日本薬局方の規格・試験方法等の改正と国際調和に関する研究

文献情報

文献番号
199700444A
報告書区分
総括
研究課題名
日本薬局方の規格・試験方法等の改正と国際調和に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 無味雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田敏史(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所)
  • 嶋林三郎(徳島大学薬学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 薬物療法等有用性向上推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方の規格・試験方法等の改正と国際調和を目的に次の三つの研究を行った。第一は、医薬品(原薬、製造)中に残留する有害有機溶媒の含量を測定する国際調和試験法(日本薬局方(JP)新収載:残留溶媒試験法)の開発を目的とした研究で、試験法を開発し、医薬品の「規格及び試験方法」に残留溶媒に関する規格値を定め、これにより国民(患者)が、有害有機溶媒に暴露される量を減少させることを目的とした研究である。
第二は、JPの定性反応名が、中学、高校、大学の教育に用いられる用語と、その名称が異なるばかりでなく、JIS規格や日本化学会での名称とも異なり種々の誤解や誤認が認められ、医薬品の安全性に影響がでかねない情勢がある。そこでJP一般試験法の定性反応名等を国際純正および応用化学連合(IUPAC)の命名法に基づいて改め、JPをより国際整合及び国内整合させ医薬品の安全性を向上させ、国民の福祉を増進する目的で本研究を行った。
第三は、医薬品の「規格及ぶ試験方法」の内容や試験項目、及びその組立を現在の科学水準に整合させ、適切に設定する方法を定めるために「規格及ぶ試験方法」について調査研究を行った。また医薬品の開発から市販後まで一貫して品質を確保するための「規格及び試験方法」の設定は如何にあるべきかを検討し、ともすれば製造工程における品質管理と市販後の品質に対する管理試験法がそれぞれ独立したもののように扱われている日本の現状の問題点を調査研究してJPの位置づけや薬務行政との関係についても検討を加え、医薬品の安全性と有効性をより確保することを目的に本研究を行った。
研究方法
第一の残留溶媒試験法の開発研究については、ICHのQ3Cのテーマとして作業が進められている「医薬品に残留する溶媒の規制に関するガイドライン」により、医薬品の製造に用いないこととされたベンゼン他4種の有機溶媒及び医薬品の製造に用いることのできる溶媒であるが毒性学的な見地から残留規制値が設定されたアセトニトリル他35有機溶媒等のガスクロマトグラフ法による分析法を開発することとした。開発する試験法は、ガスクロマトグラフを用いた直接注入法及びヘッドスペース法とし、試料注入装置の条件、カラムの選定、装置の操作条件等を検討し、また国際整合に配慮した試験法を開発する方向で研究を行った。
第二の定性反応名(化合物の名称を用いて名付けられている)に関する研究は、中学、高校、大学の教育現場、JIS規格や日本化学会で用いられている名称を調査し、また国際的なIUPAC名に整合させる方向で、調査研究を行った。
第三の「規格及び試験方法」の設定に関しては、日本薬局方記載要領、またJPの医薬品各条、例えば、前文、性状、確認試験、純度試験、示性値、特殊試験、定量法等の組立や内容について現在の科学水準を考えるとき医薬品の規格として適切か否かの調査を行った。一方、新薬申請の分野においては、 ICH Q6A のテーマとして、「新医薬品の規格及び試験法の設定に関するガイドライン」が取り上げられ、局方規格と新薬規格の立場の違いはあれ、医薬品の規格の設定に関する考え方の国際調和や整合を図ろうとする流れがみられる。これらの流れにも配慮し、JPとしての考え方を確立し、欧米の考え方との調和を図り、日本国民が有益な医薬品を迅速に使用可能にできる状態の一層の進展をはかる方向で研究を行った。
結果と考察
第一の「残留溶媒試験法に関わる研究」に関しては、ガスクロマトグラフ法による残留溶媒試験法を開発し、平成10年1月JP一般試験法案として中央薬事審議会薬局方部会の調査会に提案し、現在、審議が行われている。なお、本試験法が、JP、米国薬局方(USP)及びヨーロッパ薬局方(EP)との間の調和試験法であることの確認を調査会の審議が終了した段階で日米欧三薬局方会議(PDG)の場で行い、国際整合された試験法とする予定である。
第二の「定性反応名等を(IUPAC)の命名法に基づいて改めるための研究」に関しては、日本薬局方改正案を開発したので、近く、JP一般試験法案として調査会に提案する。本研究は、化学物質の名称がIUPACの命名法に基づい命名することが「国際標準化機構(ISO)」において決せられ、我が国においては、工業標準化法(通商産業省)により規定されているにもにもかかわらずJPの対応が遅れていたところである。例えば、通産省が主管する日本工業規格(JIS)、文部省が主管する教科書等で用いられる用語も、それに準じた用語になっている(日本語への字訳は、日本化学会の化合物名字訳基準による)。しかし、JPは、その対応が遅れ、JP13では平成7年度研究の成果により試薬名等 IUPACの命名法に基づいて改めることができたが、化合物名に由来する定性反応名等は旧来のままであり、物質名がJPのなかで一物二名称になり非常に奇異な状態にあり、しかも教育の場とも異なる用語を用いている。このような状態は望ましくなく、局方全体を対象として物質名の統一をはかることを目的に本研究を行い、JP14(2001年)において全面的な試薬名及び反応名の改正を行うこととした。平成10年度に薬局方部会、理化学試験法委員会において審議を行う。
第三の「医薬品の「規格及ぶ試験方法」設定に関する調査研究」に関しては、JP医薬品各条の前文、性状、確認試験、純度試験、特殊試験、定量試験等を設定するときの"考え方"の基本方針を設定することができた。例えば、性状にはなにを記載するべきか、純度試験に工程管理的な試験をどの程度設定するか否か、規格値には毒性的な指標、例えば、ADIをどの程度考慮すべきか等を検討した。また医薬品の開発から市販後まで一貫して品質を確保するための「規格及び試験方法」の設定は如何にあるべきかを考察し、periodic tests(skip testsに同じ;いつも問題ない結果が得られるとき、例えば、出荷試験を2ヶ月おきに、又は10ロットごとに行う試験)、internal/release limits(製剤のみに適用する安定性の試験結果から定めた出荷規格、有効期限までの品質を保証するshelf-life limits より厳しい規格)、shelf-life limits(有効期限を考慮した規格:現在のJPの規格はこれ)、in-process tests(工程管理のために実施した試験の結果で同様な方法で行う出荷試験を省略する)、sunset testing(製造承認に際し設定する「規格及び試験方法」を、条件付きとし、ある期間製造経験ができた後はある項目の試験を削除できる)、parametric release(製造工程が適切にバリデートされていることを条件に、例えば、無菌試験を実施することなく滅菌工程の温度や圧力パラメータで判定する方法)等に関してもその考え方とJPとの関係を検討し、一定の結論を得ることができた。
結論
第一の「残留溶媒試験法に関わる研究」に関しては、ガスクロマトグラフ法による残留溶媒試験法を開発し、これにより国民(患者)が有害有機溶媒に暴露される量を減少させることができる。
第二の「定性反応名等を(IUPAC)の命名法に基づいて改めるための研究」に関しては、反応名の誤解や誤認による事故を防止することが可能になり、医薬品の安全性の向上に貢献できた。
第三の「医薬品の「規格及ぶ試験方法」設定に関する調査研究」に関しては、報告書に示す研究成果を得たが、これらの成果を薬事行政に反映させるためには中央薬事審議会の薬局方部会や関係部局、製薬業界との話し合いを行うとともに、本問題の影響力の強さから、今後も研究を継続し、産官学のコンセンサスを形成する必要性が認められる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)