文献情報
文献番号
202020008A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究
課題番号
H30-エイズ-指定-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
- 久慈 直昭(東京医科大学 産科婦人科)
- 山内 哲也(社会福祉法人武蔵野会リアン文京)
- 安尾 有加(下司 有加)(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
- 佐保 美奈子 (井端 美奈子)(大阪府立大学 大学院看護学研究科)
- 武田 丈(関西学院大学 人間福祉学部)
- 江口 有一郎(佐賀大学 医学部附属病院肝臓疾患センター)
- 大北 全俊(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
46,529,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成30年度の後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の改正及びこれまでの先行研究の成果を踏まえ、本研究ではHIV感染症及びその合併症で未解決の課題を明らかにし、その対策を検討することを目的とする。
研究方法
研究1 主要英文誌や国内外学術集会等から得た新知見および他国のガイドラインを総合的に検討し、わが国に適した抗HIV治療ガイドラインを改訂する。 研究2 洗浄精液による不妊治療技術の改善に加え、精液中の主にHIV感染リンパ球量の定量測定系を構築する。 研究3 1)社会福祉施設従事者対象に改訂マニュアルを用いて実施した研修後のアンケート調査から受入れ支援策を検討し、既に受け入れている福祉施設職員を対象に質的調査を行う。 2)全国登録訪問看護ステーションへ郵送による無記名記述式調査を実施する。 3)HIV看護ボトムアップ研修を実施し前後で無記名自記式質問紙調査を実施する。 4)前年度実施のインタビュー結果を分析し、エイズ拠点病院、地域医療機関及び管理医師の円滑な連携の具体的方法を検討する。 研究4 1)SNS「Twitter」を用いたキャンペーンプロジェクトで反応があったユーザーから抽選で無料郵送式HIV検査キットを送付し反応を解析する。 2)FMラジオで毎週HIV/AIDS啓発レギュラー番組を放送し、番組HPを用い放送音源のアーカイブ・意識調査や理解度チェックなどを実施し、併せてイベント等でも意識調査を実施し、集計結果を解析する。 3)HIV感染症に関する意識調査を行い、国民の知識の状況を把握し、その結果に基づき、啓発すべき内容、対象等に応じた、効果的啓発手法を検討し、実践する。 研究5 U=Uを含む倫理的課題の関連文献(論文、報道記事など)の調査及び分析を行う。 研究6 既存の薬剤データを対象に相互作用判定データベースを構築し、判定システム設計、評価用アプリケーションを構築する。 (倫理面への配慮)調査研究等においては患者の個人情報の取り扱いには十分留意をし、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守する。
結果と考察
研究1 本年度も新知見を盛り込んだ抗HIV治療ガイドラインを専門医による委員会で改訂し、公開した。 研究2 令和2年の11ヶ月で15名に精液洗浄を実施し、採卵48周期、胚移植29周期で顕微授精治療の妊娠率は13.8%であった。 研究3 1)①社会福祉施設従事者対象に研修マニュアル動画および、全国600福祉施設にe-ラーニングサイトを配信した。同上にオンラインで実施したHIV/AIDS研修後アンケートで受入れ支援策を検討し、HIV陽性者を受け入れている福祉施設職員への質的調査のデータを分析。 2)郵送した5914事業所の2140事業所から回答(回収率36.1%)があった。受け入れ経験が11%、現在受け入れが5%で、受け入れ可能 20%、準備が整えば可能 56%、不可能 21%、無回答 3%であった。受け入れ困難な理由に“経験不足”があった。 3)(公社)大阪府看護協会との協働で累積受講者数は434名(他府県:21%)であった。 4)地域医療機関の医療者の大半は、エイズ拠点病院の医療者と直接連携を取るなど医療面での支援を望んでおり、地域におけるHIV陽性者支援は長期におよびニーズも多岐にわたっていた。 研究4 1)現時点でのキャンペーンの反応は①全視聴者数(のべ):3,814,943名、②キャンペーン視聴ユーザー: 1,984,211人、③キャンペーンツイート経由で「大阪HIV検査.jp」公式アカウントに遷移した数等のエンゲージメント数: 237,942名、④リアクション数:8,039であった。 2)公式HPで月平均約5,400のPV数(PV数は前年と比べて微減)であった。 3)国民向け過去の大規模調査(世論調査を含む)等の内容を精査し、意識調査項目を検討し、平成31年1月、令和2年12月の2回インターネット調査を実施した。地域におけるマルチセクター連携による啓発活動:世界エイズデー・キャンペーン「大阪エイズウィークス」を主導した。YouTubeでの配信を目的とした動画を作成、公開した。 研究5 U=Uに関する文献調査からU=Uの医療・公衆衛生及び社会的インパクトに関する調査報告を収集した。日本の報道記事調査については社会学的分析により計量的に傾向を析出した。 研究6 服薬支援管理システムで取り扱う相互作用判定のためのデータベースを用い、Windows 10のタブレットモードでの動作を前提とした「相互作用データベース」を設計しプロトタイプ版を構築した。それぞれの研究テーマ毎に課題を抽出でき、多くは今後も研究の遂行が必要と考えられた。
結論
HIV感染症の治療と関連分野で課題を抽出し、ほぼ当初の計画通りに研究を遂行できた。
公開日・更新日
公開日
2021-07-05
更新日
-