文献情報
文献番号
202019019A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における感染症対策に係るネットワークの標準モデルを検証・推進するための研究
課題番号
20HA1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮入 烈(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
- 笠井 正志(兵庫県立こども病院)
- 宇田 和宏(東京都立小児総合医療センター 感染症科)
- 岩元(木下)典子(国立国際医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,470,000円
研究者交替、所属機関変更
報告機関中の変更なし
2021年4月1日から宇田和宏医師の所属機関は東京都立小児総合医療センター 感染症科から岡山大学小児科に変更
2021年6月1日から宮入烈の所属機関は国立成育医療研究センターから浜松医科大学小児科に変更
研究報告書(概要版)
研究目的
薬剤耐性菌(AMR)による感染症は、生命予後に直結する重要な懸案事項である。2016年のAMRアクションプランが制定されたことをうけ、当研究班では小児の一次診療現場を中心とした抗菌薬適正使用推進の方策を検討してきた。本研究の目的は、①抗菌薬処方の現状を把握し、②AMRアクションプランの効果を検証し、③休日夜間急患センター(急患センター)と保健所を中心に行政とプライマリケア従事者が綿密に連携する地域感染対策ネットワークを確立し、④全国に展開し処方量や耐性菌検出率を比較検討することで抗菌薬適正使用の評価指標を確立させることである。
研究方法
① 抗菌薬処方状況の調査:全国の小児の内服抗菌薬の詳細な処方動向を調査し、加算導入による影響についてNDBを用いて評価する。
② 継続可能で汎用性の高いシステムの構築: これまでに構築した急患センター中心としたネットワークにおいて既にモニタリングとフィードバックの効果があらわれている地域(兵庫県神戸市・姫路市)では、取り組みを継続する。更に保健所など行政が関与する方策を導入し、持続可能性を高める試みや実現可能で汎用性の高いシステムを構築する。その他、研究協力者のいる他地域でも導入を開始する。また併せて抗菌薬適正使用について市民への啓発活動を行う。
③ 全国の急患センターの施設背景と診療実態の把握とフィードバック:各急患センターの運営母体となる組織に一次調査票を送付し、研究協力が得られる場合には各急患センターの施設背景や診療実態の調査を行う。
④ 抗菌薬処方状況集計ツールの開発:複数地域の急患センターにおける抗菌薬処方状況を統一した方法で簡易に集計するためのツールの存在が必要であるこれにより、開発研究者だけでなく行政・各施設の出務医師や一般市民なども容易に処方状況を確認できるようなアプリケーションの新規開発を目指す。
② 継続可能で汎用性の高いシステムの構築: これまでに構築した急患センター中心としたネットワークにおいて既にモニタリングとフィードバックの効果があらわれている地域(兵庫県神戸市・姫路市)では、取り組みを継続する。更に保健所など行政が関与する方策を導入し、持続可能性を高める試みや実現可能で汎用性の高いシステムを構築する。その他、研究協力者のいる他地域でも導入を開始する。また併せて抗菌薬適正使用について市民への啓発活動を行う。
③ 全国の急患センターの施設背景と診療実態の把握とフィードバック:各急患センターの運営母体となる組織に一次調査票を送付し、研究協力が得られる場合には各急患センターの施設背景や診療実態の調査を行う。
④ 抗菌薬処方状況集計ツールの開発:複数地域の急患センターにおける抗菌薬処方状況を統一した方法で簡易に集計するためのツールの存在が必要であるこれにより、開発研究者だけでなく行政・各施設の出務医師や一般市民なども容易に処方状況を確認できるようなアプリケーションの新規開発を目指す。
結果と考察
① 抗菌薬処方実態:2011年1月から2018年12月における本邦の抗菌薬使用量は、2011-2012年のDOTs/PIDは 29.5から2017-2018年は24.04へと18.7%低下した。第3世代セファロスポリン系抗菌薬およびマクロライド系抗菌薬は、著明に低下した。年齢別では、13歳以下は内服薬全体の抗菌薬使用量が低下したが、14歳以上は、上昇がみられた。
② AMR対策の有効性の検証:2018年4月からは政策として「小児抗菌薬適正使用支援加算(以下、ASP加算)」が開始された。全体でASP加算は29%で導入され、抗菌薬処方はASP加算の導入前後で176 DOTs/1000 visitorの減少が見られた。一方で、その他の薬剤処方、入院率、時間外受診については増加しなかった。ASP加算は比較的安全に抗菌薬適正使用を推進する政策となりうることが示唆された。
③ 急病センターにおけるAMR対策の推進:2016年4月から2019年12月の期間において、兵庫県内で調査した3つの急病センター全てで抗菌薬処方率は約10%から約5%まで経時的に減少した。抗菌薬処方の適正性について月1回ニュースレターでフィードバックを行った施設が最も低下していた。一方で適切に処方された割合は40.0%と低値であり、次段階の課題が明らかになった。
④全国急病センターおよび保健所における抗菌薬適正使用に関するアンケート:全国の急病センター合計440施設へ質問紙を送付し、176施設(40.0%)より回答を得た。地域での抗菌薬適正使用に興味・関心があると回答した施設は100施設(56.8%)であったが、実際に取り組む予定があると回答した施設は38施設(21.6%)に留まった。全国の保健所466施設に送付した質問紙表は、244施設(52.4%)から回答を得た。行政として地域の抗菌薬適正使用を進めることに興味・関心があると回答した施設は160施設(66%)であったが、実際に取り組む予定があると回答した施設は27施設(17%)に留まり、新型コロナウイルス感染症流行により抗菌薬適正使用に行政として取り組むのは難しい、という回答が最も多かった。
⑤ 抗菌薬集計ツールの構築:急患センターのレセコンから抽出する電子レセプト(医科)を解析して、任意の方法で簡易に集計できるツールのプロトタイプを構築した。
② AMR対策の有効性の検証:2018年4月からは政策として「小児抗菌薬適正使用支援加算(以下、ASP加算)」が開始された。全体でASP加算は29%で導入され、抗菌薬処方はASP加算の導入前後で176 DOTs/1000 visitorの減少が見られた。一方で、その他の薬剤処方、入院率、時間外受診については増加しなかった。ASP加算は比較的安全に抗菌薬適正使用を推進する政策となりうることが示唆された。
③ 急病センターにおけるAMR対策の推進:2016年4月から2019年12月の期間において、兵庫県内で調査した3つの急病センター全てで抗菌薬処方率は約10%から約5%まで経時的に減少した。抗菌薬処方の適正性について月1回ニュースレターでフィードバックを行った施設が最も低下していた。一方で適切に処方された割合は40.0%と低値であり、次段階の課題が明らかになった。
④全国急病センターおよび保健所における抗菌薬適正使用に関するアンケート:全国の急病センター合計440施設へ質問紙を送付し、176施設(40.0%)より回答を得た。地域での抗菌薬適正使用に興味・関心があると回答した施設は100施設(56.8%)であったが、実際に取り組む予定があると回答した施設は38施設(21.6%)に留まった。全国の保健所466施設に送付した質問紙表は、244施設(52.4%)から回答を得た。行政として地域の抗菌薬適正使用を進めることに興味・関心があると回答した施設は160施設(66%)であったが、実際に取り組む予定があると回答した施設は27施設(17%)に留まり、新型コロナウイルス感染症流行により抗菌薬適正使用に行政として取り組むのは難しい、という回答が最も多かった。
⑤ 抗菌薬集計ツールの構築:急患センターのレセコンから抽出する電子レセプト(医科)を解析して、任意の方法で簡易に集計できるツールのプロトタイプを構築した。
結論
小児の一次診療を軸とした取り組みにより、全国レベルで抗菌薬処方の減少が認められている。更なる推進と事業の継続のためには、地域の急病センターを中心としたシステムの導入が有用であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2022-03-29
更新日
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