MSMにおける予防啓発活動の評価手法の確立及びPDCAサイクル構築のための研究

文献情報

文献番号
202020010A
報告書区分
総括
研究課題名
MSMにおける予防啓発活動の評価手法の確立及びPDCAサイクル構築のための研究
課題番号
H30-エイズ-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 健山 正男(琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座 分子病態感染症学分野)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構九州医療センター AIDS/HIV総合治療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本に居住するMSMを対象とした予防啓発活動における地域間の連携をもとに新たな取り組みのプランニングを行い、展開する基盤を整備することである。また、PDCAサイクルを導入することによって、日本のMSMの予防啓発の浸透度を把握し、予防啓発活動を可視化し、アカウンタビリティを向上させることも含まれる。
新たな取り組みには、現行の予防啓発活動とその目的との整合性が重要であり、CBOの脆弱な基盤を焦点化させることが必要である。
PDCAサイクルの中でプログラム評価(参加型評価)の手法を活用した包括的な評価と、予防啓発活動のアカウンタビリティの向上は、CBOの基盤の安定化につながると考える。
研究方法
本研究ではMSM対象の予防啓発活動における地域間連携をもとに新たな活動計画を策定し、展開基盤を整備する。また、PDCAサイクルを導入することで、日本全体のMSMの予防啓発の浸透度を把握し、予防啓発活動を可視化し、アカウンタビリティ向上を目的とし、以下の研究を実施する。研究1 予防啓発活動におけるPDCAサイクルシステムの開発と機能的展開に関する研究、研究2予防行動に関する量的データ収集および包括的分析からの評価、研究3 大阪のMSMにおけるHIV感染動向の把握に関する研究‐大阪ゲイコホートの継続、研究4 沖縄に流入する外国人MSMの予防行動に関する研究、研究5 日本のMSMにおけるHIV感染動向の把握に関する研究‐HIV感染発生動向を活用した分析、研究6 医療者による新規患者・診療動向からの評価。研究3、研究4、研究5の成果より、各地域および日本全体のMSMにおけるHIV感染症有病率や罹患率を把握し、予防啓発活動の評価として班会議等で還元する体制を構築する。
結果と考察
本年度、研究1では各地域のCBOに対し、コミュニティや検査機会の状況についてヒアリングを行い、まとめた。どの地域も検査機会が激減しており、介入の中心的な対象であったゲイ向け商業施設も、休業や時短営業が多く、これまで行ってきた紙資材のアウトリーチができないことも多かった。「HIV感染予防のためのセックス前の服薬(PrEP)」や「HIVに感染したかもしれないときの予防服薬(PEP)」に関する上記のような情報について、よく知っていた割合は11.1%、10.7%で有意差はみられず、PrEPをしたことがあると回答した割合は10.6%、12.0%であった。これまでのHIV抗体検査受検経験は、36.0%、35.3%で有意差はみられず、過去1年間の受検経験は17.3%から15.9%であった。
また研究2で治療薬の進歩の認知は2019年調査では88.6%、2020年調査では94.1%であり、U=Uの認知は2019年調査では74.8%、2020年調査では83.1%であった。コミュニティセンター来場者における治療薬の進歩やU=Uといった最新情報の認知度は2020年には8割を超えていた。U=Uといった新しい知識は浸透が進んでいることが考えられた。
結論
新型コロナ感染症の拡大によりコミュニティセンターの活動にも影響が大きく出てきているが、これらの予防啓発の取り組みを低下させない工夫が必要となる。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202020010B
報告書区分
総合
研究課題名
MSMにおける予防啓発活動の評価手法の確立及びPDCAサイクル構築のための研究
課題番号
H30-エイズ-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 健山 正男(琉球大学大学院医学研究科感染病態制御学講座 分子病態感染症学分野)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構九州医療センター AIDS/HIV総合治療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本に居住するMSMを対象とした予防啓発活動における地域間の連携をもとに新たな取り組みのプランニングを行い、展開する基盤を整備することである。また、PDCAサイクルを導入することによって、日本のMSMの予防啓発の浸透度を把握し、予防啓発活動を可視化し、アカウンタビリティを向上させることも含まれる。
新たな取り組みには、現行の予防啓発活動とその目的との整合性が重要であり、CBOの脆弱な基盤を焦点化させることが必要である。
PDCAサイクルの中でプログラム評価(参加型評価)の手法を活用した包括的な評価と、予防啓発活動のアカウンタビリティの向上は、CBOの基盤の安定化につながると考える。
研究方法
本研究ではMSM対象の予防啓発活動における地域間連携をもとに新たな活動計画を策定し、展開基盤を整備する。また、PDCAサイクルを導入することで、日本全体のMSMの予防啓発の浸透度を把握し、予防啓発活動を可視化し、アカウンタビリティ向上を目的とし、以下の研究を実施する。研究1 予防啓発活動におけるPDCAサイクルシステムの開発と機能的展開に関する研究、研究2予防行動に関する量的データ収集および包括的分析からの評価、研究3 大阪のMSMにおけるHIV感染動向の把握に関する研究‐大阪ゲイコホートの継続、研究4 沖縄に流入する外国人MSMの予防行動に関する研究、研究5 日本のMSMにおけるHIV感染動向の把握に関する研究‐HIV感染発生動向を活用した分析、研究6 医療者による新規患者・診療動向からの評価。研究3、研究4、研究5の成果より、各地域および日本全体のMSMにおけるHIV感染症有病率や罹患率を把握し、予防啓発活動の評価として班会議等で還元する体制を構築する。
結果と考察
本研究ではMSM対象の予防啓発活動の持続的な展開基盤を整備し、CBOと連携した日本全体のMSMにおける予防の浸透度から、アカウンタビリティの向上を目指した。
最終年度はコロナ禍の影響で多くの研究計画の遂行が困難となった。コミュニティベースの予防介入は、対象となる商業施設や検査機会が自粛したり、休業することで、ネットワークの有様が変化してきていると考えられる。一方でこれまでの予防啓発の成果は商業施設を利用するコアな層に届いており、検査行動は促進されていることが明らかとなった。届いていない層の中には商業施設を利用している周辺の層、そもそも商業施設を利用していない層にわけられるが、その層に介入効果を広げるためにはCBOの脆弱な部分を解消する必要がある。本研究ではMSM ALL JAPAN.のネットワークを形成することで、その部分の解消を試みたが、コロナ禍の影響で底上げするまでには至らなかったと考える。ただ、これまで参加していなかった地域の新たなネットワークの参加があり、コミュニティセンターのない地域も含まれる等、今後のこれらのサイクルが適切に運営されることを期待できる。
一方で、PrEP使用者の増加やコンドームの使用行動は低下していること、外国人への予防啓発はいまだ不十分な現状であることも明らかとなり、コロナ禍の影響で、これまで介入できていた層への継続的な介入も困難な場面もあった。これらは新たな課題をもたらしていると言える。
結論
本研究により、日本の予防啓発活動の状況を把握することが可能な資料が揃ったが、新型コロナウイルス感染症の影響で班会議の開催が困難であり、共有や還元の仕組みには至らなかった。3年間の研究成果として『MSM ALL JAPAN.』の枠組みで予防啓発活動に還元できる可能性のある体制を整備が進み、全てのコミュニティセンターおよびコミュニティセンターのない地域を含み9地域の枠組みができた。
今後はこの枠組みを活用し、日本に居住するMSMを対象とした予防啓発活動における地域間の連携をもとに新たな取り組みを進めることが可能であり、その活動を可視化できる体制を整えていく必要があると考える。『MSM ALL JAPAN.』の枠組みで状況を共有でき、新型コロナウイルス感染症の影響によって各地域の検査機会が後退していることから、全国でMSMを対象とした新たな検査機会の取り組みが開始されている。そのため本研究による枠組みは一部有効に機能したと考える。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202020010C

収支報告書

文献番号
202020010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 103,324円
人件費・謝金 1,875,412円
旅費 0円
その他 10,021,264円
間接経費 3,000,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
-