文献情報
文献番号
202019008A
報告書区分
総括
研究課題名
開発優先度の高いワクチンの有効性・疾病負荷及び安全性・副反応の評価に資する医療ビッグデータ等を用いたデータベース構築に関する探索的研究
課題番号
H30-新興行政-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
中島 一敏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
研究分担者(所属機関)
- 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
- 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学研究センター)
- 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,492,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
予防接種基本計画(平成26年3月厚生労働省告示121号)では、MRワクチンを含む混合ワクチン、改良インフルエンザワクチン、ノロウイルスワクチン、RSウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチンの6つのワクチンの開発優先度が高いとされている。導入の際には、公衆衛生上の効果と安全性の継続的な評価が必要であるが、我が国ではそのシステムが整備されていないことから、そのシステム構築が本研究の目的である。
研究方法
公衆衛生上重要性評価のため、疾病負荷を継続的に評価するシステム構築を検討する。全国の全数推定のためNDBを、疾病の質的評価を外挿するために国立病院機構の診療情報データベース(NCDA)を、病原体情報の評価のため、NESIDの評価手法と疫学調査研究をそれぞれ検討する。NCDAは将来的に次世代医療基盤法に基づくデータの利用を目標とした検討も行う。安全性評価は、臨床医との双方向ネットワークを構築した因果関係検証システムの構築を、また、WHOや欧米先進国における安全性確保の仕組みについて情報収集分析を行う。
結果と考察
疾対象疾患の疾病負荷の評価に関し、NDBを用いた研究では、適切な病名定義を用いることにより疾病負荷の推計は可能であることが検証された(分担研究1)。NCDAデータを用いた研究でノロウィルスとRSウィルスについて罹患患者が月時単位で正確に抽出できることがわかり、次世代医療基盤法に基づく推定のパイロット研究となりうることが示された(分担研究2)。また、インフルエンザサーベイランスの仕組みを応用することで、全年齢層での感染性胃腸炎・ノロウイルス感染症の全数推定が可能であることが示された。(分担研究3)。分担研究1から3はいずれも相互補完的で、分担研究1の代表性、分担研究2の質的評価、分担研究3の病原体診断情報の利用と感染症発生動向調査を強化することによる持続可能なシステムの構築を組み合わせることで、包括的かつ継続可能なシステムが構築できる。分担研究3のうちRSV感染症の疾病負荷評価は、COVID−19の影響から困難となった。
副反応の評価に関し、分担研究4では、構築してきたML-fluを応用したシステムがCOVID-19流行に伴い、運用に支障が生じることが明らかとなり、緊急時の安定的なシステムの構築が必要と考えられた。分担研究5では、COVID-19ワクチンの安全性確保に対する国際社会や欧米当局の科学的かつ合理的な取り組みから、国内でのAESIの啓発、コミュニケーションの強化、中長期的な平時体制強化、国際的な枠組み構築への積極的な関与の土壌を育てることが重要と考えられた。
副反応の評価に関し、分担研究4では、構築してきたML-fluを応用したシステムがCOVID-19流行に伴い、運用に支障が生じることが明らかとなり、緊急時の安定的なシステムの構築が必要と考えられた。分担研究5では、COVID-19ワクチンの安全性確保に対する国際社会や欧米当局の科学的かつ合理的な取り組みから、国内でのAESIの啓発、コミュニケーションの強化、中長期的な平時体制強化、国際的な枠組み構築への積極的な関与の土壌を育てることが重要と考えられた。
結論
NDB, NCDA, NESID及び疫学調査によりそれぞれ疾病負荷を相互補完的に継続的に評価しうることが示唆された。安全性確保については、ML-fluを応用したネットワークは、パンデミックなどの緊急時の運用に課題が示され、補完するシステムの構築が必要と考えられた。またCOVID-19ワクチンの国際的な安全性確保の取り組みと比べ、日本のシステムは、緊急時の国際連携と全く新規のワクチンの導入に向けた国内の準備体制整備に課題があることが示された。今後もこれらの研究を継続し、我が国で継続利用可能なシステムについて引き続き検討することが必要である。
公開日・更新日
公開日
2022-03-29
更新日
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