COVID-19回復者血漿治療の有効性・安全性に関する基礎的、臨床的検討

文献情報

文献番号
202019029A
報告書区分
総括
研究課題名
COVID-19回復者血漿治療の有効性・安全性に関する基礎的、臨床的検討
課題番号
20HA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
森岡 慎一郎(国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 半下石 明(国立国際医療研究センター 血液内科)
  • 河岡 義裕(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス感染分野)
  • 杉浦 亙(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
  • 前田 賢次(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 研究所 難治性ウイルス感染症研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
95,894,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
回復者血漿とは、特定の感染症から回復した人の血漿を指す。日本国内で回復者血漿療法を行う体制を確立することは非常に重要である。
研究方法
COVID-19回復者血漿を用いた治療は特定臨床研究として国立国際医療研究センターにおいて「臨床チーム」が実施する。
本治療では個々の提供血漿の質的特性と臨床的有効性を明確にするために、複数の供給血漿を混合して1つのプール血漿にはせずに個別のロットとして使用する。この手法ではプールするなどして同一品質のものを多量に作らず、血漿間の個体差が生じるものの、個々のロットとレシピエントの治療の転機を紐付けることができることから、至適供給者の要件を見極めることが可能となる(性別、年齢、臨床経過、抗COVID-19中和抗体の至適力価、血漿療法の安全性の評価など。)
第1段階として、国立国際医療研究センター単施設で安全性および実現可能性の検証を行った。また、将来的に回復者血漿の治療をCOVID-19に対する標準治療として実施できること、および今後新たな感染症が出現した場合に備えて速やかに回復者血漿治療が実施できることを見据え、多施設共同で体制を整備した。

血漿療法のプロトコル
スクリーニング:同意の取れた血漿供給候補者からスクリーニング用として40ml採血。
➀ 抗COVID-19中和抗体価、感染症の確認は日本赤十字社に依頼。
② 血漿の採取:スクリーニングの結果、適格と判断した供給者から、血液成分分離装置を用いて、血漿分離を実施する(200-400ml)。抗体価と感染症の再確認を行い、血漿療法の実施まで凍結保存する。
③ 血漿療法の実施:プロトコルに定めた受給者要件を満たし、かつ同意の取れたCOVID-19患者に対して回復者血漿を輸注する。
結果と考察
2021年11月5日時点での各医療機関でのスクリーニング検査実施のべ患者数と血漿採取を行ったのべ患者数は、それぞれ国立国際医療研究センターで1300名、261名、東京医療センターで0名、0名、名古屋大学医学部附属病院で40名、6名、大阪市立大学医学部附属病院で88名、5名、大阪市立総合医療センターで56名、4名、りんくう総合医療センターで62名、7名であった。6医療機関での合計血漿採取量は、80,150mLであった。また、2021年9月2日からは5医療機関より日本赤十字社へ患者を案内のうえ、日本赤十字社が指定した場所において血漿採取を行い、2021年11月26日まで血漿採取を継続した。日本赤十字社で145,938mLの血漿が採取され、合計で226,088mLの血漿が採取された。採取した血漿については、免疫グロブリン製剤を製造するために日本赤十字社を経由して日本製薬へ送付した。 また、11名のCOVID-19患者に血漿投与を行い、血漿採取体制の構築と安全性の検証を行った。COVID-19回復者のスパイク蛋白抗体価については、重症度が高いほどスパイク蛋白抗体価が高くなる一方で重症度にかかわらず低下傾向となること (Kutsuna S,et al. N Engl J Med. 2020 Oct 22;383(17):1695-1696.)や、経過中の最高CRP値、男性であること、糖尿病の基礎疾患があることが高い抗体価となることを示した(Kutsuna S,et al.Journal of Infection and Chemotherapy 2022:28;206-210)。さらには、実際に日本人のCOVID-19回復者から採取した血漿も11名のCOVID-19患者に投与を行い、問題となる有害事象はなく安全に投与できることが分かった。
結論
国内で回復者血漿を採取できる体制を構築した。このことは本邦の新興感染症への備えとして重要であり、継続的な体制維持に努める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
2023-07-07

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
2023-07-07

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019029C

収支報告書

文献番号
202019029Z