HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究

文献情報

文献番号
202020024A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究
課題番号
20HB1007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
  • 照屋 勝治(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①先行研究(H29-エイズ-一般-009)で実施したHIV感染症の曝露前予防(PrEP: pre-exposure prophylaxis)の実証研究を継続し、我が国の男性間性交渉者(MSM:men who have sex with men)におけるPrEPの安全性とPrEP導入による性感染症の罹患率への影響を評価するとともに、近年急増しているジェネリック薬の自己輸入によるPrEP使用者の実態把握を行い、PrEP提供体制の整備・強化・相互連携を図る。②PrEPに関する正しい情報発信のプラットフォームをコミュニティで整備することを目的に、日本のMSMコミュニティを対象としたPrEPに関する認知度・課題等に関する意識調査を実施した。
研究方法
①当院に設立されたMSMコホート研究(Sexual health(SH)外来)で実施している、単群介入試験によるPrEPのpilot studyでは、対象者にツルバダ一日一回内服のdaily PrEPを実施し、PrEP開始前後のHIV/STIの罹患率を評価するための介入試験を2018年より実施しており、これを継続する。SH外来で3か月毎のHIV/STI検査とともに、safer sexの指導を行っており、当研究の対象者としては、SH外来に定期的に通院しPrEPによるHIV予防の重要性を理解した高リスクの非HIV感染MSMを対象とする。約120症例を2年間以上フォローしPrEP使用者におけるHIV罹患率およびSTI罹患率をPrEP介入前後で比較することを目的とする。また、ジェネリック薬の自己輸入による自己判断でのPrEP使用者の実態把握に関して、SH外来に加えて、PrEPのフォロー検査を提供しているSTIクリニックと提携し、東京近郊でのPrEP使用状況の実態把握に努めPrEP提供体制を構築する。
②昨年度の先行研究を参考に、MSMを対象とした無記名自記式アンケート調査を行った。アンケート調査は、MSM向けのGPS機能付き出会い系アプリの利用者を対象として実施した。
結果と考察
①PrEPのpilot study開始1年後の時点で、受診継続率91.1%、内服順守率96.4%と極めて高く、新規HIV感染者は認めなかった。一方、コンドームの平均使用率はPrEP開始時点の65.7%が1年後に56.1%に低下し、他のSTI罹患率は、PrEP開始前後一年間で21.5%/人年から40.9%/人年へと増加した。SH外来のPrEP使用者は2020年3月末時点で529名に到達し、東京近郊のPrEP提供施設であるプライベートヘルスクリニック(PHC)ではPrEPのジェネリック薬の処方を5月より開始し、参加者は470名に達し、当院と併せてPrEP使用者は1000名を超えている。
②回答開始者は8,131人で、そのうち矛盾回答者等を除いた7,850人を解析対象とした。回答者の平均年齢は38.4歳で、15〜39歳が半数以上(53.5%)を占めていた。PrEPの認知度は57.1%(3577/6266)であり、PrEPに関する知識に関しては、「PrEPを服薬していてもHIV以外の性感染症にはかかってしまうので、コンドームの使用が大切である」という質問の正答率は97.3%(5876/6036)であった。一方、「HIV感染の予防のためにPrEPを使用した場合、コンドーム使用にどう影響すると思うか?」という質問では、「コンドームを今より使わなくなると思う」を選択した回答者は43.8%(1986/4538)にのぼった。
PrEPの服用経験(現在/過去)がある回答者は全体の8.8%(546/6230)であった。PrEPの入手方法は国内外からの個人輸入が81.0%(423/522)を占めていた。また、PrEP使用者の52.8%(276/523)は定期的な医師の診察を受けていなかった。HIVの検査頻度に関しては、1年に1回以上検査を受けていると回答した人の割合は48.3%(1875/3884)であった。
2018年の研究では、PrEPの認知度は36.3%(1719/4735)、服用経験がある回答者は全体の2.2%(116/5222)であったため、約2年でPrEPに関する知識やインターネットでの購入方法がMSMの間で広がりつつあることが示唆された。さらに、医師の診察を受けていないPrEP使用者は依然として半数以上であるため、国内でのPrEP使用者に対応可能な医療機関の体制整備も急務であることが示唆された。
結論
①日本のPrEPの妥当性、実現可能性を評価するために、PrEP pilot studyの1年後の観察を完了した。②MSMなどがより安全にPrEPを提供するために、有効な情報を当事者や医療機関向けにweb上で発信する。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,990,000円
(2)補助金確定額
15,990,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,964,734円
人件費・謝金 931,800円
旅費 0円
その他 8,403,466円
間接経費 3,690,000円
合計 15,990,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
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