無症状及び軽症COVID-19患者に対するネルフィナビルの有効性及び安全性を探索するランダム化非盲検並行群間比較試験

文献情報

文献番号
202019033A
報告書区分
総括
研究課題名
無症状及び軽症COVID-19患者に対するネルフィナビルの有効性及び安全性を探索するランダム化非盲検並行群間比較試験
課題番号
20HA1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 泰可(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 臨床感染症学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 茂(長崎大学)
  • 細萱 直希(長崎大学 病院 臨床研究センター)
  • 森本 心平(長崎大学 大学院医歯薬額総合研究科)
  • 竹森 幸子(長崎大学病院 臨床研究センター)
  • 山本 弘史(長崎大学病院 臨床研究センター)
  • 迎 寛(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野)
  • 柳原 克紀(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野)
  • 泉川 公一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床感染症学分野)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所)
  • 渡士 幸一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 山越 智(国立感染症研究所 真菌部)
  • 岩見 真吾(九州大学 大学院理学研究院 生物科学部門)
  • 山本 典生(東海大学 医学部)
  • 四柳 宏(東京大学 医科学研究所)
  • 松本 哲哉(国際医療福祉大学 医学部感染症学講座)
  • 加藤 康幸(国際医療福祉大学 成田病院 感染症科)
  • 樽本 憲人(埼玉医科大学病院 医学部感染症科・感染制御科)
  • 花岡 英紀(千葉大学医学部附属病院 臨床試験部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
92,098,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効性及び安全性が示された抗ウイルス薬が極めて限られている状況において、既承認薬によるドラッグリポジショニングは、迅速な治療法の確立に有用である。研究分担者である渡士、岩見、山本らは、既承認薬のインビトロ及びインシリコスクリーニングから、ネルフィナビルが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して高い抗ウイルス効果を示すことを明らかにした。また、COVID-19患者のウイルス量動態変化の報告に基づいたシミュレーション結果から、ネルフィナビルのHIV感染症に対する既承認用法・用量(1回750 mgを1日3回)にてSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果が期待できると予測された。これらを踏まえ我々は、無症状および軽症COVID-19患者を対象とした、医師主導、多施設共同、対症療法群対照ランダム化非盲検並行群間比較試験を立案した。
研究方法
本研究では、第Ⅰ-Ⅱ相医師主導治験として、無症状及び軽症COVID-19患者を対象として、ネルフィナビルの有効性と安全性を探索するために、対症療法を対照群としたランダム化非盲検並行群間比較試験とした。治験実施医療機関5施設(長崎大学病院、東京大学医科学研究所附属病院、国際医療福祉大学成田病院、埼玉医科大学病院、大阪市立十三市民病院)の多施設共同治験とし、治験調整事務局業務は長崎大学病院臨床研究センターと共に、臨床研究中核病院である千葉大学医学部附属病院臨床試験部の支援を受け高品質な治験データを生成する盤石な治験実施体制を構築した。ウイルス学的検査は、国立感染症研究所において、唾液検体から定量的にウイルス量測定を行う体制を構築した。治験参加期間は28日間(14日間の治験薬投与期間、14日間の追跡期間)であり、治験薬投与群は、対症療法に加え、ネルフィナビル1回750mgを1日3回、14日間の経口投与とした。対照群は、対症療法薬の処方等を含めた対症療法を行うこととした。主な選択基準は、SARS-CoV-2 PCR陽性の日本人成人であり、主な除外基準は、発症から8日以上の経過、経皮酸素飽和度96%未満(室内気)、重篤な合併症(肝障害、腎障害、糖尿病、出血傾向、高度下痢等)とした。主要評価項目はウイルス陰性化までの日数と、副次評価項目はウイルス量AUC、ウイルス陰性化率、重症化抑制効果、安全性等とした。目標症例数は120例(治験薬群及び対症療法群各60例)とした。
結果と考察
被験者登録加速のため治験実施施設を拡充し10施設(追加施設:福岡大学筑紫病院、埼玉医科大学総合医療センター、産業医科大学病院、富山大学附属病院、大阪市立大学医学部附属病院)での実施体制を確立した。日本たばこ産業株式会社にご提供いただいた治験薬は使用期限が限られていたため、海外製造販売業者であるファイザー株式会社からさらに治験薬の提供を受けた。治験薬輸入による登録期間中断及び急激なCOVID-19感染拡大による医療ひっ迫を受けたが、令和3年3月31日までに50例を登録した。COVID-19流行拡大状況による影響はあるものの、今回治験の実施施設体制、治験支援体制、及びウイルス学的検査実施体制を確立し、使用期限に懸念のない治験薬を確保して、安定した医師主導治験実施体制を確立することができた。今後はより効率的な被験者登録が可能であり、令和3年度内の治験完了を予定している。
結論
本研究は、ネルフィナビルのSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果を世界で初めて臨床的に検証するものであり、対症療法群とのランダム化比較試験によってエビデンスレベルの高い結果を出すことができる。この成果は、世界的にCOVID-19の制圧を目指す上で、今後の臨床開発につながる重要な知見となるだけでなく、ネルフィナビルによる重症化抑制やウイルス排出期間短縮が示されれば、感染者の大半を占める無症状病原体保有者や軽症患者に対する治療指針の策定に直接反映あるいはその過程で間接的に反映される可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019033C

収支報告書

文献番号
202019033Z