HPVワクチン接種後に生じた症状に関する診療体制の整備のための研究

文献情報

文献番号
202019016A
報告書区分
総括
研究課題名
HPVワクチン接種後に生じた症状に関する診療体制の整備のための研究
課題番号
19HA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人信州大学 医学部附属病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院神経内科学)
  • 平井 利明(帝京大学医学部附属溝口病院神経内科)
  • 太田 正穂(信州大学 医学部)
  • 日根野 晃代(信州大学医学部附属病院)
  • 楠 進(近畿大学 医学部(神経内科))
  • 神田 隆(山口大学 大学院医学系研究科神経内科学)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、i) 神経内科専門医から成る全国診療ネットワークを形成して、患者登録と詳しい実態調査を行う、ii)HPVワクチン接種後副反応としての神経障害の病態解明と長期予後を明らかにする、iii)HPVワクチン接種後副反応を生じやすい遺伝的素因を解明する、iV)血清中自己抗体を指標とした新規診断ガイドラインと新規治療法を確立する、の四項目を掲げた。
研究方法
HPVワクチン接種後副反応に関しては、診察希望のある患者さんをできるだけ速やかに診察して、個々の症状の発生時期と頻度を検討した(池田、平井、桑原、青木、楠、神田、髙嶋)。特に脳症状がある患者では高次脳機能検査(WAIS-III、TMT試験)、脳SPECTを行い、発生機序を検討した(髙嶋、桑原、池田)。新規治療法として、免疫吸着、ステロイドパルス療法を施行して、その効果を客観的指標で評価した。(桑原、髙嶋、平井)。
結果と考察
結果
・研究代表者(池田修一)
(1) 各年度ごとの新規受診者数は2013年44名、2014年40名、2015年47名、2016年33名、2017年25名、2018年7名、2019年4名、2020年0名であった。これら受診者の実際の症状発現時期は2017年3月以前であった。
・研究分担者(日根野晃代)
患者7名の実態を分析した。症状は全体的に改善傾向にあるが、易疲労性、起床困難、疼痛などの症状が持続している患者が多かった。特に学生の場合、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でオンライン授業が多くなったものの、症状により課題や授業参加に支障が出ることもあり、就職活動も含め不安を抱えていた。就職活動に不安がある患者には、ハローワーク(難病患者就職サポーター)につなげるなどのサポートを行った。
・研究分担者(髙嶋 博)
(1) 2020年度の新規受診者は2名であった。
(2) 正常コントロールとして採取した正常若年者では血液学的異常の検出率は低く、上昇の程度も軽度であった。またワクチンを接種した健常な女性ではサイトカインの上昇はほとんど認められなかった。ワクチン関連神経症状の患者のような高い値はどのコントロール群にも認められなかった。
・研究分担者(桑原 聡)
(1) 2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規患者0名であった。
・研究分担者(平井利明)
(1) 2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規患者8名であった。
・研究分担者(神田 隆)
(1) 2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規患者0名であった。
・研究分担者(楠 進)
(1) 2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規受診者は0名であった。
・研究分担者(青木正志)
(1) 2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害
事象疑いの新規受診者は0名であった。
・研究分担者(太田正穂)
(1) 新規検体が集まらず、研究の進捗はなかった。

考察
HPVワクチン接種後の副反応と言われている病態については、これらの症状発現と同ワクチン接種との直接的な因果関係は証明されていない。従来の本研究班の調査では子宮頸がんワクチン接種時期と同ワクチンの副反応が疑われている症状の発現時期はかなり重複していた。また直近の3年以上の期間において、新規に副反応症状を呈している女性患者は殆どいないと推測される。
結論
1.子宮頸がんワクチン接種後の副反応と言われている病態について、本研究班が掌握している現状をまとめた。
2. 2015年12月以降、HPVワクチン接種後副反応と診断された新規患者は、国内で出ていないと推測される。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202019016B
報告書区分
総合
研究課題名
HPVワクチン接種後に生じた症状に関する診療体制の整備のための研究
課題番号
19HA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人信州大学 医学部附属病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院神経内科学)
  • 平井 利明(帝京大学医学部附属溝口病院神経内科)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 太田 正穂(信州大学 医学部)
  • 日根野 晃代(信州大学医学部附属病院)
  • 楠 進(近畿大学 医学部(神経内科))
  • 神田 隆(山口大学 大学院医学系研究科神経内科学)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、i) 神経内科専門医から成る全国診療ネットワークを形成して、患者登録と詳しい実態調査を行う、ii)HPVワクチン接種後副反応としての神経障害の病態解明と長期予後を明らかにする、iii)HPVワクチン接種後副反応を生じやすい遺伝的素因を解明する、iV)血清中自己抗体を指標とした新規診断ガイドラインと新規治療法を確立する、の四項目を掲げた。
研究方法
HPVワクチン接種後副反応に関しては、診察希望のある患者さんをできるだけ速やかに診察して、個々の症状の発生時期と頻度を検討した(池田、平井、桑原、青木、楠、神田、髙嶋)。特に脳症状がある患者では高次脳機能検査(WAIS-III、TMT試験)、脳SPECTを行い、発生機序を検討した(髙嶋、桑原、池田)。
結果と考察
研究結果と考察
研究代表者(池田修一)
(1) 各年度の新規受診者数は2013年44名、2014年40名、2015年47名、2016年33名、2017年25名、2018年7名、2019年4名、2020年0名であった。これら受診者の実際の症状発現時期は2017年3月以前であった。
研究分担者(青木正志)
(1) 2019、2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規受診者はいずれも0名であった。
研究分担者(桑原 聡)
(1) 2019、2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規患者0名であった。
(2) 長期観察例8例(罹病期間8.8±1.6年)の発症時年齢や接種から症状出現までの期間、当科受診までの期間は、他の15名と有意差を認めなかった。
研究分担者(平井利明)
(1) 2019、2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規患者はそれぞれ8名であった。
(2) 2014年4月〜2017年12月までの期間に子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いで受診し診察した患者は130名。この中で患者の重症度を初回接種から0.5年ごとにmodified Rankin Scale(mRS)で8.5年間後方視的に追跡できたのは35名であった。mRS平均値が最大値に達したのは初回接種から4年時(mRS平均値 3.1)で、以降の同平均値は減少に転じ、6年時では2.7,7年時では2.5,8.5年時では 2.2と緩やかに改善した。
研究分担者(岡部信彦)
(1) 文献レビューを行なった。
研究分担者(太田正穂)
(1) 特定のHLAアレルが自己抗体産生に影響しているとは結論できないと考えられた。
研究分担者(日根野晃代)
(1) 子宮頸がんワクチン接種後有害事象を訴える55名と同ワクチン非接種(対照者)の57名を対象に、血清中の抗自律神経受容体抗体で測定した。その結果、同ワクチン接種者群は非接種者群に比してこれら9種類の抗体が有意に高値を示した。
研究分担者(楠 進)
(1) 2019年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規受診者は0名であった。2020年度は1例の疑い症例(16歳・女性)の受診があった。
(2) HPVワクチン接種後の体調不良症例で、当科に血中抗糖脂質抗体測定の依頼があった症例について、抗体測定結果を含めて検討した。抗糖脂質抗体は9例で低力価陽性(1+)であった。2例で2+の抗体価を示した。
研究分担者(神田 隆)
(1) 2019、2020年度の子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いの新規患者はいずれも0名であった。
(2) 過去に子宮頸がんワクチン接種後有害事象にて血液浄化療法を施行した患者2名の血清からIgGを精製してヒト血液脳関門(BBB)構成細胞に作用させて、その影響状態について検討を開始した。
研究分担者(髙嶋 博)
(1) 2019年度の新規受診者は0名、2020年度の新規受診者は2名であった。
(2) 2012年~2018年の期間に子宮頸がんワクチン接種後有害事象疑いで受診した患者は59名の予後分析を行った。慢性的倦怠感が高頻度にあり、6割の患者が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の診断基準を満たした。
結論
1.子宮頸がんワクチン接種後の副反応と言われている病態について、本研究班が掌握している現状をまとめた。
2. 2015年12月以降、HPVワクチン接種後副反応と診断された新規患者は、国内で出ていないと推測される。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
子宮頸がん(HPV)ワクチン接種後副反応のわが国の実態をより正確に把握するために、厳格な診断基準を独自に作成して調査した。同ワクチン初回接種は2010年5月~2013年4月までの期間であり、症状発現は2010年10月~2015年10月までであった。特に2011年9月~2013年3月の期間に多く発生している傾向があった。2020年度に研究班全体の施設を新たに受診した患者は10名であったが、これらの患者の症状発現時期は2015年12月以前であった。
臨床的観点からの成果
HPVワクチン接種後副反応を呈した44名の患者の重症度をmodified Rankin Scale(mRS)で6年間後方視的に追跡した結果、mRS平均値が最大値に達したのは初回接種から4年時(mRS平均値 2.9)で、以降の同平均値は減少に転じた(6年時mRS平均値 2.5)。全体として初回接種から3.5~4年でADLが最も悪化し、以降は改善に転じている。
ガイドライン等の開発
子宮頸がんワクチンの接種を控えるべき病態として次の10項目を提唱した。
1. 起立性調節障害、2. 慢性頭痛、3. 慢性疼痛(複合性局所疼痛症候群、線維筋痛症など)、4. てんかん、5. 若年性関節リウマチに代表される膠原病、6. アレルギー疾患、7. 発達障害、8. 適応障害、9. 既存の精神・神経疾患を有する、10. 両親、同胞に膠原病患者がいる。(令和元年 11月19日作成)
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
令和元年10月8日(火曜日)付けの信濃毎日新聞に「子宮頸がんワクチン接種後の体調不良、自律神経に異常免疫反応か」のタイトルで日根野、池田らが発表した論文(Hineno A, Ikeda S, Scheibenbogen C, Heidecke H, Schulze-Forster K, Junker J, et al. Autoantibodies against autonomic nerve receptors in adolescent Japanese girls after immunization with human papillomavirus vaccine. Ann Arthritis Clin Rheumatol 2019;2 (2): 1014.)の趣旨が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hineno A, Ikeda S, Shoenfeld Y,et al
Autoantibodies against autonomic nerve receptors in adolescent Japanese girls after immunization with human papillomavirus vaccine.
Ann Arthritis Clin Rheumatol. , 2 (2) , 1014-1014  (2019)
原著論文2
Hineno A, Kosho T, Ikeda S, et al
A case with XXXX syndrome who was incidentally diagnosed during examination for suspected post-human papillomavirus vaccination syndrome.
Case Rep Clin Med , 8 , 239-244  (2019)
10.4236/crcm.2019.89029

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202019016Z