文献情報
文献番号
200805027A
報告書区分
総括
研究課題名
プール水泳後の洗眼が眼表面に与える影響及びその有効性に関する研究
課題番号
H20-特別・指定-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 直子(慶應義塾大学医学部眼科)
研究分担者(所属機関)
- 村戸 ドール(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の水泳プールには洗眼設備を設けることが義務づけられており、また一般的に水泳後の洗眼が推奨されている。プールの水質基準では遊離残留塩素濃度は0.4 mg/L~1.0 mg/Lと定められており、これは水中の病原微生物を死滅させる濃度であるが、一方で眼表面粘膜を障害する可能性が高い。一方、水泳中のゴーグルの使用については個人の判断に一任されている。これらを踏まえて、本研究では、実際の水泳中にゴーグルを装着することと水泳後に洗眼を行うことが眼表面粘膜の状態に与える影響を検討することを目的とした。
研究方法
63名の健常ボランティア(年齢 32.1 ± 10.6歳、男性46名、女性17名)を無作為に2群に分け、一方はゴーグルを装着し、他方はゴーグルなしで、室内プールで1時間の水泳を行った。その前後に、視力、眼圧、細隙灯顕微鏡検査(角結膜上皮障害を観察するためのフルオレセイン、ローズベンガル染色検査を含む)、アンテリオールフルオロメーター測定、角膜知覚検査、角膜厚測定検査、生体共焦点顕微鏡検査、結膜嚢細菌培養検査を行った。また、2週間後まで追跡調査を行い、合併症や後遺症がないかを確認した。
結果と考察
水泳中にゴーグルを装着しなかった群では、水泳直後のフルオレセインスコア、ローズベンガルスコア、アンテリオールフルオロメーター値ともに、水泳前の値に比べて有意な増加がみられた(いずれもp<0.001)。それに対して、ゴーグルを装着していた群では角結膜染色スコア、アンテリオールフルオロメーター値には有意差はなかった。水泳直後に悪化したデータは、水泳後2週目までの間に全例で正常値に回復した。視力、眼圧、涙液層破綻時間、角膜知覚、角膜厚測定では、ゴーグルを装着した群、装着しなかった群ともに、水泳による有意な変化はみられなかった。さらに、ゴーグルを装着した群、装着しなかった群とも、水泳後の洗眼の有無と種類による分類では3つのサブグループ間での有意差はみられなかった。しかし、ゴーグル装着して水泳をした後水道水洗眼を行ったもののうち2眼で、フルオレセインスコア、アンテリオールフルオロメーター値が増加したものがあった。2週間の追跡調査で、感染症の発症は1例もなかった。
結論
遊離残留塩素濃度0.4~1.0 mg/L のプールで水泳を行う時には、眼表面粘膜保護の観点からゴーグルを装着することが望ましい。水泳後の水道水洗眼は、積極的には推奨しない。
公開日・更新日
公開日
2009-04-07
更新日
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