完全ゲノムタイリングアレーを用いたゲノム病解析研究

文献情報

文献番号
200807001A
報告書区分
総括
研究課題名
完全ゲノムタイリングアレーを用いたゲノム病解析研究
課題番号
H18-ゲノム・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松本 直通(横浜市立大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 直樹(九州メディカルサイエンス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトゲノムを隙間無く完全にカバーする完全ゲノムタイリングアレーを開発し、これを用いてヒト神経精神発達に重要な影響を及ぼすヒトゲノムの微細構造異常(欠失・重複・転座)を網羅的に解析し、同定されたゲノム異常から神経精神疾患関連遺伝子を単離することを目的とする。
研究方法
①完全ゲノムタイリングアレーの解析条件の検討:最も感度の良くコピー数検出が可能な至適条件を決定する。
②オリゴDNAアレーの導入:Affymetrix社のGeneChip 250K およびGeneChip 6.0を導入し、疾患ゲノムを解析し、BACアレー解析結果との比較検討を行う。
③症例の集積とゲノム解析:遺伝医学コンソーシアムで形成されたネットワークを中心に、各種疾患の症例を集積を継続する。ゲノムDNAはタイリングアレーあるいは高密度オリゴDNAアレーを用いて解析を行う。コピー数異常部位は定量PCRあるいはFISH解析にて検証する。
④疾患の責任遺伝子単離:疾患ゲノム解析で同定された病的ゲノムコピー数異常領域から候補遺伝子を選出し同様の疾患群を対象に遺伝子変異の特定を行う。
結果と考察
①完全ゲノムタイリングアレーを用いた解析系の完成:異常検出の成績が安定した最適プロトコールを作成した。
②オリゴDNAアレーの導入:Affymetrix社のGeneChip 250KとGeneChip 6.0、BACタイリングアレーのと比較を行ったが解析能力には、大差無かった。
③症例の集積と解析:既に複数の遺伝性疾患で20-40例程度の集積と解析が進行し疾患に関連すると想定されるゲノム異常領域が同定されている。
④疾患遺伝子の単離:EIEE症例の1例の微細欠失から責任遺伝子であるSTXBP1が単離されNature Geneticsに発表した(2008)。さらに髄鞘化遅延を伴うWest症候群に於いて新規責任遺伝子の単離に成功し、現在遺伝子変異の機能的意義について解析を行っている(未発表のため詳述は控える)。
結論
本研究はヒトゲノムを隙間無く完全にカバーする完全ゲノムタイリングアレーを開発し、これを用いてヒト神経精神発達に重要な影響を及ぼすヒトゲノムの微細構造異常(欠失・重複・転座)を網羅的に解析し、同定されたゲノム異常から神経精神疾患関連遺伝子を単離することを目的として開始、次年度に完全ゲノムタイリングアレーを完成させ、最終年度までに2疾患で責任遺伝子単離にも成功しているなど順調に進行している。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200807001B
報告書区分
総合
研究課題名
完全ゲノムタイリングアレーを用いたゲノム病解析研究
課題番号
H18-ゲノム・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松本 直通(横浜市立大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 直樹(九州メディカルサイエンス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトゲノムを隙間無く完全にカバーする完全ゲノムタイリングアレーを開発し、これを用いてヒト神経精神発達に重要な影響を及ぼすヒトゲノムの微細構造異常(欠失・重複・転座)を網羅的に解析し、同定されたゲノム異常から神経精神疾患関連遺伝子を単離することを目的とする。
研究方法
①完全ゲノムタイリングアレーの作製:米国CHORIから供与を受けた完全ヒトゲノムタイリングBAC DNA(BAC 32,891個)を鋳型にPCR増幅と精製後インクジェット法でスポッティングする(委託外注)。
②オリゴDNAアレーの導入:Affymetrix社のGeneChip 250K およびGeneChip 6.0を導入し、疾患ゲノムを解析し、BACアレー解析結果との比較検討を行う。
③症例の集積とゲノム解析:各種の遺伝性疾患の症例ゲノムを集積する。ゲノムDNAはタイリングアレーあるいは高密度オリゴDNAアレーを用いて解析する。
④疾患の責任遺伝子単離:疾患ゲノム解析で同定された病的ゲノムコピー数異常領域から候補遺伝子を選出し同様の疾患群を対象に遺伝子変異の特定を行う。
結果と考察
①完全ゲノムタイリングアレーを用いた解析系の完成:平成19年10月に完全ゲノムタイリングアレーが完成し異常検出検出力の安定したプロトコールを作成した。
②オリゴDNAアレーの導入:Affymetrix社のGeneChip 250KとGeneChip 6.0を導入しBACタイリングアレーと比較検討し解析能力に大差無いことが判明した。
③症例の集積と解析:各種の多彩な疾患の症例が、20-50例程度集積し順次解析を行っている。複数の疾患に関連ゲノム異常領域が同定されている。
④疾患遺伝子の単離:EIEE症例の1例の微細欠失から責任遺伝子であるSTXBP1を単離しNature Geneticsに発表した(2008)。診断法は、平成19年度に国内特許出願、平成20年度に外国特許出願(PTC出願)を行った。さらに髄鞘化遅延を伴うWest症候群に於いて新規責任遺伝子の単離に成功し、現在遺伝子変異の機能的意義について解析を行っている(未発表のため詳述は控える)。
結論
本研究はヒトゲノムを隙間無く完全にカバーする完全ゲノムタイリングアレーを開発し、これを用いてヒト神経精神発達に重要な影響を及ぼすヒトゲノムの微細構造異常(欠失・重複・転座)を網羅的に解析し、同定されたゲノム異常から神経精神疾患関連遺伝子を単離することを目的として開始、次年度に完全ゲノムタイリングアレーを完成させ、最終年度までに2疾患で責任遺伝子単離にも成功しているなど順調に進行している。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200807001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒトゲノムを完全に被覆するBACタイリングアレーを作成し商業ベースオリゴアレーと比較検討し性能に大差ないことを確認した。難治性てんかん性脳症の最重症型である大田原症候群の責任遺伝子STXBP1の単離に世界に先駆けて成功し、Nature Genetに報告した(2008)。
臨床的観点からの成果
脳奇形を伴わない潜在性大田原症候群に於いて本邦症例の約30%でSTXBP1変異を認めている。今後症例を集積していくことで遺伝子型・臨床型の関連が明らかになりこれまで長らく原因が不明であった年齢依存性てんかん性脳症の大きな進展につながると期待される。
ガイドライン等の開発
ガイドラインは作成していないが、本邦正常人ゲノムのCopy Number Variationカタログを作成し、今後の疾患ゲノム解析に於いて正常範囲のCNVと病的CNVを判断する優れたカタログとなっている。
その他行政的観点からの成果
遺伝的解析の出発点をマイクロアレー解析を行うことで得ることが出来ることを実証した。よってマイクロアレーは臨床的にデジタル染色体解析としてのツールのみならず、探索型研究の有力なツールであることを示した。
その他のインパクト
大田原症候群の遺伝子単離は、日本経済新聞(2008年5月12日朝刊・科学面)、SANKEI EXPRESS(2008年5月12日5面)、神奈川新聞 (2008年5月12日朝刊24面)、中国新聞(2008年5月12日)、茨城新聞 (2008年5月12日朝刊)、信濃毎日新聞 (2008年5月12日朝刊)等合計21件の新聞報道と多数のWebニュースで取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
47件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
招聘レビュー。
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
一般市民向け成果発表会で発表。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe Y, Sakai H, Nishimura A, et al.
Paternal somatic mosaicism of a TGFBR2 mutation transmitting to an affected son with Loeys-Dietz syndrome.
Am J Med Genet A , 146 , 3070-3074  (2008)
原著論文2
Mizuguchi T, Hashimoto R, Itokawa M, et al.
Microarray comparative genomic hybridization analysis of 59 patients with schizophrenia.
J Hum Genet , 53 , 914-919  (2008)
原著論文3
Saitsu H, Kato M, Mizuguchi T, et al.
De novo mutations in the gene encoding STXBP1 (MUNC18-1) cause early infantile epileptic encephalopathy.
Nat Genet , 40 (6) , 782-788  (2008)
原著論文4
Mochizuki J, Saitsu H, Mizuguchi M, et al.
Alu-related 5q35 microdeletions in Sotos syndrome.
Clin Genet , 74 , 384-389  (2008)
原著論文5
Hiraki Y, Moriuchi M, Okamoto N, et al.
Craniosynostosis in a patient with a de novo 15q15-q22 deletion.
Am J Med Genet A , 146 (11) , 1462-1465  (2008)
原著論文6
Hiraki Y, Okamoto N, Ida T, et al.
Two New Cases of Pure 1q Terminal Deletion Presenting With Brain Malformations.
Am J Med Genet A , 146 , 1241-1247  (2008)
原著論文7
Sato K, Iwakoshi M, Shimokawa O, et al.
Angelman syndrome caused by an identical familial 1487-kb deletion.
Am J Med Genet A , 143 (1) , 98-101  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-