性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
202019006A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H30-新興行政-一般-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 創一(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 川名 敬(日本大学・医学部)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
  • 白井 千香(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教室)
  • 山岸 由佳(愛知医科大学 感染症学)
  • 斎籐 益子(関西国際大学保健医療学部看護学科)
  • 余田 敬子(東京女子医科大学 東医療センター耳鼻咽喉科)
  • 安田 満(岐阜大学医学部附属病院 生体支援センター)
  • 伊藤 晴夫(千葉大学 大学院医学研究院 泌尿器科学)
  • 五十嵐 辰男(千葉大学フロンティア医工学センター)
  • 金山 博臣(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 泌尿器科学分野)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院 疫学部)
  • 山岸 拓也(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター 第四室)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆衛生学的疫学研究、基礎的研究、臨床的研究、社会医学的研究を行い、性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進にあたっての課題を抽出し、性感染症減少に向けた政策提言につなげることを目的とした。特に、近年増加傾向にある梅毒について感染の現状を基礎的・臨床的に把握し、梅毒患者減少に向けた政策提言につなげることは極めて高い臨床的意義がある。また、薬剤耐性淋菌およびマイコプラズマ属による感染症の疫学、ゲノム解析を実施することも目的とした。
研究方法
千葉県、岐阜県、兵庫県、徳島県における性感染症全数調査とNESIDの性感染症データを比較することにより、NESIDのあり方の改善を図る。特に、梅毒患者の増加傾向が著しいため、原因微生物のゲノム疫学解析、妊婦梅毒の現状と治療法について検討し、これらのデータを元に教育啓発資材の開発を行う。口腔・咽頭における性感染症の現状について、HPV感染症も含めて検討する。薬剤耐性淋菌、薬剤耐性マイコプラズマ属について菌株を収集し、遺伝子解析を実施する。
結果と考察
梅毒感染疫学データの解析から、NESIDにおいては、梅毒感染が過小評価されている可能性が明らかになった。また、プライマリーケア医からの報告が少ないことが明らかになり、方法を見直す必要があると考えられた。性感染症関連微生物の口腔・咽頭感染については、耳鼻咽喉科医師への啓発活動が重要であると考えられた。薬剤耐性淋菌は臨床上の重要な問題であり、今後も継続的な検討が必要である。薬剤耐性マイコプラズマ については治療法の検討も重要と考えられる。性感染症の教育啓発資料の作成発表は進んだが、教育効果の検証に加えて、若者にアプローチするにはSNSなどの積極的活用も課題である。
結論
今後も継続的な全数調査を実施し、梅毒だけではなく性感染症として最も頻度が高いクラミジア感染症についても解析が必要である。それにより、NESIDの改善提案を発信できると考える。梅毒については、本研究班の成果として感染者の増加傾向は抑制されつつあると考えているが、基礎的研究、臨床的研究、社会医学的研究を横断的に進めることにより、梅毒抑制を図っていきたいと考える。HPVを含めた口腔・咽頭感染については、耳鼻咽喉科医の啓発活動が重要となる。薬剤耐性淋菌、薬剤耐性マイコプラズマ属については、今後も継続的な検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202019006B
報告書区分
総合
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H30-新興行政-一般-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三鴨 廣繁(愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 創一(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 川名 敬(日本大学 医学部)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
  • 白井 千香(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教室)
  • 山岸 由佳(愛知医科大学 感染症学)
  • 斎籐 益子(関西国際大学保健医療学部看護学科)
  • 余田 敬子(東京女子医科大学 東医療センター耳鼻咽喉科)
  • 安田 満(岐阜大学医学部附属病院 生体支援センター)
  • 伊藤 晴夫(千葉大学 大学院医学研究院 泌尿器科学)
  • 五十嵐 辰男(千葉大学フロンティア医工学センター)
  • 金山 博臣(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 泌尿器科学分野)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院 疫学部)
  • 山岸 拓也(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター 第四室)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆衛生学的疫学研究、基礎的研究、臨床的研究、社会医学的研究を行い、性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進にあたっての課題を抽出し、性感染症減少に向けた政策提言につなげることを目的とした。特に、近年増加傾向にある梅毒について感染の現状を基礎的・臨床的に把握し、梅毒患者減少に向けた政策提言につなげることは極めて高い臨床的意義がある。また、薬剤耐性淋菌およびマイコプラズマ属による感染症の疫学、ゲノム解析を実施することも目的とした。
研究方法
千葉県、岐阜県、兵庫県、徳島県における性感染症全数調査とNESIDの性感染症データを比較することにより、NESIDのあり方の改善を図る。特に、梅毒患者の増加傾向が著しいため、原因微生物のゲノム疫学解析、妊婦梅毒の現状と治療法について検討し、これらのデータを元に教育啓発資材の開発を行う。口腔・咽頭における性感染症の現状について、HPV感染症も含めて検討する。薬剤耐性淋菌、薬剤耐性マイコプラズマ属について菌株を収集し、遺伝子解析を実施する。
結果と考察
梅毒感染疫学データの解析から、NESIDにおいては、梅毒感染が過小評価されている可能性が明らかになった。また、プライマリーケア医からの報告が少ないことが明らかになり、方法を見直す必要があると考えられた。性感染症関連微生物の口腔・咽頭感染については、耳鼻咽喉科医師への啓発活動が重要であると考えられた。薬剤耐性淋菌は臨床上の重要な問題であり、今後も継続的な検討が必要である。薬剤耐性マイコプラズマ については治療法の検討も重要と考えられる。性感染症の教育啓発資料の作成発表は進んだが、教育効果の検証に加えて、若者にアプローチするにはSNSなどの積極的活用も課題である。
結論
今後も継続的な全数調査を実施し、梅毒だけではなく性感染症として最も頻度が高いクラミジア感染症についても解析が必要である。それにより、NESIDの改善提案を発信できると考える。梅毒については、本研究班の成果として感染者の増加傾向は抑制されつつあると考えているが、基礎的研究、臨床的研究、社会医学的研究を横断的に進めることにより、梅毒抑制を図っていきたいと考える。HPVを含めた口腔・咽頭感染については、耳鼻咽喉科医の啓発活動が重要となる。薬剤耐性淋菌、薬剤耐性マイコプラズマ属については、今後も継続的な検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
梅毒トレポネーマのゲノム解析を実施した。異性間性的接触で感染伝播している梅毒トレポネーマは90%以上がマクロライド耐性であることが遺伝学的に示された。国内の検体からT. pallidumゲノム配列情報を取得しデータベース上にある情報と比較した。アジスロマイシン耐性株は中国での伝播している株と遺伝的には同一系統(サブ系統1B(系統SS14Ω-B)とされた東アジア系統)であることが示された。Mycoplasma genitalium性尿道炎の検体を用いて遺伝子変異を検討した。
臨床的観点からの成果
梅毒の母子感染を調査し、妊婦梅毒の治療法に関する知見を得た。口腔咽頭の性感染症に関して固形検体内のHPVの感染について検討した。日本で分離される淋菌に関して、PCG、TC、LVFXは非感受性株が大多数を占め、CFIXは以前と比べて低感受性株が減少しているが、現在のわが国の用法用量では初期治療薬としては推奨できない。現在ガイドラインで初期治療薬として推奨されているSPCMおよびCTRXは非感受性株はほとんど分離されず、このまま使用可能である。
ガイドライン等の開発
性感染症 診断・治療ガイドライン2020(編集 日本性感染症学会)大きく貢献した。
義務教育世代、高校生、大学生に対する性感染症の啓発資材の開発を行った。
その他行政的観点からの成果
4県全数調査とNESIDに対してCapture-Recapture法を用いることで、全国の年間梅毒症例数(95%信頼区間)は18,300(15,250-1,786)例、48,550(36,413-58,260)例、35,035(28,028-41,218)例、NESIDにおける梅毒の捕捉率は12%~25%、全国の妊婦梅毒は年346例~785例(捕捉率5.2%~14.7%)と推定された。梅毒に関しては、センチネルサーベイランスとNESIDとの比較を実施し、NESIDの改善点を明らかにできた。
その他のインパクト
口腔咽頭を診察する耳鼻咽喉科医のSTIについての認識および診療実態を調査した結果、啓発活動の重要性が示唆された。
性感染症の教育啓発資材を開発し、実践的評価も行った。

発表件数

原著論文(和文)
42件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
74件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
義務教育世代、高校生、大学生に対する性感染症の啓発資材

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
荒川創一
梅毒診療ガイドを日常臨床に活かす
日本臨床 , 77 (2) , 256-262  (2019)
原著論文2
荒川創一
梅毒診療ガイド
日内会誌 , 108 , 2518-2523  (2019)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
2024-05-24

収支報告書

文献番号
202019006Z