文献情報
文献番号
200807003A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣と遺伝子型による2型糖尿病発症リスク予測法の開発
課題番号
H18-ゲノム・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
原 一雄(東京大学医学部附属病院 医療評価・安全・研修部)
研究分担者(所属機関)
- 門脇 孝(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
39,996,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
糖尿病は細小血管症によるQOL(生活の質)の低下と大血管症による心筋梗塞・脳卒中発症のリスク増大を介して、日本人の健康寿命を短縮させる主要な問題の一つである。本研究では、日本人の2型糖尿病遺伝素因を明らかにすることによって2型糖尿病ハイリスク者のスクリーニング法開発につながる基礎的データを収集することが目的である。
研究方法
全ゲノム解析によって同定した9か所の2型糖尿病感受性遺伝子座について国際HapMap projectによる標識SNP(single nucleotide polymorphism)の情報と、複数の独立した糖尿病・糖代謝正常者のDNAパネルを利用して、2型糖尿病と相関を示すSNPを検出し、並行して遺伝子改変動物の表現型を解析することによって2型糖尿病感受性遺伝子を明らかにする。また、諸外国で報告された糖尿病感受性遺伝子や機能的候補遺伝子についても相関解析によって、日本人において2型糖尿病感受性遺伝子として一定の役割を担っているか否かを検討する。
結果と考察
欧米人で明らかになったHHEX遺伝子多型などの2型糖尿病感受性遺伝子が、日本人においても糖尿病の発症リスクを同程度まで上昇させているものの、リスクを上昇させるアリルの頻度は欧米人と日本人とで極めて異なっていることを明らかにした。また、染色体11番の領域で2型糖尿病と相関する新規の遺伝子多型を見出していたが、糖尿病のリスクを上昇させるアリル保持者では非保持者に比べて、ヒト組織における当該遺伝子の発現が低下しており、更に、当該遺伝子欠損マウスは高脂肪食下において膵島面積が野生型に比較して小さいこと、ブドウ糖負荷試験におけるインスリン分泌能が野生型に比べて低下していることから、本遺伝子産物の量的低下がインスリン分泌低下を介して糖尿病の発症リスクを上昇させていることが示唆された。
結論
欧米人で見出された2型糖尿病感受性遺伝子の中で複数の遺伝子が日本人においても2型糖尿病のリスクを上昇させていることが明らかになったが、集団全体に与える影響は欧米人における影響と異なっていることも同時に明らかになった。今後は11番染色体の新規糖尿病感受性遺伝子も含め、これまで日本人で明らかになった糖尿病感受性遺伝子多型の情報を統合した糖尿病発症リスク予測式を本格的に構築していくことが必要であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
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