致死性遺伝性不整脈疾患の遺伝子診断と臨床応用

文献情報

文献番号
200807002A
報告書区分
総括
研究課題名
致死性遺伝性不整脈疾患の遺伝子診断と臨床応用
課題番号
H18-ゲノム・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
清水 渉(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 稔(滋賀医科大学医学部 呼吸循環器内科)
  • 小川 聡(慶應義塾大学医学部 呼吸循環器内科 )
  • 相澤義房(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 循環器内科)
  • 草野研吾(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環器内科)
  • 山岸正和(金沢大学大学院 医学系研究科 循環器内科)
  • 蒔田直昌(北海道大学大学院 医学研究科 循環病態内科学)
  • 田中敏博(独立行政法人理化学研究所 遺伝子多型研究センター)
  • 赤尾昌治(京都大学大学院 医学研究科 循環器内科 )
  • 宮本恵宏(国立循環器病センター  臨床研究開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
35,605,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 先天性QT延長症候群(LQTS)、Brugada症候群、薬剤誘起性LQTS他の二次性LQTSなどの致死性遺伝性不整脈疾患について、遺伝子型、遺伝子変異、あるいは多型特異的な患者の管理と治療法の選択と開発、すなわちテーラーメード医療の実現を目指す。(2) 同疾患の分子生物学的および電気生理学的な病態解明を行う。(3) 同疾患で、既報の原因遺伝子に変異が同定されていない症例について、新たな原因遺伝子(遺伝子型)を同定する。
研究方法
(1) 遺伝性不整脈疾患の遺伝子スクリーニングを施行し、先天性LQTSとBrugada症候群では、匿名化の上で遺伝情報と臨床情報を多施設登録してデータベース化し、遺伝子型、遺伝子変異、多型などの遺伝情報と、表現型である臨床病態や治療に対する反応性の違いなどとの関係を詳細に検討する。 (2) 同定された遺伝子変異、多型の電気生理学的機能解析および薬剤感受性試験、遺伝性不整脈モデルを用いた基礎的研究によって分子生物学的および電気生理学的な病態を解明する。 (3) 多施設データベースをもとに、既報の原因遺伝子に変異が同定されない遺伝性不整脈疾患において、候補遺伝子のスクリーニングやSNP解析を行う。
結果と考察
(1) 全体研究として、平成21年3月現在、先天性LQTSでは遺伝子型の同定された616例 (LQT1 280例、LQT2 244例、LQT3 65例、LQT4 1例、LQT5 3例、LQT7 22例、LQT8 1例)、Brugada症候群では254例 (SCN5A陽性63例、SCN5A陰性191例) の登録およびデータベース入力を完了した。これをもとに、遺伝情報と臨床情報の関連を検討し成果を報告したが、さらに日本人独自の遺伝子型、遺伝子変異、あるいは多型特異的な患者の管理と治療法の選択、開発(テーラーメイド医療の実現)をめざす予定である。(2) 各種遺伝性不整脈疾患で、既報の原因遺伝子上に新規の遺伝子変異を同定し、その電気生理学的、臨床的特徴を報告した。(3) 先天性および二次性LQTS、Brugada症候群でこれまで報告のない遺伝子に変異(新規の遺伝子型)を同定した。
結論
先天性LQTSとBrugada症候群症例において、遺伝情報と臨床情報の多施設登録とデータベース化を完了し、遺伝情報と臨床情報の関連を検討し成果を報告した。今後さらにテーラーメード医療の実現を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200807002B
報告書区分
総合
研究課題名
致死性遺伝性不整脈疾患の遺伝子診断と臨床応用
課題番号
H18-ゲノム・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
清水 渉(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 稔(滋賀医科大学医学部 呼吸循環器内科)
  • 小川 聡(慶應義塾大学医学部 呼吸循環器内科)
  • 相澤義房(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 循環器内科)
  • 大江 透(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環器内科)
  • 草野研吾(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環器内科)
  • 山岸正和(金沢大学大学院 医学系研究科 循環器内科)
  • 古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所 生体情報薬理分野)
  • 蒔田直昌(北海道大学大学院 医学研究科 循環器病態内科学)
  • 田中敏博(独立行政法人理化学研究所 遺伝子多型研究センター )
  • 赤尾昌治(京都大学大学院 医学研究科 循環器内科)
  • 宮本恵宏(国立循環器病センター 臨床研究開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 先天性QT延長症候群(LQTS)、Brugada症候群、薬剤誘起性LQTS他の二次性LQTSなどの致死性遺伝性不整脈疾患について、遺伝子型、遺伝子変異、あるいは多型特異的な患者の管理と治療法の選択と開発(テーラーメード医療の実現)を目指す。(2) 同疾患の分子生物学的および電気生理学的な病態解明を行う。(3) 同疾患で、新たな原因遺伝子(遺伝子型)を同定する。
研究方法
(1) 遺伝性不整脈疾患の遺伝子スクリーニングを施行し、先天性LQTSとBrugada症候群では、匿名化の上で遺伝情報と臨床情報を多施設登録してデータベース化し、遺伝子型、遺伝子変異、多型などの遺伝情報と、表現型である臨床病態や治療に対する反応性の違いなどとの関係を検討する。 (2) 同定された遺伝子変異、多型の電気生理学的機能解析および薬剤感受性試験、遺伝性不整脈モデルを用いた基礎的研究によって分子生物学的および電気生理学的な病態を解明する。 (3) 多施設データベースをもとに、既報の原因遺伝子に変異が同定されない遺伝性不整脈疾患において、候補遺伝子のスクリーニングやSNP解析を行う。
結果と考察
(1) 全体研究として、平成18年度から20年度の3年間に、先天性LQTSでは遺伝子型の同定された616例 (LQT1 280例、LQT2 244例、LQT3 65例、LQT4 1例、LQT5 3例、LQT7 22例、LQT8 1例)、Brugada症候群では254例 (SCN5A陽性63例、SCN5A陰性191例) の登録およびデータベース入力を完了した。これをもとに、遺伝情報と臨床情報の関連を検討し成果を報告した。今後、先天性LQTS患者のデータベースはWeb上などの公開を検討中である。 (2) 各種遺伝性不整脈疾患で、既報の原因遺伝子上に新規の遺伝子変異を同定し、その電気生理学的、臨床的特徴を報告した。(3) 先天性および二次性LQTS、Brugada症候群でこれまで報告のない遺伝子に変異(新規の遺伝子型)を同定した。
結論
先天性LQTSとBrugada症候群症例において、遺伝情報と臨床情報の多施設登録とデータベース化を完了し、遺伝情報と臨床情報の関連を検討し成果を報告した。今後さらに、日本人独自の遺伝子型、遺伝子変異、あるいは多型特異的な患者の管理と治療法の選択、開発(テーラーメイド医療の実現)をめざす予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200807002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
致死性遺伝性不整脈疾患である先天性QT延長症候群(LQTS)では、遺伝子型の同定された616例 (LQT1 280例、LQT2 244例、LQT3 65例、LQT4 1例、LQT5 3例、LQT7 22例、LQT8 1例)、またBrugada症候群では254例 (SCN5A変異陽性63例、SCN5A変異陰性191例) の日本国内多施設登録とデータベース入力を完了した。また、先天性および薬剤などによる二次性LQTS、Brugada症候群で、報告のない遺伝子に変異(新規の遺伝子型)を同定した。
臨床的観点からの成果
致死性遺伝性不整脈の代表的疾患である先天性QT延長症候群(LQTS)およびBrugada症候群において、多施設登録データベースをもとに、遺伝情報と臨床情報の関連を検討し成果を報告した。今後、先天性LQTS患者のデータベースはWeb上などの公開を検討中である。本研究の成果は、今後、日本人独自の遺伝子型、遺伝子変異、あるいは多型特異的な患者の管理と治療法の選択、開発、すなわちテーラーメイド医療の実現につながるものと期待される。
ガイドライン等の開発
日本循環器学会、日本心臓病学会、日本心電学会、日本不整脈学会による「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン」(2007年度版、班長 大江 透)、 Circ J 2007;71 (Suppl VI):1205-1253における、先天性QT延長症候群とBrugada症候群の植込み型除細動器の適応決定に、本研究の成果が反映された。
その他行政的観点からの成果
致死性遺伝性不整脈の代表的疾患である先天性QT延長症候群(LQTS)の遺伝子診断率は50%から60%である。本研究の成果などにより、特に頻度の多いLQT1、LQT2、LQT3の3つの遺伝子型では、遺伝子型と表現型(臨床病態)の関連が検討され、すでに遺伝子型に基づいた生活指導、治療が実施されている。これらの実績が評価され、先天性LQTS患者に対する遺伝子診断は、平成20年4月1日付で保険診療に承認された。
その他のインパクト
本研究の成果は、平成20年度厚生労働科学研究費補助金 ヒトゲノムテーラーメード研究推進事業の研究成果発表会 「ヒトゲノムテーラーメード研究の成果と今後」 (日時: 平成21年3月5日、会場: 砂防会館別館1階)において発表した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
121件
その他論文(和文)
97件
その他論文(英文等)
11件
学会発表(国内学会)
111件
学会発表(国際学会等)
92件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Bezzina CR, Shimizu W, Yang P, et ai.
Common sodium channel promoter haplotype in Asian subjects underlies variability in cardiac conduction
Circulation , 113 , 338-344  (2006)
原著論文2
Tan HL, Bardia A, Shimizu W, et al.
Genotype-specific onset of arrhythmias in congenital long QT syndrome: Possible therapy implications
Circulation , 114 , 2096-2103  (2006)
原著論文3
Aiba T, Shimizu W, Hidaka I, et al.
Cellular basis for trigger and maintenance of ventricular fibrillation in the Brugada syndrome model: High resolution optical mapping study
J Am Coll Cardiol , 47 , 2074-2085  (2006)
原著論文4
Shimizu W, Matsuo K, Kokubo Y, et al.
Sex hormone and gender difference. - Role of testosterone on male predominance in Brugada syndrome
J Cardiovasc Electrophysiol , 18 , 415-421  (2007)
原著論文5
Moss AJ, Shimizu W, Wilde AAM, et al.
Clinical aspects of type-1 long-QT syndrome by location, coding type, and biophysical function of mutations involving the KCNQ1 gene
Circulation , 115 , 2481-2489  (2007)
原著論文6
Miyamoto K, Yokokawa M, Tanaka K, et al.
Diagnostic and prognostic value of type 1 Brugada electrocardiogram at higher (third or second) V1 to V2 recording in men with Brugada syndrome
Am J Cardiol , 99 , 53-57  (2007)
原著論文7
Ohgo T, Okamura H, Noda T, et al.
Acute and chronic management in patients with Brugada syndrome associated with electrical storm of ventricular fibrillation
Heart Rhythm , 4 , 695-700  (2007)
原著論文8
Yokokawa M, Noda T, Okamura H, et al.
Comparison of long-term follow-up of electrocardiographic features in Brugada syndrome between the SCN5A-positive probands and the SCN5A-negative probands
Am J Cardiol , 100 , 649-655  (2007)
原著論文9
Ohno S, Zankov DP, Yoshida H, et al.
N- and C-terminal KCNE1 mutations cause distinct phenotypes of long QT syndrome
Heart Rhythm , 4 , 332-340  (2007)
原著論文10
Tsuji K, Akao M, Ishii TM, et al.
Mechanistic basis for the pathogenesis of long QT syndrome associated with a common splicing mutation in KCNQ1 gene
J Moll Cell Cardiol , 42 , 662-669  (2007)
原著論文11
Tani Y, Miura D, Kurokawa J, et al.
T75M-KCNJ2 mutation causing Andersen-Tawil syndrome enhances inward rectification by changing Mg(2+) sensitivity
J Mol Cell Cardiol , 43 , 187-196  (2007)
原著論文12
Yada H, Murata M, Shimoda K, et al.
Dominant negative suppression of Rad leads to QT prolongation and causes ventricular arrhythmias via modulation of L-type calcium current in the heart
Circ Res , 101 , 69-77  (2007)
原著論文13
Makita N, Sumitomo N, Watanabe I, et al.
Novel SCN5A mutation (Q55X) associated with age-dependent expression of Brugada syndrome presenting as neurally mediated syncope
Heart Rhythm , 4 , 516-519  (2007)
原著論文14
Nagaoka I, Shimizu W, Itoh H, et al.
Mutation site dependent variability of cardiac events in Japanese LQT2 form of congenital long-QT syndrome
Circ J , 72 , 694-699  (2008)
原著論文15
Makita N, Behr E, Shimizu W, et al.
The E1784K mutation in SCN5A is associated with mixed clinical phenotype of type 3 long QT syndrome
J Clin Invest , 118 , 2219-2229  (2008)
原著論文16
Sakaguchi T, Shimizu W, Itoh H, et al.
Age-related triggers for life-threatening arrhythmia in the genotyped long-QT syndrom
J Cardiovasc Electrophysiol , 19 , 794-799  (2008)
原著論文17
Wang D, Crotti L, Shimizu W, et al.
Malignant perinatal variant of long-QT syndrome caused by a profoundly dysfunctional cardiac sodium channel mutation
Circ Arrhythmia and Electrophysiol , 1 , 370-378  (2008)
原著論文18
Kusano KF, Taniyama M, Nakamura K, et al.
Atrial fibrillation in patients with Brugada syndrome: Relationship of gene mutation, electrophysiology and clinical backgrounds
J Am Coll Cardiol , 51 , 1169-1175  (2008)
原著論文19
Makiyama T, Akao M, Shizuta S, et al.
A novel SCN5A gain-of-function mutation M1875T associated with familial atrial fibrillation
J Am Coll Cardiol , 52 , 1327-1334  (2008)
原著論文20
Ohno S, Toyoda F, Zankov D, et al.
Novel KCNE3 mutation reduces repolarizing potassium current and causes long QT syndrome
Hum Mutat , 30 , 557-563  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-