バイオテロ対策のための備蓄されている細胞培養痘そうワクチンの備蓄等,バイオテロ病原体への検査対応,公衆衛生との関連のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
202019028A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテロ対策のための備蓄されている細胞培養痘そうワクチンの備蓄等,バイオテロ病原体への検査対応,公衆衛生との関連のあり方に関する研究
課題番号
20HA2005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 英輔(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科)
  • 齋藤 智也(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 鈴木 基(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所感染病理部)
  • 前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 吉河 智城(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
21,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際情勢の不安定化が進む今日,日本では2020年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックが,COVID-19の国際的流行の影響により2021年に開催されることになった.2022年には大阪万博の開催が予定されている.バイオテロ対策を強化するための国内外での活動に貢献する.
研究方法
・組換えポックスウイルスを利用したウイルスワクチン実験後の動物組織標本の検索を行い,ワクチンの特性による病変形成に対する影響について検証した.LC16m8を土台としたCOVID-19ワクチンの開発に着手した.
・感染性のある一種病原体を用いて,一類感染症に対するウイルス学的検査法を開発,整備した.
・バイオテロ対策関連国際会議への出席:世界保健機関(WHO)が主催する痘瘡ウイルス研究専門家アドバイザリーコミティー(ACVVR)に,米国が主催するG7 Experts’ Meeting on Strengthening Laboratory Biorisk Management(G7研究所バイオリスク管理強化専門家会合)に,さらにGlobal Health Security Action Group-Laboratory Network(GHSAG-LN)に出席し,対策の立案に貢献し,関連情報を収集した.
・Early Aberration Reporting System (EARS)等で用いられているアウトブレイク早期探知の統計学的手法の精度を検証した.アルゴリズムを構築し,実データを用いて,異常を探知する精度について検証を行った.
・LC16m8をベースとした高病原性病原体に対するワクチン候補の安全性の評価にかかわる細胞選択性を評価した.
・公衆衛生・医療関係者のみならず,非医療関係者を対象にした講義を中心とする研修素材を作成した.3件の研修で活用した.
・本研究斑で開設・運営しているバイオテロ対応ホームページを改訂した.https://www.niph.go.jp/h-crisis/bt/
結果と考察
LC16m8の安全性と有効性に関する研究は,痘瘡や類似するウイルス感染症対策に強く貢献するものである.痘瘡ワクチン接種が行われなくなって以来、痘瘡ワクチンにより誘導されるオルソポックスに対する免疫を持たない人口は増加の一途を辿っている.それに伴い,サル痘ウイルスや牛痘ウイルスによるヒトの感染事例が報告されている.痘瘡ウイルスによるバイオテロに備える上でLC16m8を生産・備蓄している日本はとても重要は役割を担っている.
COVID-19の大規模流行が発生した.本研究斑および先行研究班で,開発されている組換えLC16m8ワクチン作出法を用いてCOVID-19ワクチン開発に着手し,ワクチン候補が作成された.有効性や安全性を調べる研究はこれからの課題であるが,COVID-19流行の発生のように,将来の世界的ウイルス感染症流行に備えてワクチン候補を迅速に作出することが可能であることが確認された.
バイオテロ対策の強化にはワクチンや治療薬開発,疫学情報の正確で迅速な収集,検査体制の整備と受付,社会への正確で適切な情報の提供,国際連携の強化が必要であり,本研究ではこれらの多岐にわたる課題に関する研究を進めることができた.
米国政府は東京オリパラ開催時におけるバイオテロ対策に備えるために,厚労省国立感染症研究所に対し共同した対策のための活動を求めている.その一環として,米国National Regional Laboratoryの国際パートナーになることを希望していて,現在,ほぼ手続きが完了する段階にある.その他,米国が主催するG7研究所バイオリスク管理強化専門家会合にも参加した.GHSAG-LNでは,新興ウイルス感染症であるCOVID-19に対する国際連携,特にG7プラスメキシコのフレームの中で準備されていた病原体共有フレームが迅速に発動され,国立感染症研究所では,GHSAG-LNの研究機関およびそれを通じて各国の研究機関にSARS-CoV-2分離株の提供を行った.検査法や治療法,ワクチン開発等の研究に大きく貢献できたと考えている.
結論
バイオテロ対策強化に貢献するための,多岐にわたる研究が実施された.それぞれの研究課題は,まだ開発途上のものもある.国内のバイオテロ対策強化に貢献するとともに,国際的にも連携、貢献することが求められる.
LC16m8を用いた高病原性病原体に対する新規ワクチン候補品が作製された.COVID-19ワクチンと狂犬病ワクチンである.今後もLC16m8に関連する研究,品質管理法の改良,バイオテロ早期探知のための疫学調査のあり方の検討,国際連携,社会に対する情報提供のあり方を検討する必要がある.

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2022-03-29
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-

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収支報告書

文献番号
202019028Z