文献情報
文献番号
202020016A
報告書区分
総括
研究課題名
血友病HIV感染者に対する癌スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立に関する研究
課題番号
19HB1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
- 大野 達也(群馬大学 重粒子線医学推進機構 重粒子線医学センター)
- 石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所、難治性疾患研究)
- 木内 英(東京医科大学 臨床検査医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成 28 年度~30 年度の FDG-PET による癌スクリーニングでは、68 例中 6 例に癌が見つかり(有病率 5.9%)、罹患率は 2.9/100PY と予想以上に高率であった。しかし、FDG-PET のスクリーニングでは、全国施設への均霑化はできないという課題が残った。一方、C 型肝炎は治癒したものの、既に肝硬変に進行した例も多く、今後肝臓癌の発生が危惧される。特に、血友病患者においては、非観血的治療法を確立する必要性も高い。本研究では、従来の研究で明らかになったこれらの課題を克服する目的で、血友病 HIV 患者に対し以下の5つの研究を実施した。分担 1:癌スクリーニング法の確立。分担 2:消化管の癌スクリーニングと治療。分担 3:HCV 重感染患者の肝細胞癌に対する重粒子線治療の安全性・有効性試験。分担 4:液性因子による癌スクリーニング。分担 5:二重特異性抗体に対応した新規凝固検査の開発。
研究方法
分担1と 2 では、甲状腺・前立腺を含んだ胸腹部 CT、上部内視鏡と必要に応じ下部内視鏡を実施した。さらに、分担 2 では、癌発症と死亡をアウトカムとした累積発生、および、一般人口と比較した HIV 感染者の癌の標準化罹患比(SIR)と標準化死亡比(SMR)を算出した。分担 3 では、先行研究からの継続であるが、血友病患者に対する重粒子線治療の有効性・安全性に関し症例を増やして検証した。分担 4 は、分担研究者の開発した HIV の Vpr を検出する ELISA を用い、血中の Vpr を測定した。分担 5 では、血友病 HIV 感染者で急速に普及する二重特異性抗体における、APTT に代わる新規凝固検査系を確立した。
結果と考察
分担1/2は、2020 年度 68 名を登録、CT57 名、GF50 名、便潜血 51 名、腫瘍マーカー59名の検査を行った。このうち、CT では有所見者 5 名、GF では生検 2 例、便潜血陽性 7名、腫瘍マーカー異常値 3 名であった。異常所見、異常値のあったものに関しては、追加精査など適宜行っている。今回のスクリーニングで初期の HCC が発見され、外科的切除を実施でき、経過良好である。また、スクリーニング対象外ではあるが、口腔癌が 1 例発症している。血友病 HIV 患者のさらなる予後改善のためには、癌スクリーニングの重要性が示された。分担 2 の予後解析では、累積 NADM 発生率は 10 年で 6.1%と見積もられた。一般人口と比較し HIV 感染者で高リスクの癌は、胃癌(SIR 8.4)、大腸癌(SIR 9.3)、肝臓癌(SIR 24.3)、肺癌(SIR 4.9)であった。一般人口と比較した HIV 感染者の標準化死亡比
SMR は 10.1 と有意に高値であり、未だ一般人口と同等レベルではないことが判明した。分担 3 では、2019 年度までにのべ 4 例が登録された。2020 年度の新規登録はないが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、長距離の移動が制限されている可能性もあると考えている。既治療例の経過観察を紹介元の医療機関と連携し行っている。分担 4 では、血友病 HIV 感染者末梢血中の Vpr は、リクルート済の 55 例中 19 例 (34.5%)で陽性を認めた。これは血友病以外の HIV 感染者 691 例中の陽性率約 40%と同等であった。今後は、血中Vpr 濃度の測定と同時に抗 Vpr 抗体も測定を行うことで、癌陽性者と血中 Vpr の関連性を検討する。分担 5 では、現在は基礎検討としてトロンビン生成試験をリファレンスとした合成基質法によるエミシズマブの凝固能想定のための等価式を算出している。今後、この数式を確立して臨床応用を行う。エミシズマブ使用時の観血的手技においても安全に製剤補充が可能となることが期待される。
SMR は 10.1 と有意に高値であり、未だ一般人口と同等レベルではないことが判明した。分担 3 では、2019 年度までにのべ 4 例が登録された。2020 年度の新規登録はないが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、長距離の移動が制限されている可能性もあると考えている。既治療例の経過観察を紹介元の医療機関と連携し行っている。分担 4 では、血友病 HIV 感染者末梢血中の Vpr は、リクルート済の 55 例中 19 例 (34.5%)で陽性を認めた。これは血友病以外の HIV 感染者 691 例中の陽性率約 40%と同等であった。今後は、血中Vpr 濃度の測定と同時に抗 Vpr 抗体も測定を行うことで、癌陽性者と血中 Vpr の関連性を検討する。分担 5 では、現在は基礎検討としてトロンビン生成試験をリファレンスとした合成基質法によるエミシズマブの凝固能想定のための等価式を算出している。今後、この数式を確立して臨床応用を行う。エミシズマブ使用時の観血的手技においても安全に製剤補充が可能となることが期待される。
結論
血友病 HIV 感染者に対する癌スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立に関する研究は、コロナによる中断はあったが、順調に経過している。今回の結果からも、血友病 HIV 感染者
に対する癌スクリーニングの重要性が示唆された。
に対する癌スクリーニングの重要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2021-07-07
更新日
-