医薬品の適正使用のための情報提供の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
199700443A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の適正使用のための情報提供の在り方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
吉本 與一((社)日本薬剤師会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 薬物療法等有用性向上推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢社会の到来により、医薬品を使用する機会が増大し、また、医学・薬学の進歩によって医薬品が複雑・高度化していることから、薬物療法の安全性をより高めることが適正使用の観点から必要とされている。医薬品の適正使用の一環として、医薬分業の推進が図られ、処方せんを応需する薬局も年々増加する中で、薬局における薬歴管理・服薬指導の重要性は十分認識されるようになってきているが、最近特に着目されるようになった薬剤情報提供に関する取扱いについては、個々の薬局薬剤師の裁量に任されている状況にある。医薬品使用における安全性の確保の観点からは、薬局薬剤師自身による知識・技能の研鑽とともに、全国どの薬局においても一定レベル以上の内容で薬剤情報が提供されることが望ましい。また、薬剤情報の提供にあたっては、薬局薬剤師から患者への一方的なものではなく、患者と薬剤師間のよりよいコミュニケーションが求められることから、平易な言葉・表現による説明、プライバシーの配慮、患者が質問しやすい雰囲気作り等の工夫も重要である。薬局薬剤師による有効で、効率的な情報提供の在り方に関するガイドラインを作成することは、医薬品使用の適正化を図る上で有用なものとなる、ガイドラインは、我が国の実情を勘案しつつ、国際的にも通用するような内容とするため、薬局における調剤薬に関する情報提供の状況を把握するとともに、国内外で検討されている薬剤情報提供の在り方に関する取り組みを調査した上で作成する必要がある。
研究方法
処方せん調剤時の薬局薬剤師から患者等への調剤した薬剤に関する情報提供の現状把握のため、薬局薬剤師及び患者に対しアンケート調査を行った。患者等への薬剤情報提供の在り方について提言されている国内外の資料の調査を行った。それら資料等に基づき、我が国における、患者等への薬剤情報提供のあり方に関するガイドラインを検討した。
結果と考察
情報提供の内容については、基本情報(薬剤師が確定的に判断できる情報)と有効性情報(確定的には医師の判断が必要な場合)、安全性情報(薬剤師自身が独自に判断できるが、提供にあたって医師との十分な連携が必要なもの)が挙げられた。これらの情報は膨大なものになるので、短時間にすべて患者に伝達することは困難である。したがって、薬剤師が患者の薬剤に関する知識や投薬の状況等に応じて取捨選択し提供することとなる。その際、内容について患者が十分理解できるよう専門用語を避ける必要があり、副作用名を述べるだけではその早期発見につながらないので、副作用の初期症状がわかりやすく伝え、そのような症状が出たときにはすぐ医師、薬剤師に申し出るよう指示することが重要である。また、情報提供方法としては口頭だけでなく、原則として文書で行うことが望ましいとした。
結論
情報提供は基本情報、有効性情報、安全性情報について薬剤師が患者の薬識や投薬状況に応じて情報を取捨選択し、表現について検討したうえで行い、また副作用の表現については、患者が副作用ではないかと判断できるように、初期症状を具体的に記載して伝えることが重要である。今後の課題としては、新薬の開発や患者の情報提供に対する関心の高まり等に伴い、情報提供の内容は年々変化していくものと考えられ、情報提供のガイドラインは適宜見直されることが必要と考える。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)