エイズ動向解析に関する研究

文献情報

文献番号
202020025A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ動向解析に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-エイズ-一般-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
羽柴 知恵子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科、エイズ治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 椎野 禎一郎(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在行われている動向調査では把握できないHIV新規未治療感染者等の情報を収集・解析し、今後のHIV感染予防普及啓発の対象を明らかにし、その手法を提言することを目的とする。
研究方法
a.新規未治療HIV陽性患者の情報収集
名古屋医療センターを受診した新規未治療感染者で,2018年1月~2020年11月に当院受診時未治療患者104人を対象とし、当科初診時に居住地・就労地・出会いの場について自己回答式アンケートを配布し、解析を行った。
b.無料匿名検査会受検者の情報収集
日本国籍若年MSMが多く来場する名古屋市無料HIV検査会(以下検査会)の来場者を対象とした。令和2年度は検査会が実施できなかったことから、過去の検査会の来場者の質問紙調査データの分析を行った。初めて検査を受検したものの特性、受検理由の推移、年齢群別に利用する出会いの場や情報入手ツールの利用状況の比較を行った。
c. SPHNCSを使用したクラスタ分類
2003年〜19年に名古屋医療センターと名古屋医療センターに薬剤耐性検査を依頼している東海地方の医療機関に来院した新規HIV感染者から採取されたウイルスのpol領域(HXB2:2253-3260)の塩基配列から、HIV薬剤耐性班で解析したdTC同定ツールSPHNCSを用いてdTCを同定した。2016年~19年の東海地方由来の新規感染者の動向が注目されるdTCについて、その性状の詳細分析、時間系統樹の推定と臨床へのデータ還元を行った。
結果と考察
a.年齢の平均値は38.2歳(range:22-69歳)、102人(99%)が男性。94人(91.3%)が日本国籍。セクシャリティはゲイ70人(67.3%)、バイセクシャル21人(20.2%)、ヘテロセクシャル13人(12.5%)。就労状況は正社員63人(60.6%)と半数以上。居住地は名古屋市郊外にも散在。就労地は名古屋市中心部の集積が認められた。出会いの場は名古屋市中心部に集積していた。HIV感染症早期発見を目標として新たに検査の啓発を行うとすると、居住地を想定した啓発であれば名古屋市外を重点的に行う必要があることが示唆された。また出会いの場における啓発であれば名古屋市中区が重点地域となりうる。
b.新型コロナ感染症による検査件数の落ち込みは東海4県いずれの地域でも著しく、2009年の新型インフルエンザパンデミック時や東日本大震災の影響による落ち込みをはるかに超す影響となっている。 
過去6か月に使用した施設は年齢により差があり、29歳以下の若い年齢層はTwitter等、位置情報付き出会い系アプリの過去6か月の利用経験が高い。一方で40歳以上はハッテン場利用が高いことが示された。また直近のセフレ・友達と出会った場所は、若い年齢層はTwitter等SNSアプリ、位置情報出会いアプリがあがっており、40歳代以上は38%が有料のハッテン場を挙げていた。その場限りの相手と出会ったツールについても同様の結果であった。最も性行動が活発な20歳代に届く予防啓発、検査普及メッセージのアウトリーチのためには、近年活用が広がっている位置情報付きの出会いアプリ広告に加えSNSの活用はますます重要になることが考えられた。
c. 2017年~19年の東海地方由来の新規患者において、pol領域の配列が得られたサブタイプB感染者は、251名であった。SPHNCSによる解析によって、東海地方の当該年度間のHIV伝播は延べ67個のdTCと36名の孤発例に分かれていることが示された。17年以降に東海地方で急速に増加しているdTCとして、巨大TCの一つTC003のサブクラスタ、同じくTC002の九州サブクラスタの移入例、アウトブレイクが示唆されるTC098が見いだされた。一方、 TC027とTC165ではそのネットワーク構造から東海地方に検査で捕捉されていない感染者が存在する可能性が示唆された。伝播クラスタ同定システムSPHNCSは、東海地方で急速に感染を広げている感染者やhard-to-reach層を検出できる可能性がある。今回見出した5つのdTCのうち、急速な拡大が観察された3つはいずれも30歳代以下の若年層を中心に構成されており、東海地方のMSMの若年層にHIV-1が急速に広がるグループが未だに存在することを示唆した。一方で、捕捉されていない感染者の存在は2つのdTCで示唆された。
結論
居住地を想定した啓発であれば、名古屋市外を重点的に行う必要がある。今後、性行動の活発な20歳代MSMへ検査予防啓発の情報を届けるためにはアプリ・SNSの活用は重要。得られたdTC情報をGIS解析や社会学的調査との関連性を調査できれば、アウトブレイクやhard-to-reachのリスク因子について解析が可能となると考える。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,550,000円
(2)補助金確定額
4,549,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,230,901円
人件費・謝金 0円
旅費 22,745円
その他 1,246,262円
間接経費 1,050,000円
合計 4,549,908円

備考

備考
千円未満切り捨てのため。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-