチン接種による HBs 抗体獲得率は 1 歳児では 97%であるものの加齢とともに低下することが明らかにされた。
(3)急性肝炎の発生状況にする正確な状況把握の検討
急性肝炎の届出データを解析し、届出率の低い理由について 解析した。肝炎の症例の報告は施設による偏りがあることが示唆された。
日本人の被保険者の 6%強をカバーする健康保 険データベースから、B 型急性肝炎の実績症例 を抽出し、結果の解析を行った。B 型急性肝炎の年間発生数は約 500 例と推計され た。C 型肝炎の家族内感染についても検討を行い、 C型肝炎受療群の同居のサンプル数は、患者ベー スで 74 人(全体 4,608 人、1.61%)、世帯ベース で 37 件(全体 4,571 件)となった。
D.考察
(1)e-learning に関しては認知度の不足が明らかになった こと、従来のパワーポイントファイルを使っ た e-learning だけでは効果が不十分であることが示唆されたため、問題点を改良した新しい e-learning を作成 した。
(2)成人の HB ワクチンに関してはワクチン 無効例への対策、ブースター接種の必要性の有無が大きな問題である。今回の研究でHBs 抗 体価が半数の医療従事者で30mIU/mL に低下するまでの期間が明らかになった。
小児に関する定期接種の効果が救急外来の受 診者を中心に検討され、HBc 抗体陽性例が半数未満に低下したことが明らかにされた。他方 HBs 抗体の陰性化が年齢が進むにつれて増える ことが明らかになった。
エコチル調査の結果からはワクチン接種をし た 8 歳児での HBs 抗体陽性率は 72.4%であり、 集団免疫の効果が期待される数値であった。0 歳児へのワクチン接種は意義のあることが示さ れた。
(3)B 型肝炎・C 型肝炎はともに 5 類の全数 届出感染症であるが、届出率は低い。2 つの検討からは報告率は 40%程度であることが推測され、 その理由に医療機関の偏りがあることが示唆された。
結論
ウイルス肝炎のコントロールのための研究を 行い、問題点の抽出を行った。

公開日・更新日

公開日
2021-11-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202021002C

収支報告書

文献番号
202021002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,700,000円
(2)補助金確定額
24,688,000円
差引額 [(1)-(2)]
12,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,471,693円
人件費・謝金 9,052,562円
旅費 23,480円
その他 6,440,584円
間接経費 5,700,000円
合計 24,688,319円

備考

備考
※R3研究費の金額です
返納が発生しています

公開日・更新日

公開日
2021-11-25
更新日
-