「HTLV-1総合対策」推進におけるキャリア対策の基盤整備と適正な研究開発の推進に資する包括的評価と提言のための研究

文献情報

文献番号
202019009A
報告書区分
総括
研究課題名
「HTLV-1総合対策」推進におけるキャリア対策の基盤整備と適正な研究開発の推進に資する包括的評価と提言のための研究
課題番号
H30-新興行政-指定-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 生命医科学講座 フロンティア生命科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年に国が創設した「HTLV-1総合対策」では、「感染予防対策」「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」「研究開発の推進」の5つの重点施策が策定された。これらの重点施策のうち「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の3点は、さらなる加速が必要であると評価した。これらの背景から、当研究では、HTLV-1総合対策重点施策のうち、「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の改善・加速と、総合対策の重点施策の一つである、「HTLV-1関連疾患研究領域」の研究開発の包括的な現状把握と情報交換を行い、研究の推進を目指す。
研究方法
(1)実態調査の結果を踏まえ、一次相談窓口の機能整備とキャリア・診療対応機関(拠点)との連携整備について検討する。拠点としての「日本HTLV-1学会登録医療機関」の拡張・整備の上での課題を明確にする。さらに、地域毎の一次窓口と拠点施設の連携モデルを検討し、基本的ネットワーク構造の案を検討する。
(2)HTLV-1を感染症法5類に指定する動きとWHOの性感染症としての感染予防活動開始方針を周知し、これらに関して、現場との緊密な意見交換を行い、「HTLV-1対策推進協議会」の議論に反映される様に働きかける。
(3)キャリア対応・診療対応拠点の活動基盤として、既存の「キャリア診療ガイドライン」および「キャリア対応Q&A」を見直して改訂版の作成を目指す。「学会登録医療機関」の活動上の問題点を明確にし、相談・診療活動の制度的な保証のあり方の議論を進める。
(4)ウエブ上の情報発信サイトの管理体制を検討し、恒常的に情報発信基盤による啓発・情報発信の改善と活性化を検討する。従来の講習会の内容を調査検討し、目的に応じたプログラムのモデル版を検討する。ウェブ研修プログラムの可能性を検討し、試行的にe-Learningコンテンツを作成し、配信を目指す。
(5) 2020年度「HTLV-1関連疾患研究領域研究班」合同発表会を、年度末(2021年2月)に開催して、関連疾患研究の進展の包括的な現状把握と情報交換を行い、新たな共同研究や次の課題に関しての検討を行う。
(6)広報・啓発活動の一環として「世界HTLVデー」記念講演会の開催を支援する。
結果と考察
(1)一次相談窓口の機能整備とキャリア・診療対応機関(拠点)との連携整備には、感染診断法の改善、相談機能の強化、診療対応機関(拠点)との連携の強化が求められる。そこで、診断に関してはワンストップ診断系の開発の必要性を指摘し、相談対応では、既存パンフレットなどの改定に加えてWebによる情報提供法の整備と改善が必要である。
(2)キャリア対応・診療対応拠点の活動基盤として、標準化されたキャリア対応のためには「キャリア診療ガイドライン」および「キャリア対応Q&A」の整備が必要である。研究班として議論・検討の結果、次年度以降に、一般的な疾患の治療ガイドライン作成法のMinds診療ガイドライン作成マニュアルに準拠して「キャリア診療マニュアル」の作成を進める事とした。
(3)ウエブ上の情報発信サイトの恒常的な管理主体が存在していない構造的な不備を確認し、啓発・情報発信の恒常的な基盤を維持するためには、学会HPの利用、財団を設立し、財団による運用などが望ましいとの結論になった。「情報リンク集」を学会HPに設定した。ウェブ研修プログラムについても、試行的にe-Learningコンテンツを作成し、学会HPを通じて配信を開始した。
(4)2020年度「HTLV-1関連疾患研究領域研究班」合同発表会は、2021年2月13日(土)に、新型コロナウイルス感染拡大状況下のため、オンラインで開催した。発表研究班は27班、参加登録者数は315名であった。HTLV-1関連疾患研究の進展の包括的な現状把握と情報交換を行い、新たな共同研究や次の課題に関しての検討を行った。
(5)世界HTLVデー記念講演会は、2018年に我が国の日本HTLV-1学会が提唱して制定された11月10日の「世界HTLVデー」を記念して、その広報・啓発目的に一般市民対象の講演会を2020年11月8日(日)に日本HTLV-1学会との共催でオンライン開催した。事前申込数256名、当日は最大時178名の視聴があり、遠方の患者様からは今後もウェブでの参加を望む声も多く、大変好評であった。
結論
「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の改善・加速と、「HTLV-1関連疾患研究領域」の研究開発の包括的な現状把握と情報交換を目指して、課題を整理し今後の取り組み可能な具体的対応策を検討した。WHOの性感染症としての感染予防活動開始方針という国際的情勢に対応した総合対策のあり方をさらに検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202019009B
報告書区分
総合
研究課題名
「HTLV-1総合対策」推進におけるキャリア対策の基盤整備と適正な研究開発の推進に資する包括的評価と提言のための研究
課題番号
H30-新興行政-指定-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 生命医科学講座 フロンティア生命科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年に国が創設した「HTLV-1総合対策」では、「感染予防対策」「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」「研究開発の推進」の5つの重点施策が策定された。これらの重点施策のうち「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の3点は、さらなる加速が必要であると評価した。これらの背景から、当研究では、HTLV-1総合対策重点施策のうち、「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の改善・加速と、総合対策の重点施策の一つである、「HTLV-1関連疾患領域」の研究開発の包括的な現状把握と情報交換を目指した。
研究方法
当研究では、『包括的かつ俯瞰的観点』から、以下の課題に取り組み、HTLV-1総合対策重点施策のうち、「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の改善・加速と、総合対策の重点施策の一つである、「HTLV-1関連疾患領域」の研究開発の包括的な現状把握と情報交換を目指した。
(1)実施機関である各地域医療機関や保健所等の実態調査による問題点の抽出
(2)感染者あるいは疑いのある方の一次相談窓口の機能整備
(3)一次相談窓口とキャリア・診療対応機関(拠点)との連携整備
(4)キャリア対応・診療対応拠点の活動基盤の整備
(5)啓発情報発信の改善と活性化
(6)広報・啓発活動の一環として「世界HTLVデー」記念講演会の開催支援
(7)「HTLV-1関連疾患研究領域」の進捗状況に関して、「合同研究成果発表会」の開催による情報共有と包括的課題の把握
結果と考察
(1)各地域医療機関や保健所等471施設を対象として実態調査を行い問題点の把握をした。HTLV-1の感染症法5類指定に関する事、WHOがHTLV-1感染を性感染症(STI)のとして感染症対策を開始した事に関しても、調査項目に加えて、調査結果を取りまとめた。全国的に見ると、取り組みのレベルは地域により大きく異なること、多数の業務の中でHTLV-1関連の対応については優先順位が低くなっている事、現場での相談対応には限界があり、適切な医療施設での対応が求められる事、しかし、多くの地域で未だに連携が不十分である事が明らかになった。つまり、保健所等の地域の公衆衛生担当施設では、感染の診断、感染症としての相談機能、診療対応機関(拠点)との連携機能のいずれも不十分であることが明らかになった。 
(2)一次相談窓口とキャリア・診療対応機関(拠点)との連携整備には、感染診断法の改善、相談機能の強化、診療対応機関(拠点)との連携の強化が求められる。そこで、診断に関してはワンストップ診断系の開発の必要性を指摘し、相談対応では、既存パンフレットなどの改定に加えてWebによる情報提供法の整備と改善が必要である。
(3)キャリア対応・診療対応拠点の活動基盤として、標準化されたキャリア対応のためには「キャリア診療ガイドライン」および「キャリア対応Q&A」の整備が必要である。研究班として議論・検討の結果、次年度以降に、一般的な疾患の「治療ガイドライン作成法」のMinds診療ガイドライン作成マニュアルに準拠して「キャリア診療マニュアル」の作成を進める事とした。
(4)啓発情報発信の恒常的な基盤を維持する形態を検討し、学会HPの利用、財団の設立とそれによる運用などが望ましいとの結論になった。情報リンク集に関しては、学会HPに試行的に「リンク集」のサイトを設定した。ウェブ研修プログラムの可能性の検討については、上記の議論を踏まえて、試行的にe-Learningコンテンツを作成し、学会HPを通じて配信を開始した。
(5)世界HTLVデー記念講演会は、2018年に我が国の日本HTLV-1学会が提唱して制定された11月10日の「世界HTLVデー」を記念して、一般市民を対象に2019年および2020年の11月に日本HTLV-1学会と共催した。
(6)「HTLV-1関連疾患研究領域」研究班の合同発表会を2018年度から毎年2月に主催した。毎回、当該領域研究班の9割以上が参加し、100名前後の参加者があり、2020年度のオンライン開催では、参加登録者数は315名と盛況であった。HTLV-1関連疾患研究の進展の情報共有と現状把握を目指すとともに、関係者間の情報交換を行い、新たな共同研究や次の課題に関しての検討を行った。
結論
「相談支援」「医療体制の整備」「普及啓発・情報提供」の改善・加速と、「HTLV-1関連疾患領域」の研究開発の包括的な現状把握と情報交換を目指して、課題を整理し今後の取り組み可能な具体的対応策を検討した。WHOの性感染症としての感染予防活動開始方針という国際的情勢に対応した総合対策のあり方をさらに検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019009C

収支報告書

文献番号
202019009Z