文献情報
文献番号
200806014A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞または幹細胞を用いた再生ヒト角膜内皮移植の実用化
課題番号
H20-再生・若手-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
三村 達哉(東京大学医学部附属病院 )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦の角膜移植手術におけるドナー角膜不足は深刻であり、ドナー角膜を必要としない、人工角膜の開発に期待がかかっている。角膜上皮混濁に対しては、既に自己の健常な部分より採取して培養した角膜上皮細胞、結膜上皮細胞、あるいは口腔粘膜上皮細胞のシートによる眼表面再生医療が既に行われている。しかし、角膜混濁を来たす症例は角膜上皮のみではなく、全層が障害されていることが大半で、その多くは角膜内皮細胞の障害による不可逆的な水疱性角膜症である。本研究は、角膜疾患による失明原因の多くを占める角膜内皮障害に対する再生医療の実用化を目的としている。
研究方法
培養ヒト角膜内皮細胞あるいは組織幹細胞と人工実質、羊膜などの基質を用いて角膜内皮シートを作成し、動物眼に移植した。移植後の角膜透明性、角膜厚、拒絶反応の有無、内皮細胞密度を測定することにより移植効果を判定する。 幹細胞研究では研究用角膜より採取した内皮細胞から、浮遊培養によりスフェアー法により幹細胞を獲得する。幹細胞を用いた再生内皮シートあるいは、幹細胞を単独で、動物眼に移植することにより、角膜内皮幹細胞の移植効果を検討する。
結果と考察
培養内皮細胞あるいは、組織幹細胞は、生体内と同様にポンプ機能を有し、細胞間tight junctionを形成した。内皮組織幹細胞は神経未分化マーカーNestinを発現した。また分化誘導培地で培養して得られた細胞は角膜内皮様の正六角形細胞に分化し、RT-PCR法にて内皮細胞と同様の遺伝子発現パターンを示した。織幹細胞を用いて再構築した内皮シートは十分な強度を持ち、移植可能であった。水疱性角膜症の動物眼において培養細胞あるいは幹細胞による内皮細胞シートが治療に有効であることを証明した。
結論
本研究では、培養角膜内皮細胞あるいは選択的に採取した組織幹細胞を用いて再生した角膜内皮が動物眼において、生体内と同様のポンプ機能を有し、角膜透明性維持に働くことを証明した。本研究の培養角膜内皮シート移植法はドナー角膜を必要としないため、本邦におけるドナー不足を解消できる。更に、患者自身の健常眼から採取した幹細胞を用いることにより、生体適合性が高まるとともに、術後の拒絶反応を抑制することも可能となる。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
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