HIV感染症の医療体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
202020018A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の医療体制の整備に関する研究
課題番号
20HB2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 統括診療部)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター臨床研究センター)
  • 内藤 俊夫(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 豊嶋 崇徳(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院)
  • 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院・感染管理部)
  • 渡邉 珠代(石川県立中央病院 免疫感染症科)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
  • 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター・エイズ先端医療研究部・HIV感染制御研究室)
  • 藤井 輝久(広島大学病院輸血部)
  • 宇佐美 雄司(国立病院機構 名古屋医療センター 歯科口腔外科)
  • 池田 和子(国立国際医療センター/エイズ治療・研究開発センター)
  • 矢倉 裕輝(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部)
  • 本田 美和子(国立病院機構東京医療センター 総合内科 )
  • 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
  • 三木 浩司(平成紫川会 小倉記念病院 精神科)
  • 四柳 宏(東京大学 医科学研究所先端医療研究センター感染症分野)
  • 日ノ下 文彦(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
106,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代のHIV感染症/AIDS(以下エイズ)分野では、拠点病院に高度な専門性を有し多様な医療・福祉課題に対応できる包括的医療体制の構築が求められているが、特定施設への陽性者の集中と他の“名ばかり”化、診療従事医の負担感増、定年退職者増及び後継医不在問題が深刻である。
2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大によりエイズ治療体制整備やHIV検査体制への影響が強く危惧される状況も加わった。
本研究では、新型コロナウイルス感染拡大の影響評価を行うとともに、HIV感染症/エイズ患者の新規発生動向に及ぼす影響を評価するために継続的な疫学情報収集を試みる。また、新型コロナウイルス流行下におけるエイズ診療の実態の記録を残し、今後も持続可能なエイズ治療体制構築のための方策を検討する。
研究方法
全国の拠点病院および拠点病院以外でエイズ医療に関わる医療機関に都道府県を通じて調査票を郵送し、診療状況等の情報を収集する。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響評価のため、国立国際医療研究センター病院エイズ治療研究開発センター(ACC)およびブロック代表の分担研究者の医療施設(ブロック拠点病院)における2020年と2019年の受診動向等を調査する。地域内外、職種内の連携強化のために、看護師、MSW、薬剤師、透析医、歯科医のネットワーク構築を行う。エイズ治療に関わる人材の育成や診療支援体制の構築する際の課題の検討を大学病院・附属病院および国立病院機構で行う。
結果と考察
全施設から調査票を回収した。2021年3月末時点の集計では、2019年末の時点で全国の医療機関には28,501人(拠点病院26,531人、拠点病院以外1,970人)が定期通院中であった。拠点病院以外でエイズ医療に関わる医療機関は5都府県14施設に増加した。拠点病院以外でエイズ治療に関わる医療機関は増加しており、今後も拠点病院以外の医療施設でのエイズ治療の広がりをあらわすひとつの指標となり得る。
全拠点病院(380施設)のうち定期通院者数0人は94施設であった。また、約3分の1の施設で身体障害者福祉法第15条指定医不在によりエイズに関連する福祉制度が利用できない状況にあった。
ブロックや中核では専従や専任の看護師、薬剤師が配置されていることが多いが、チーム医療加算算定可能施設はブロックで約7割、中核で約5割にとどまっていた。令和2年度の診療報酬改定でチーム医療加算に対する専従要件緩和により専任看護師が配置されチーム医療加算が算定可能となるとともに、エイズ治療の充実につながることが期待される。また、診療経験の少ない医療機関で最低限の対応を可能にするためには、医師の診療を支援する職種として専任の看護師と薬剤師を拠点病院に配置が重要になる可能性がある。
2020年、新型コロナウイルス感染拡大下のACCおよび全国8ブロック拠点病院では、定期受診者数及び新規感染者数は2019年と比較して減少を認めなかったが、所在する自治体によっては保健所や医療機関等からの紹介率の低下を認めた。来年度以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響評価を可能にする指標が得られたと考えられる。
歯科診療ネットワークは、歯科医師会を中心に構築されほぼ全都道府県で設置された。透析でも透析医会を中心に同様の取り組みを開始した。歯科・透析分野では診療忌避・拒否の事例が散見されるが、歯科・透析分野でそれぞれの専門分野の医療者が主体となって受入の体制を構築する仕組みを整えることは診療体制整備に有用である。
順天堂大学および国立病院機構で研修・診療支援システムの構築を試みるため、基礎的な調査を実施した。エイズ治療の分野では専従・専任で治療に関わる医師は極めて限られる。エイズ治療において、D to D、D to D+Pといった形式でのオンライン診療支援システムの構築は、患者数が少ない地域でエイズ治療に従事する医療者に有用である可能性がある。
結論
新型コロナウイルス感染拡大下であったが、今年も継続して我が国のHIV診療に関するケアカスケードの解析必要な診療情報を得ることができた。来年度移行、新型コロナウイルス感染拡大の影響も評価可能である。
新型コロナウイルス感染拡大を受けて導入が進むオンラインによる研修・診療・診療支援の仕組みはエイズ治療の診療体制整備に有用な可能性がある。本研究班により拠点病院の診療状況や体制の相違及び合併症や長期療養支援機能強化の必要性が明らかになった。「HIV 感染症・エイズに関する医療体制について(依頼)」(令和3年3月11日付け健感発0311第4号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)により都道府県で具体的な取り組みが開始されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
130,780,000円
(2)補助金確定額
127,070,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,710,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 50,233,259円
人件費・謝金 11,631,206円
旅費 1,054,720円
その他 33,971,210円
間接経費 30,180,000円
合計 127,070,395円

備考

備考
千円未満切り捨てのため。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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