MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入に関する研究

文献情報

文献番号
202020023A
報告書区分
総括
研究課題名
MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入に関する研究
課題番号
20HB1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 和田 秀穂(川崎医科大学 血液内科学)
  • 健山 正男(琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座 分子病態感染症学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMでは、これまでの介入が届きにくい層が存在しており、新たな知見を活用し、今後は、感染リスクの高い層に焦点をあてた介入を積極的に展開していく必要がある。加えて今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、新型コロナウイルス感染症の影響で、MSMの検査機会も減少し、エイズ発症割合も増加している。またコミュニティセンターの開館時間も大幅に短縮となり、ゲイ向け商業施設やイベントも激減し、啓発普及の変更を余儀なくされた。一方で保健所等の検査機会も縮小する場合も多く、潜在的なHIV検査ニーズは高まっていた。郵送検査には自宅で都合の良い時間に受けられるメリットもあるが、支援や情報提供が不足しがちになるデメリットもある。そのため本研究では、6箇所のコミュニティセンターを中心に日本9地域で郵送検査やクリニック・診療所での検査を活用し、三密を避けながら保健所以外の場所で、検査を受けられる方策の整備および受検者アンケート体制の構築、オールジャパン統一で広報体制を構築することを目的とした。
研究方法
検査行動に関する形成調査を実施し、様々な検査機会利用者の特性を明らかにすることを目的とした。具体的には日本のインターネットサイトを運営するA社が保有するアンケートモニター登録者を47都道府県と年齢階級によって層化し二段層化抽出法を用いてMSMを対象に、本調査を2020年12月に3,000人を対象に実施し、その結果について分析を行った。また、令和2年2月からの新型コロナ感染症拡大に伴い、保健所での検査提供は7割以上減少となっている。この減少を埋めるためにも新たな検査機会での補完が急務となった。そこで各地域では、郵送検査キットを配布する取り組みを開始した。各地域の状況に合わせて、対面配布とWEB配布する方式を組み合わせて実施した。
結果と考察
初年度、各地域の連携のもと、郵送検査キットを1,053キット配布し、受検者アンケートに回答した人は1,048人であった。このうち、実際に利用した人は769人であり、配布数に占める利用者の割合は73.0%であった。このうち、結果画面を視認したと考えられる人は736人(95.7%)であった。新規のHIV陽性率は推定で1.8%、新規の梅毒陽性率は推定で5.6%であった。また形成調査として実施した質問紙調査の結果は、初年度は、MSMを対象に検査行動に関する形成調査を実施し、3,205人の回答を得た。これまでのHIV検査経験は32.5%であり、過去1年間では15.1%であり先行研究と比べてやや上昇していた。また利用した検査機関で最も高かったのは保健所即日検査(13.1%)、郵送検査は2.3%であった。これまでに、医療機関で医療職者から、HIV検査をすすめられたことがあった人は12.8%であり、過去1年間では9.6%であった。今年度新型コロナウイルス感染症拡大の影響でHIV検査を利用する回数や頻度は減ったと回答した人の割合は16.1%であり、この期間に検査を受けることができたと回答した人は11.7%であった。本調査では検査機会の指向に関して尋ねており、最も利用希望の高かったのは保健所即日検査(35.5%)で、郵送検査は10.0%であった。保健所以外の検査機会としては大阪、岡山で展開されているクリニック検査の実施体制が中国四国、東海、沖縄で整備が進み、次年度には実施可能性が高まった。
結論
次年度に向けて、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていたとしても、新しい生活様式を意識しつつ展開できる体制を整備できた。一方でコミュニティの状況やHIV/AIDSや検査に対する意識も変化していることが指摘されている。各地域の行政も対応に追われており、MSMコミュニティにおけるHIV検査の機会は減少している。またエイズ発症割合も高くなっていると報告されており、検査ニーズはより高まっていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,000,000円
(2)補助金確定額
25,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,673,700円
人件費・謝金 3,897,115円
旅費 33,840円
その他 9,795,345円
間接経費 4,600,000円
合計 25,000,000円

備考

備考
本研究計画の遂行において必要となる郵送検査キットの購入について、交付申請時点では、「その他」の費目での支出になると考えて予算内訳に計上していた。しかし、実際に支払いの段になり、名古屋市立大学事務局の判断では、郵送検査キットは「物品費(消耗品等)」として扱うことが適当であるということになった。したがって、「その他」ではなく「物品費」からの支出となった。なお、このことによる研究遂行への支障は無かった。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-