HIV感染症及びその併存疾患や関連医療費の実態把握のための研究

文献情報

文献番号
202020017A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症及びその併存疾患や関連医療費の実態把握のための研究
課題番号
20HB1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
野田 龍也(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
  • 谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の抗HIV療法(ART)普及によりHIV感染症は慢性疾患化しつつあり、中長期的な対応が臨床上、患者支援上の大きな課題となっている。本研究は、わが国の保険診療の全数(悉皆)調査であるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、HIV感染症及びその併存疾患の「医療状況」と「医療費」の2つの実態を把握することを目的としている。
研究方法
今年度は、 (1) HIV/AIDSの検査・治療状況の推計、(2) 前項の推計と厚労科研「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究」の全国実態調査との比較、(3) 抗HIV薬に関する医療経済分析の3つを行った。
研究(1)では、以下についてNDBを用いて患者数等を推計した:
1. 検査(Retained)患者数と、そのうち治療(On Treatment)へ移行した患者数(全国)(年別及び第4四半期)
2. Retained/On Treatmentの年齢階級別患者数
3. Retained/On Treatmentの病院・診療所別患者数
4. Retained/On Treatmentの都道府県別患者数
5. 治療中HIV患者(On Treatment)の透析受療数
6. HIV感染者の死亡(NDB集計)
研究(2)では、全国のエイズ診療拠点病院に対し行ってきた調査(拠点病院調査)とわが国の保険診療の全数調査(悉皆調査)であるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の定期通院者数および治療者数を比較することで、NDBが拠点病院調査の一部項目の代替となり得るか検討した。2016年~2018年にかけてNDBではHIV病名およびHIVウイルス量定量検査が観察期間内に行われている患者を「Retained」として抽出し、その中から抗HIV薬が投与されている患者を「On Treatment」として抽出した。拠点病院調査では「定期通院者数」を「Retained」、「治療を行っている患者数」を「On Treatment」として日本全国、及び都道府県別に抽出した。
研究(3)では、HIV治療に関する医療費削減効果について、3剤併用療法から2剤併用療法に関する医療経済評価として、ARTによる治療を受けたHIV患者が2drug(DTG+3TC)へ切り替えた場合の予算影響分析(Budget Impact Analysis)に着手した。
結果と考察
研究(1)の結果概要として、検査を受けた患者(Retained)は通年では2万5千人前後であり、第4四半期の集計では2万人前後であった。検査の後に治療(On Treatment)へ移行した患者数は、通年では2万人台前半であった。年齢階級別では、Retained及びOn Treatmentの患者数は40歳代がもっとも多かった。医療機関種別では、診療所が1千人台後半~2千人前後、病院が2万人~2万人台前半であった。都道府県(医療機関所在地)別の患者数では、東京都が最多であり、大阪府がそれに次いだ。抗HIV薬の処方を受けた患者のうち、同一観察年度に人工透析を受けていた患者数はどの年度でも10名前後であり、多くが血液透析(HD)であった。平成25年度~平成30年度の6年間につき、HIV感染者(抗HIV薬被処方者)の死亡数は76~107人の範囲であった。
研究目的の(2)の結果概要として、日本全国の人数で比較するとNDBと拠点病院調査の人数の差異は拠点病院調査で得られた人数の5%未満であった。1000人以上の定期通院者数を有する都道府県の分布はNDBも拠点病院調査も同様であった。しかし、都道府県別でNDBと拠点病院調査の人数を比較するとその差は±20%程度まで上昇した。
研究目的の(3)の結果概要として、先行研究において、2剤併用療法に対する3剤併用療法は非劣性であることが報告されていたことから、HIVの各重症度(無症状、軽症、AIDs発症)におけるmix populationを分析対象とし、患者推移がプラトーになる時点の費用構造を確認することや、アバカビルの心血管疾患のリスクに関するデータについては先行研究を参考に仮値を設定し、感度分析によってリスクが結果に与える影響についても確認できないか検討することとした。いっぽう、新型コロナウイルス感染症の影響により、HIVの早期発見ができなくなり、発見時にはAIDsが進行している可能性が指摘されている。これらの情報をモデルに組み込めるかについては引き続き検討が必要であることが明らかとなった。
結論
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、HIV/AIDSの検査・治療状況の推計を行い、全国実態調査と比較的良い結果の相同性が認められた。また、HIVを対象とした医療経済評価について、先行研究のレビューに基づき検討し手法を確定した。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
2023-05-01

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,000,000円
(2)補助金確定額
22,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,311,382円
人件費・謝金 2,983,425円
旅費 33,560円
その他 13,671,633円
間接経費 0円
合計 22,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-05-01
更新日
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