健診施設を活用したHIV検査体制を構築し検査機会の拡大と知識の普及に挑む研究

文献情報

文献番号
202020020A
報告書区分
総括
研究課題名
健診施設を活用したHIV検査体制を構築し検査機会の拡大と知識の普及に挑む研究
課題番号
20HB1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
川畑 拓也(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 微生物部ウイルス課)
研究分担者(所属機関)
  • 森 治代(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 微生物部ウイルス課)
  • 駒野 淳(大阪薬科大学 薬学部 感染制御学研究室)
  • 本村 和嗣(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 微生物部ウイルス課)
  • 阪野 文哉(大阪健康安全基盤研究所 微生物部ウイルス課)
  • 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター・エイズ先端医療研究部・HIV感染制御研究室)
  • 大森 亮介(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HIV感染症は早期発見・治療により感染の拡大と発症を防止することが必要であるが、我が国では症状が出て初めて感染が判明するHIV症例が毎年約3割を占め、そのうち30〜59歳の就労世代は約7割以上を占める。このことは、就労世代にとって保健所の無料匿名検査は利用しにくく、その結果、発症する前にHIV感染を知る機会が失われている恐れがある。
 本研究では、健康診断の機会に、HIV検査を事業者に結果を知られることなく受検できる環境を、健康診断施設(以下健診施設)に整備する方法の確立、健診受診者に配布する検査案内パンフレットを利用した広報・啓発によるHIV・エイズの最新知識の普及・啓発、健康診断機会のHIV検査を通じて潜在的な感染者を発見するための費用対効果の評価を行う。
研究方法
(1)健診施設における無料HIV・梅毒検査提供の実践
 沖縄県那覇市の協力健診施設(以下センター)にて令和2年6月から翌年2月末まで無料HIV・梅毒検査(以下HIV等検査)を健康診断受診者に提供した。
(2)健康診断の機会を利用したHIV等検査の有効性に関する研究
 令和元年8月から12月末までにセンターにてHIV等検査を無料で提供した結果と、期間中の受検者を対象に行ったアンケート調査の結果を用い、健康診断機会を利用したHIV等検査の有効性を評価した。
(3)健診施設におけるHIV検査の陽性率推計のためのゲイ男性向けHIV検査の提供
 個別施策層であるゲイ・バイセクシャル男性のHIV陽性率を推定する目的で、クリニックを窓口としたゲイ・バイセクシャル男性向けHIV検査を実施した。
(4)健康診断機会に配布する検査案内パンフレットを利用した広報・啓発によるHIV知識習得の有効性の推定
 一般市民のHIV感染症に対する正しい知識習得の効果的な手法を確立するため、職域健診におけるHIVに関する知識の提供のHIVに対する理解度への影響を推定するため、知識提供無しの受診者が対象のアンケート調査結果と、知識提供有りの受診者が対象のアンケート調査結果を比較し、独立性の検定を行った。
結果と考察
(1)センターにおいて、期間中総受診者19,258名のうち12,790名に検査案内パンフレットを送付した。HIV等検査を受検した人は2,000名(15.6%)で、HIVスクリーニング検査陽性者は2名(問診の結果、治療中の患者と判明)であった。一方、令和2年7月から12月までの沖縄県の保健所におけるHIV検査数は、新型コロナウイルス流行の影響により、前年度比87.4%減の128名であったが、同期間のセンターにおけるHIV等検査受検者数は1,467名と、約11.5倍多く、健診施設におけるHIV検査は、保健所HIV検査を補完可能な検査体制となりうる潜在的な可能性が示唆された。
(2)令和元年8月から12月末までのセンターの総受診者10,380名のうち7,036名に検査案内パンフレットを送付した。期間中、検査を利用したのは1,103名(15.7%)で、確認検査の結果、1名がHIV陽性と判定された。沖縄県における同期間の新規HIV・AIDS報告数は10名、保健所のHIV検査で陽性と判定したのは2名であり、残る報告数8名中の1名がセンターのHIV検査で感染が判明したことになる。
(3)受検者数は581名で、HIV陽性者は8名(新規診断6名、治療中2名)、陽性率は1.4%であった。
(4)多くの質問項目・年齢群において、知識提供の有無での比較でHIV知識習得度に顕著な差が見られなかった事について、本研究の知識習得以外の機会でHIVの知識を習得してしまった事により効果が観察しにくくなった可能性、アンケート調査が知識の習得度を測りにくいものであった可能性、さらには、使用したHIV知識習得の教材が知識習得を促しにくいものであった可能性が考えられた。今後は、現在の調査地域以外での調査の検討、アンケート調査の質問項目の再検討、教材の再検討を行う必要がある。
結論
(1)健診施設における健康診断機会に提供する無料HIV検査について、保健所におけるHIV検査を補完可能な検査としての潜在性が示された。
(2)健康診断における無料HIV検査は、早期に無自覚なHIV感染者を見出すことができる検査システムとして意義があると思われた。
(3)診療所を窓口としたゲイ・バイセクシャル向けHIV検査を実施した。得られた結果を今後健診施設へHIV検査を普及させた場合のHIV陽性率推計の資料とする。
(4)健康診断機会に配布するHIV検査案内パンフレットを利用した広報・啓発によるHIV知識習得の有効性を推定した。今回の調査対象では、職域健診におけるHIVに関する知識の提供によるHIVに対する理解度への影響が顕著ではなかった。さらなる調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,994,000円
(2)補助金確定額
19,994,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,496,395円
人件費・謝金 2,241,245円
旅費 149,440円
その他 8,492,920円
間接経費 4,614,000円
合計 19,994,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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