HPVワクチンの安全性に関する研究

文献情報

文献番号
202019005A
報告書区分
総括
研究課題名
HPVワクチンの安全性に関する研究
課題番号
H30-新興行政-指定-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤 和幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第三部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
20,921,000円
研究者交替、所属機関変更
池田博士による研究分担は、池田氏の信州大学における身分の関係より、2 年研究として終了の申し入れがあり、これを了承した。

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) ①HPVワクチン接種後に有害事象を発生した患者における長期的な症状経過や予後、②それらの症状による患者の日常生活/社会生活における不具合の程度、③患者による医療的・社会的ニーズ、これら①~③を患者本人が回答するウェブアンケートシステムを用いて、継続的に調査する。
(2) これらの情報の収集解析は、当該患者の支援、今後の再発防止、早期発見、早期対応に結びつくようにする。
(3) 有害事象の情報解析によって、国民及び世界に対するより良い予防医療の提供に結びつける。
研究方法
・研究代表者(岡部 信彦)
(1)Webアンケートの構築運営
(2)アンケートシステムにおける問題発生時の対応
(3)アンケート結果のまとめ
(4)WHOマニュアルの翻訳作業
・研究分担者(斉藤 和幸)
(1) 委託会社と連携しWebアンケートの運営
(2) 問い合わせの対応
(3) アンケートシステムにおける問題対応
(4) アンケート結果のまとめ
結果と考察
(1)Webアンケートの構築運営
研究分担者と打ち合わせを繰り返しながらWebアンケートシステムを構築し、研究分担者と連携して運営を行った。研究分担者が委託会社より定期的に問い合わせ状況や患者登録状況など具体的な報告を受け、これにつき分担者から報告を受けながら連携して運営にあたった。
(2)アンケートシステムにおける問題発生時の対応
委託会社のサーバが令和2年10月20日にマルウェアに攻撃され、研究分担者と連携して、これに対応した。結果的には、本アンケート調査に関連する影響はなかったが、今後はさらに委託会社との連携を強化しセキュリティの懸念を払拭することとした。
(3)アンケート結果のまとめ
解析対象は41件となり、回答者は全員20代で回答者の接種年は2011年に多かった。半数以上が接種後から2ヶ月以内に初発症状を発現しており、その後多岐にわたる治療を受けており、複数回の入院、長期にわたる治療を受けている症例も認められた。有症状時、日常生活に支障があったと答えた人は、41人中40人であった。診療を受ける際、就学・就業の際に周囲の病気に対する理解や費用に関する支援、学校や社会に関わるための支援策を必要としていた。これについて班会議で検討を行い、年度報告としてまとめた。
(4)WHOマニュアルの翻訳作業
2019.12 WHOはImmunization Stress-Related Response (ISRR)に関するマニュアルを発行したが、HPVの有害事象としてかかわるとことは大であると考え、WHOの了解を得て日本語版発行のための翻訳作業に取り掛かった。
(1) 患者らの長期的な臨床症状や患者への社会的なニーズを把握することによって、患者らへの支援等政策を作るうえでの資料となる。
(2) これらの情報の収集解析は、当該患者の支援、今後の再発防止、早期発見、早期対応に結びつく。
(3) 有害事象及びその患者に関する情報解析によって、国民及び世界に対するより良い予防医療の提供に結びつける。
(4) 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において、当該ワクチン取扱いの資料となる。
(5)本研究によって得られた結果は、多くの人々を短期間で免疫をつけようとする新規ワクチンである新型コロナワクチン接種後における有害事象発生時などにも参考になるものと考える。
結論
これらの研究の実施および継続は、HPV ワクチンのみならずワクチン全般に通じる、今後の安全なワクチンの実施に向けて行政施策上参考となる資料になっていくものと考えられる。
また研究代表者岡部はWHO 予防接種の安全性に関する国際顧問委員会(GACVS)委員として委員会に出席、また所内研究協力者とWHO 西太平洋地域(WPR)における「予防接種で予防できる感染症に関する専門家会議(TAGmeeting)」に出席し、世界およびWPR における当該ワクチン接種状況及び効果と安全性について情報収集し、また各国の担当者、専門家と情報交換を行った。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202019005B
報告書区分
総合
研究課題名
HPVワクチンの安全性に関する研究
課題番号
H30-新興行政-指定-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤 和幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第三部)
  • 池田 修一(国立大学法人信州大学 医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
池田 修一博士による研究分担は、池田氏の信州大学における身分の関係より、2 年研究(H30.10.1~R2.3.31)として終了の申し入れがあり、これを了承した。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではワクチン接種後に有害事象が生じ医療機関受診歴のある者のうち同意を得た者を対象とし、患者個人から臨床情報を入手する縦断的Webアンケート調査によってワクチン接種後に有害事象が発生した患者における長期的な症状経過や予後を把握し、それらの症状による患者の日常生活における不具合の程度、医療的・社会的ニーズを縦断的に調査することを目的とする。
研究方法
1.HPV ワクチン接種後に生じた症状の経過とニーズを探索する縦断的観察研究(岡部、斉藤、池田)
【方法】患者個人から臨床情報を入手する縦断的Web アンケート調査
【解析方法】本研究にて得られた臨床情報は、統計学的な検定は実施せずに要約値を示す、記述疫学を重視した方法とする。
2.HPV ワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関する脳神経医学の面からの解析(池田)
HPV ワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をして、その成因を明らかにすることを目的とし、2013 年7 月~2018 年10 月までにHPV ワクチン接種後の有害事象の疑いで信州大学病院を受診した女性患者の年度毎の数と症状を分析した。
3.WHO マニュアルの翻訳(岡部)
令和元(2019)年12 月WHO はImmunizationStress-Related Response (ISRR)に関するマニュアルを発行したが、HPV の有害事象としてかかわるところは大であり、ワクチンをより安全に実施し、各種の障害の発症予防のためになると考え、WHO の了解を得て日本語版発行のための翻訳作業に取りかかった。
結果と考察
・研究代表者(岡部 信彦)
 WHOのISRRマニュアルの翻訳については、令和2年度末に翻訳作業の大筋を終え、最終確認の段階となった。
・研究分担者(斉藤 和幸)
令和3年3月31日時点で、個人情報まで登録された有効回答数は41件であった。解析対象は41件、回答者は全員20代で回答者の接種年は2011年に多かった。半数以上が接種後から2ヶ月以内に初発症状を発現しており、その後多岐にわたる治療を受けており、複数回の入院、長期にわたる治療を受けている症例も認められた。有症状時、日常生活に支障があったと答えた人は、41人中40人であった。
・研究分担者(池田 修一)
HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関する脳神経医学の面からの解析を行った。
(1)過去6年3ヶ月間に受診した総患者数は195名であり、年度毎では2013年度44名、2014年度40名、2015年度47名、2016年度33名、2017年度25名、2018年度6名、2018年度4名であった。HPVワクチン接種の積極的勧奨が中止されて6年半が経ており、有害事象を訴える患者数は減少していると推測される。
(2)有害事象の主な症状は高度な全身倦怠感、酷い頭痛、四肢・体幹の疼痛、四肢の運動麻痺、知覚過敏、手足の振るえ、学習障害、睡眠異常、月経異常であった。
(3)ドイツ・ベルリンにあるCellTrend GmbH研究所の協力を得て、ELIZA法による自律神経受容体に対する自己抗体の検出法を確立した。本法を応用した結果、HPVワクチン接種後患者群では非接種者群に比して、自律神経受容体に対する複数の自己抗体が血清中で有意に上昇していることが判明した。しかし個々の症状とそれに対応する自己抗体の種類との関連は不明であった。
結論
HPV ワクチンの安全に関する研究の患者登録、データ蓄積を行い、41 名による有効回答から要約値によるまとめを行った。
今後も継続して患者の長期的な臨床症状や患者への社会的なニーズを把握することによって、患者らへの支援等政策を作るうえでの資料となると考えられた。
HPV ワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をし、最近2年間は同症状を訴えて受診する患者が大きく減少しており、また主訴となる症状も変化していることが判明した。HPV ワクチン接種後に見られた有害事象を引き起こす可能性のある分子機序として、自律神経受容体に対する自己抗体の関与が推測された。
Immunization Stress-Related Response (ISRR)に関するWHO マニュアルの翻訳作業に取り掛かった。
これらの研究の実施および継続は、HPV ワクチンのみならずワクチン全般に通じる、今後の安全なワクチンの実施に向けて行政施策上参考となる資料になっていくものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019005C

収支報告書

文献番号
202019005Z