国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークを強化するための研究

文献情報

文献番号
202019010A
報告書区分
総括
研究課題名
国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークを強化するための研究
課題番号
19HA1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 森 嘉生(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 松井 真理(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 渡邉 真治(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 永宗 喜三郎(感染症研究所 寄生動物部)
  • 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第1部第3室)
  • 染谷 雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 藤本 嗣人(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 御手洗 聡(結核予防会結核研究所抗酸菌部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 梅山 隆(国立感染症研究所 真菌部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
12,075,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型コロナウイルス感染症、薬剤耐性菌等の感染症アウトブレイク、ジカ熱・デング熱等の再興感染症など国民生活に脅威となる感染症は継続的に発生しており、令和3年に開催が延期された東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関連するインバウンド感染症発生リスクへの備えも必要である。平成28年度から自治体は病原体検査を実施する法的な義務を負い検査機能の強化維持も課題となっている。行政が関与する通常の感染症対策の初動フローは、①先ず病原体を特定、②判明した病原体のサーベイランスによる感染拡大状況の把握である。しかし、現行では国と自治体が統一的に上記手順を遅滞なく実行する公的システムが存在しないため、何らかの手段により必要な病原体検査を全国規模で実施するラボネットワークを構築・維持することは国の感染症危機管理上、必須である。本研究は、感染研と全国の地衛研が相互に補完協力して、国内の感染症に対処することを目的として、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫などあらゆる病原体を想定し、行政の関与が必要な感染症に備える研究を実施する。
研究成果は、全国の行政機関における病原体検査能力の向上と維持につながり、精度の高い感染症発生動向調査結果として反映される。感染症の発生動向は施策に直接反映される。新型コロナウイルス感染症等のパンデミックにおいて流行状況を把握する必要が生じた場合、緊急に検査法を構築し共有する必要があるが、本研究成果の活用により、全国で統一された病原体検査が迅速かつ円滑に導入可能になる。さらに、検査法の統一化によりえられる正確かつ共有可能な病原体情報は、疫学の精度を高め効果的なパンデミック対策に資する。
研究方法
 地方衛生研究所と国立感染症研究所が共同で遂行すべきレファレンス活動を、双方の病原体担当職員が、地方衛生研究所全国協議会の感染症対策部会と連携しながら研究を実施した。検査体制について病原体担当者レベルで協議し、各病原体レファレンスセンター活動、ならびに、病原体の診断法・疫学解析法の確立を中心に行った。
 各病原体レファレンスセンター活動としては、それぞれの病原体や疾病について、全国で分離された株の型別、薬剤耐性株の出現状況調査、講習会・技術研修会の実施、検査法の検討、また、レファレンス活動に必要となる病原体などの診断法・疫学解析法の確立および評価を行った。
結果と考察
 各レファレンスセンターでは遺伝子検出法・血清診断法の開発・改良・地衛研への配布等を行い、各レファレンスセンターを中心とした病原体検査体制の強化と危機対応や疫学調査に貢献した。麻疹・風疹は検査実施状況の調査、薬剤耐性は報告データの精査、HIV関連感染症は核酸増幅検査精度管理調査の実施、百日咳はマクロライド耐性百日咳菌の遺伝子検査法の国内整備、動物由来感染症はDAS (dead animal surveillance)システムの活用法、大腸菌・レジオネラ・レンサ球菌・アデノウイルスは血清や遺伝子の型別分類、寄生虫は技術研修と遺伝子検査、アルボウイルスは陽性対照の整備と日本脳炎の実験室診断実施、カンピロバクターは分離株の薬剤感受性試験・血清型別、結核は遺伝子型別試験の精度評価、ノロウイルスはノロウイルス・ロタウイルス検出法の検討、リケッチアは過去の届出データの解析、真菌は真菌検査標準作業手順書を改訂した。
また、検査体制の整備に関しては、感染研HP上で病原体検出マニュアルの改訂・追加等を行い、地衛研においてCOVID-19の検査体制の構築、インフルエンザは地衛研の検査技術の維持・向上のための実態調査を行った。地方衛生研究所全国協議会が整備したweb環境を活用し、オンライン研修を行うことで、検査技術の維持・向上に貢献した。疫学調査を行い、全国発生動向・集団発生事例の監視を可能にした。
結論
 国立感染症研究所と全国の地方衛生研究所の共同検査体制を維持するために、病原体検出マニュアルの改訂・整備を継続し、全国の地方衛生研究所での感染症検査体制を維持するための各病原体の遺伝子検査、血清診断の開発・改良、疫学調査、標準品の作製供給、検査技術の継承のため講習等を実施した。
 本研究はレファレンスセンター活動を軸として、全国の公的な病原体検査機関が機能的に連携するうえで極めて重要な役割を果たした。さらに本ネットワークを維持強化するためには、全国地方衛生研究所の各施設における専門性を考慮した人員配置と組織構築、継続的で戦略的なリソースの確保と活用等が重要課題と考えられる。
本ネットワークの活用により、国レベルの危機的感染症に際し迅速検査対応や情報収集が可能となり、今般の新型コロナウイルス感染症対策でも成果を発揮した。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202019010Z