文献情報
文献番号
202021001A
報告書区分
総括
研究課題名
地域に応じた肝炎ウイルス診療連携体制構築の立案に資する研究
課題番号
H30-肝政-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
- 鳥村 拓司(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
- 伊藤 義人(京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学)
- 日浅 陽一(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
- 江口 有一郎(佐賀大学 医学部附属病院 肝疾患センター)
- 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
今回、肝炎ウイルス陽性者が適切に肝臓専門医へ紹介される仕組みを構築することを目的に研究を行った。
研究方法
本研究班では、これまで佐賀県、福岡県、愛媛県、京都府、石川県において、主にかかりつけ医を対象に、肝炎ウイルス陽性者の専門医への患者紹介に関するほぼ同じ内容のアンケート調査を行ってきた。専門医への患者紹介に関して共通の課題が明らかになったが、府県毎に肝炎医療や行政環境は異なっており、地域に応じた対策が必要と考えられた。今年度は、府県毎に肝炎診療連携体制を改善するために以下の取組を行った。
妊婦健診の肝炎ウイルス陽性者を専門医へ受診勧奨するシステムを構築(石川)。肝炎ウイルス陽性者の診療情報を、ICTを用いて拠点病院と専門医療機関間で共有するシステムを構築(石川)。眼科医会と協力した肝炎ウイルス検査陽性者フォローアップの取り組み(以石川)。3次医療機関9施設における施設内の肝炎ウイルス陽性者の院内紹介の現状アンケート調査(佐賀)。かかりつけ医向けアンケート調査によるALT値正常値と患者紹介に関する解析(福岡)。肝炎ウイルス高浸淫地域に絞った肝炎対策(愛媛)。肝炎診療における薬剤師との連携(愛媛)。京都府内の2次医療圏毎の肝炎治療の偏在を解析(京都)。さらに疫学班(研究代表者 田中純子)と共同で、各種データソースを用いて、本研究班の班員が属する8府県(岩手・神奈川・石川・京都・広島・愛媛・福岡・佐賀)の肝炎・肝がんの動態、診療連携や肝炎・肝がん対策の現状と課題の解析を行った。また政策拡充班(研究代表者 考藤達哉)と連携し拠点病院対象とした病診連携指標調査を行った。
妊婦健診の肝炎ウイルス陽性者を専門医へ受診勧奨するシステムを構築(石川)。肝炎ウイルス陽性者の診療情報を、ICTを用いて拠点病院と専門医療機関間で共有するシステムを構築(石川)。眼科医会と協力した肝炎ウイルス検査陽性者フォローアップの取り組み(以石川)。3次医療機関9施設における施設内の肝炎ウイルス陽性者の院内紹介の現状アンケート調査(佐賀)。かかりつけ医向けアンケート調査によるALT値正常値と患者紹介に関する解析(福岡)。肝炎ウイルス高浸淫地域に絞った肝炎対策(愛媛)。肝炎診療における薬剤師との連携(愛媛)。京都府内の2次医療圏毎の肝炎治療の偏在を解析(京都)。さらに疫学班(研究代表者 田中純子)と共同で、各種データソースを用いて、本研究班の班員が属する8府県(岩手・神奈川・石川・京都・広島・愛媛・福岡・佐賀)の肝炎・肝がんの動態、診療連携や肝炎・肝がん対策の現状と課題の解析を行った。また政策拡充班(研究代表者 考藤達哉)と連携し拠点病院対象とした病診連携指標調査を行った。
結果と考察
市町の保健師が中心となって、妊婦健診における肝炎ウイルス検査陽性者を産前から産後まで専門医へ受診勧奨するシステムを全県下で運用した。特に乳幼児健診が、受診勧奨の有用な機会と考えられた(石川)。肝炎ウイルス陽性者の診療情報を、ICTを用いて拠点病院と専門医療機関間で共有するシステムを運用した。ICTを用いることで、従来の紙媒体に比べて効率よく、より正確に肝炎ウイルス陽性者の専門医療機関への受診確認を行うことができた(石川)。県内眼科医会と連携し、眼科医療機関で実施された肝炎ウイルス検査陽性者を拠点病院が実施するフォローアップ事業に積極的に登録する取り組みを行った。(石川)。県内3次医療機関内における非肝臓専門医から専門医への肝炎ウイルス検査陽性者の紹介率を調査したところ、紹介率は低率であったが、紹介された陽性者の受診率は極めて高く、紹介率を向上させることが重要と考えられた(佐賀)。主に非肝臓専門医を対象とした調査から、肝炎ウイルス陽性者を専門医へ紹介しない理由としてALT値が正常であるから、が多かった。しかし、ALT値の基準値を40 U/L未満と答えた施設が数多く存在しおり、ALT値基準値の周知が専門医への患者紹介につながる可能性が示唆された(福岡)。肝がん死亡率が高い肝炎ウイルス高浸淫地域おいて保健師が肝炎ウイルス陽性者に対する専門医受診勧奨を行い、専門医受診につなげることができた(愛媛)。薬剤師と連携してDAA治療前の併用薬スクリーニングを行い、安全なDAA治療を行った(愛媛)。2次医療圏毎の肝炎治療の偏在を人口当たりの肝炎治療受給者証交付件数と健康増進事業の肝炎ウイルス検査の受検率から推測したところ、2医療圏において、低値であり、今後の重点的な対策が必要と考えられた(京都府)。疫学班と共同で、8府県(京都、広島、愛媛、福岡、神奈川、佐賀、岩手、石川)の肝炎対策の取り組みをスコア化した。受検・受診・受療関連スコアについては、いずれの府県でスコアが高い傾向があるが、フォローアップ、診療連携関連スコアについては、スコアの低い府県がみられた。また政策拡充班と連携し、拠点病院を対象に病診連携指標を評価した。かかりつけ医から拠点病院への紹介率、拠点病院からかかりつけ医への逆紹介率はいずれも80-90%であったが、診療情報提供書、患者手帳等を使っての診療連携実施率は20-30%にとどまっていた。班員が行った計13事例および病診連携指標に関する取り組み、肝炎診療連携の地域差に関する解析を記載した「地域に応じた肝炎診療連携促進のための好事例集」を作成し、肝炎情報センターのホームページ上に公開した。
結論
本研究班では、主にかかりつけ医を対象に肝炎ウイルス陽性者の専門医への患者紹介に関するアンケート調査を5府県で行い、その現状と課題を明らかにした。さらに、それらの課題を解決するための様々な取組を行った。これらの取組は、地域の特性にあわせた効率的、効果的な肝炎診療連携体制の構築の参考となり、最終的に本邦における肝炎ウイルス肝炎患者の重症化の予防の一助となることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-05-06
更新日
-