薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究

文献情報

文献番号
202019024A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究
課題番号
20HA2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 村木 優一(京都薬科大学・医療薬科学系・臨床薬剤疫学分野)
  • 大毛 宏喜(国立大学法人広島大学 病院 感染症科)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 倉井 華子(静岡県立静岡がんセンター感染症内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,065,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性菌が世界中に拡大し問題となっているなかで、わが国は2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を発表した。本アクションプランでは各領域に於いてエビデンスの不足している部分を挙げ、これに対する研究開発もその達成すべき項目に掲げている。本研究の前身である厚生労働行政推進調査事業費研究「薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究」では薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに必要なサーベイランス、教育手法、医療経済的影響について検討した。これによる一定の知見を得て行政施策に反映させることができたが、地域におけるAMR対策の推進等未解決の課題がある。よってそれらの課題を解決しAMR)アクションプランを更に推進することが本研究の目的である
研究方法
以下について研究を遂行した:
1.医療関連感染(HAI)サーベイランスに関する研究 
2.抗菌薬使用量(AMU)サーベイランスに関する研究  
3.抗微生物薬適正使用(AMS)に関する研究   
4. AMR対策の教育啓発に関する研究   
5. 薬剤耐性菌に対する、対策の実際と経済負荷   
6. 抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究 
7. 地域でのAMR対策の推進モデルの確立のための研究 
結果と考察
医療関連感染(HAI)サーベイランスに関する研究では、J-SIPHEに蓄積されたデータを解析して院内感染対策および抗菌薬適正使用支援の状況を評価した。高齢者施設の医療関連感染症および抗菌薬使用の調査にて現状を確認し、抗菌薬適正使用の土台を構築した。JANISおよびレセプトデータを活用し、薬剤耐性菌の疾病負荷の骨子となる死亡数を推定しつつ、包括的な疾病負荷の指標であるDALYsやQALYsを算出するための基礎情報を取得した。抗菌薬使用量サーベイランスに関する研究では抗菌薬販売量やNDBを利用したAMUモニタリングにより, 適正使用を進めるべき対象がわかってきた. また, 様々な領域における抗菌薬使用に関する問題点が明確化した. 一方, 販売量とNDBそれぞれのデータの使用において, 両者ともに, 長所, 短所があるため, 特性を見極めて今後もサーベイランスを行うことが重要である。抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究では本研究により, 抗菌薬適正使用支援として取り組むべき対象や課題がより明らかとなった. 今後も引き続き研究を行い, 実際の介入や支援につなげていく必要がある。AMR対策の教育啓発に関する研究では、日本の薬剤耐性対策の取り組みは始まって数年であるが、その成果が現れるには数年かかると見込まれる。医療従事者、一般市民それぞれ対象別に普及・啓発活動を広げ、継続し、意識の変容を促していく必要があることを示した。AMRの医療経済的評価に関する研究では院内感染対策の実態調査、大規模データによる分析を検討し、経済的負担、AMR対策・院内感染対策の要改善領域を明らかにした。COVID-19が病院医療に及ぼす影響を定量化し、COVID-19の影響による病院の収入の減少を支援する政策の改善が必要であることを示した。また、AMR対策上重要な広域抗菌薬の適正使用を評価する指標の開発のため、まず肺炎入院患者における標準化広域抗菌薬使用割合を用いたO/E比を可視化した。抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究では、抗菌薬使用状況を入手可能な感染防止対策加算1,2を算定している医療機関の使用状況は,二次医療圏ごとの傾向ではなく,その医療機関特有の差異が大きいことが明らかになった.また薬剤感受性が経年的変化を認めたのに対し,医療機関毎の抗菌薬使用状況では明確な変化を認めなかった.地域でのAMR対策の推進モデルの確立のための研究では、各地域で情報共有を行う会議体があること、行政と協同することが重要であることなどが明らかとなった。また活動を始める上では地域で核となるキーパーソンが重要であることも見えてきた。先導するものが少ない地域でどのように地域ネットワークを構築してくかが今後の課題となる。また新型コロナウイルスの影響を受け、実質的には活動が休止している地域がほとんどであった。
結論
病院についてはサーベイランスの基盤ができたため、今後はそのデータの分析活用を行い、同時に対象を地域に広げていくことが必要である。また薬剤耐性や抗菌薬に関する一般国民の意識の変化には長い時間を要するため、今後学校教育を含め普及・啓発活動を広げていくことで、意識の変容を促していく必要がある。院内感染対策の経済的負担、院内感染対策の要改善領域を明らかにされたため、今後情報提供による介入効果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202019024Z