臨床試料の多元的データ解析による研究リソースの基盤情報に関する研究

文献情報

文献番号
200805031A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床試料の多元的データ解析による研究リソースの基盤情報に関する研究
課題番号
H20-特別・指定-026
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
春日 雅人(国立国際医療センター(研究所))
研究分担者(所属機関)
  • 安田 和基(国立国際医療センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 2型糖尿病との関連が報告されている「生体情報」について、日本人における意義を検証するのは、喫緊の課題である。これまで国立国際医療センターにおいて、糖尿病研究目的で収集されたヒト臨床試料について、SNPやバイオマーカーを測定し、その意義を検証する。同時に試料に科学的価値を付加し、臨床情報と統合して、日本人糖尿病を多元的に解析するための研究リソースの構築に必要な基盤情報を提供する。
研究方法
 我々がゲノムワイド相関解析により、最も重要な2型糖尿病遺伝子の一つとして最近報告したKCNQ1遺伝子のSNPをはじめ、世界的に確立され、日本人糖尿病との関連が報告された約11SNPについて、2型糖尿病患者700例を対象に、TaqManプローブを用いてゲノムDNAをタイピングしgenotypeを決定する。若年発症糖尿病35例を対象として、MODY遺伝子全エクソンのリシークエンス解析を行う。同一患者の教育入院前後(代謝状態は劇的に改善)のペア血清140例を対象として、ビーズ技術を用いたマルチプレックス測定システム(バイオラッド社BioPlexシステム)により、ヒト糖尿病代謝関連マーカー14種を測定する。
結果と考察
 遺伝因子については、SNPタイピング、エクソンリシークエンスをほぼ完了しており、common variant、rare variantの両者を視野に入れて、今後の臨床的検証を可能にしたと考える。血清マーカーについても、入院治療効果との関連など、これまで報告のない新規の知見も得られたほか、多項目測定で初めて見つかった特異的なパターンから、遺伝子解析へ進展した興味深い症例など、多元的な本リソースの有用性がうかがわれた。同時に、血清処理方法など臨床試料の課題を含め、今後のリソース構築に有用な基盤情報が得られた。既報の個々の因子の意義解明とともに、将来さまざまな次元の「オミックス解析」が可能になれば、糖尿病代謝疾患の構造を統合的に解析し、日本人についての本格的な病態解明が可能になると期待される。
結論
 糖尿病の多元的解析を可能とする研究リソースの基盤情報を収集し、その有用性を示した。本研究で示した方向性により、将来全く新しい糖尿病テーラーメイド医療が確立されれば、糖尿病ならびにその合併症の発症進展を抑制し、国民の健康寿命の延伸に大いに役立つと期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200805031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 ゲノム解析については、GWAS等で得られた糖尿病感受性common SNPの、病態における意義(治療反応性、病態や合併症の進展など)を検討できる基盤を確立した。また、rare variantの同定へ向けてリシークエングの系を確立し解析が進行している。血中バイオマーカーを系統的に測定することにより、個々の値だけでなくその組み合わせによる意義も検証できる。今回確立した、臨床情報を含めた多元的データを統合したリソースは、将来のオミックス解析及び統合した解析を可能とする。
臨床的観点からの成果
 遺伝因子については、common variant、rare variantそれぞれの検査系及び意義の検証基盤が確立され、今後ルーチンタイピングが可能になれば、症例の個別化医療に役立てられる。バイオマーカーについても、治療効果の客観的指標となる可能性がある。複数のバイオマーカーを統合して測定することで、一見説明のつかない測定パターンを示し、遺伝子異常の検索へと進展した症例もあり、隠れた病態の発見や臨床現場での患者さんへの成果還元が期待される。
ガイドライン等の開発
 現時点では、まだ該当しない。しかし、本研究が基盤となり、さらにデータが蓄積されれば、遺伝子の効果をより直接的に反映するバイオマーカーの同定、遺伝子―遺伝子相互作用、遺伝子―環境相互作用、など新たな知見が得られる可能性も期待される。その結果を基にして、今後コホートを含むより大きな集団で検証され、糖尿病の発症・病態・治療反応性あるいは合併症、などの診断マーカーとして有用性が示されれば、将来診療ガイドラインの一部に取り入れられる可能性はあると期待される。
その他行政的観点からの成果
 平成19年4月に取りまとめられた「新健康フロンティア戦略」において、健康対策の1つとして個人の特徴に応じた予防・治療(テーラーメイド医療)による「メタボリックシンドローム対策・糖尿病予防」の研究開発と普及等が重点的に推進する課題として位置づけられたところである。2型糖尿病についてここ1年半で確立された遺伝因子や、既報のバイオマーカーについて、本研究により進めた解析結果は、今後、国がテーラーメイド医療の研究・開発を進め普及させるための基盤として、貴重なデータとなると期待される。
その他のインパクト
 前述した、複数のバイオマーカーの異常を示す症例の原因が同定されれば、糖尿病・代謝疾患の病態研究に新たな展開が期待される。このように多次元の解析は、予期せぬ新しい発見をもたらす可能性があり、創薬の新規標的が得られる可能性もある。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-